反芳香族性
反芳香族性 (はんほうこうぞくせい、英: antiaromaticity )は、π電子系中に4n個の電子が存在するためより高いエネルギーを有する環状分子の特性である。ヒュッケル則([4 n +2] π電子)に従い [1] 非常に安定な芳香族化合物とは異なり、反芳香族化合物は非常に不安定かつ非常に反応性が高い。反芳香族性の不安定性を避けるため、分子は形状を変化させ非平面となり、ゆえに一部のπ相互作用が壊れる。芳香族化合物に存在する反磁性環電流と対照的に、反芳香族化合物は常磁性環電流を持ち、これはNMR分光法によって観測することができる。 反芳香族化合物の例。A: ペンタレン; B: ビフェニレン; C: シクロペンタジエニルカチオン 反芳香族化合物の例としてはペンタレンやビフェニレン、シクロペンタジエニルカチオンがある。反芳香族性の原型的例であるシクロブタジエンは議論のテーマであり、一部の科学者らは反芳香族性はシクロブタジエンの不安定化に寄与する主要な因子ではないと主張している [2] 。シクロオクタテトラエンは、反芳香族性に起因する不安定化を避けるために非平面幾何構造をとる分子の例である。もし平面構造をとれば、環上に単一の8電子π系を持つことになるが、シクロオクタテトラエンは代わりに4つの個別のπ結合を持つボート形配座をとる [3] 。反芳香族化合物は短寿命の場合が多く、実験的に研究することが困難なため、反芳香族不安定化エネルギーは実験よりもシミュレーションによってモデル化されることが多い [2] 。 目次 1 定義 2 NMRスペクトルにおける反芳香族性 3 反芳香族性の例 4 シクロブタジエン 5 シクロオクタテトラエン 6 脚注 定義 反芳香族性に関するIUPACの基準は以下の通りである [4] 。 分子は環状でなければならない。 分子は平面でなければならない。 分子は環内に完全な共役π電子系を持たなければならない。 分子は共役π系内に4 n π電子( n は任意の整数)を持たなければならない。 この4番目の基準が芳香族性と異なる。芳香族分子は共役π系に4 n +2π電子を持ち、ゆえにヒュッケル則に従う。非芳香族化合物は環状でないか、平面でないか、環内...