文藝春秋漫画賞
文藝春秋漫画賞(ぶんげいしゅんじゅうまんがしょう)は、かつて文藝春秋が主催していた漫画に対する賞である。
目次
1 概要
2 受賞作品
3 脚注
4 参考文献
5 関連項目
概要
1955年に設立。漫画集団や雑誌『文藝春秋漫画讀本』に代表されるような、「児童漫画や劇画と一線を画する」現在では「大人漫画」と呼ばれる旧来の「漫画」を表彰するために作られた賞であり、4コマ漫画、一コマ漫画、風刺漫画を対象とした漫画賞だった。ただし、「新人賞」なのか「功労賞」なのかが曖昧で、選考が一貫しなかった。
山藤章二、和田誠、古川タクのイラスト、長新太の絵本、マッド・アマノのパロディ作品、デザイナー福田繁雄の作品なども受賞している。イラストや絵本やパロディ作品も、現代日本の漫画文化を形成する重要な一形態として評価した。
だが、後期は「大人漫画」が衰退したため、かつての「児童漫画」であるところのギャグ漫画が選考対象に含まれ、吉田戦車の『伝染るんです。』などが受賞をすることになった。選考基準があいまいになり、誰が何故、受賞するか予測不可能な賞とも言われるようになる。江口寿史、とり・みき等ベテラン作家が受賞した際には、審査委員長が彼らの作品を「初めて読んで感心した」といった内容のコメントをしていた。選考委員のサトウサンペイは「(賞のため)めったに見ないコミック話を山ほど買って持ち帰り、順番に見てきました」と発言している[1]。
このような賞であるため、1997年に受賞した西原理恵子は、「初対面の人間からいきなり顔にタンを吐きかけられたような気分」と自身の漫画の作中でこの賞の意義を激しく批判、疑問視していた。そのような迷走を繰り返した後、2002年3月1日に廃止となった。
受賞作品
回 | 年 | 受賞者 | 受賞作品 |
---|---|---|---|
1 | 1955 | 谷内六郎 | 『行ってしまった子』 |
2 | 1956 | 杉浦幸雄 | 戦後の一連の風俗漫画 |
3 | 1957 | 加藤芳郎 | 『芳郎傑作漫画集』 |
4 | 1958 | 久里洋二 | 『久里洋二漫画集』 |
5 | 1959 | 長新太 | 『おしゃべりなたまごやき』 |
6 | 1960 | 荻原賢次 | 一連の時代漫画 |
7 | 1961 | 岡部冬彦 | 『アッちゃん』『ベビー・ギャング』 |
8 | 1962 | 長谷川町子 | 『サザエさん』 |
9 | 1963 | 六浦光雄 | 銅版画風のルポルタージュ |
10 | 1964 | 梅田英俊 | 「朝日グラフ」連載漫画 |
11 | 1965 | 井上洋介 | 一連のナンセンス漫画 |
12 | 1966 | サトウサンペイ | 『アサカゼ君』『フジ三太郎』 |
クロイワ・カズ | 『Eye For Eye』 | ||
13 | 1967 | 牧野圭一 | 『牧野圭一漫画集』 |
14 | 1968 | 小島功 | 『日本のおかあちゃん』『7-8=1』 |
15 | 1969 | 和田誠 | 一連の似顔絵 |
鈴木義司 | 一連の時事漫画&風俗漫画 | ||
16 | 1970 | 東海林さだお | 『タンマ君』『新漫画文学全集』 |
17 | 1971 | 山藤章二 | 『抽象』『エロトピア』『世相あぶり出し』 |
砂川しげひさ | 『寄らば斬る』『ジュウベー』『テンプラウエスタン』 | ||
18 | 1972 | 赤塚不二夫 | 『天才バカボン』他 |
ヒサクニヒコ | 『戦争-漫画太平洋戦史』 | ||
19 | 1973 | 馬場のぼる | 『バクさん』『11ぴきのねことあほうどり』 |
小林治雄 | 『ヒトクチ漫画』 | ||
20 | 1974 | 滝田ゆう | 『怨歌橋百景』他 |
オグラトクー | 『マンガはがきギャラリー』 | ||
21 | 1975 | 手塚治虫 | 『ブッダ』『動物つれづれ草』 |
秋竜山 | 『Oh!☆ジャリーズ』『ノッホホン氏』 | ||
22 | 1976 | 園山俊二 | 『ギャートルズ』他 |
武田秀雄 | 『もんもん』 | ||
23 | 1977 | 福田繁雄 | 住宅から玩具に至るユーモア |
草原タカオ | 『真夜中の子守歌』他 | ||
24 | 1978 | マッド・アマノ | 一連の写真合成によるパロディ作品 |
二階堂正宏 | 『二階堂正宏展』他 | ||
25 | 1979 | 古川タク | 『ザ・タクン・ユーモア』 |
島添昭義 | 『動くイラスト・木造玩具』 | ||
徳野雅仁 | 『不連続体』 | ||
26 | 1980 | 前川しんすけ | 『中町銀座商店街』 |
27 | 1981 | 野田亜人 | 『ペーパーイラストレーション』 |
工藤恒美 | 『ツッパラサール学園』 | ||
28 | 1982 | 山田紳 | 一連の政治漫画、他 |
すずき大和 | 『哀MY展覧会』 | ||
植田まさし | 『フリテンくん』『まさし君』『かりあげクン』 | ||
29 | 1983 | 谷岡ヤスジ | 一連のナンセンスギャグ |
はしもといわお | 『どてらネコ』 | ||
30 | 1984 | 高橋春男 | 『いわゆるひとつのチョーさん主義』『ひょうきんチャンネル』 |
千葉督太郎 | 『いとしの田中角栄さま』『漂流』 | ||
31 | 1985 | いしいひさいち | 一連のナンセンス漫画 |
西村宗 | 『サラリ君』 | ||
32 | 1986 | 受賞作無し | |
33 | 1987 | わたせせいぞう | 『私立探偵フィリップ』 |
安藤しげき | 『ヤッちゃんの勝ち!』 | ||
34 | 1988 | 杉浦日向子 | 『風流江戸雀』 |
35 | 1989 | 堀田かつひこ | 『オバタリアン』 |
36 | 1990 | 小槻さとし | 『パラノ天国』 |
コジロー | 『ぶったまゲリラ』他 | ||
37 | 1991 | 吉田戦車 | 『伝染るんです。』 |
38 | 1992 | 江口寿史 | 『江口寿史の爆発ディナーショー』 |
中崎タツヤ | 『問題サラリーMAN』 | ||
39 | 1993 | 受賞作無し | |
40 | 1994 | 山科けいすけ | 『C級さらりーまん講座』『中流図鑑』 |
41 | 1995 | とり・みき | 『遠くへいきたい』 |
42 | 1996 | けらえいこ | 『あたしンち』 |
やくみつる | 『やくみつるの三面マンガ』『オニのやく目玉』 | ||
43 | 1997 | 黒鉄ヒロシ | 『新選組』 |
西原理恵子 | 『ぼくんち』 | ||
44 | 1998 | 針すなお | 一連の似顔絵漫画 |
大橋ツヨシ | 『かいしゃいんのメロディー』 | ||
45 | 1999 | 小泉吉宏 | 『ブッダとシッタカブッダ』 |
Q.B.B. | 『中学生日記』 | ||
46 | 2000 | しりあがり寿 | 『時事おやじ2000』『ゆるゆるおやじ』 |
唐沢なをき | 『電脳炎』 | ||
47 | 2001 | 小田原ドラゴン | 『コギャル寿司』 |
菊池晃弘 | 『メカッピキポチ丸』 |
脚注
^ 暮しの手帖 1996年6月号 コラム「見たり、描いたり。」
参考文献
- 文藝春秋漫画賞の47年 - 文藝春秋編纂。文藝春秋。ISBN 4163215107
関連項目
- 講談社漫画賞
- 小学館漫画賞
- 手塚治虫文化賞
- 日本漫画家協会賞
- 文化庁メディア芸術祭マンガ部門
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