煙突










酒造場の煙突






醸造業の煉瓦作りの煙突
(千葉県香取市)



煙突(えんとつ)とは、燃焼の過程で排出されるガスが持つ上昇気流を風による外乱から守り、燃焼を促進させる筒状の構造物である。人体に不快・有害な煙などが屋内で拡散するのを防ぐ効果もある。




目次






  • 1 概要


    • 1.1 理論




  • 2 世界の煙突の高さ


  • 3 煙突に関連する逸話


  • 4 煙突に関連する俗語


  • 5 脚注


  • 6 関連項目





概要


工場や火力発電所に設置される大型から、ストーブやコンロといった燃焼装置に付加される小型まである。


素材としては耐熱・耐火性が求められ、古くは石や煉瓦、後にはコンクリートや金属も使われた。現代では、特に大型煙突において鉄骨鉄筋コンクリート構造より軽量化できるガラス繊維製やフッ素樹脂製も開発されている[1]


大型の煙突は、高熱による上昇気流の原理で排気を上方に導き、上空に排出させる。歴史的にみると、本格的な煙突が記録に登場するのは14世紀のヨーロッパであるとされる[2]。積極的に重宝されるようになったのは、燃やすと煤煙を多く出す石炭が家庭で使われることが増えた16世紀と言われている[3]


煙突の高さが高いほど、排出ガス中に含まれる大気汚染物質濃度は、地表に到達するまでに拡散される。このため、排出ガス濃度そのものの低減対策(脱硫、脱硝、集塵など)に加えて、煙突の高さを高くする対策が広く推奨されてきた。ただし、煙突の高さを高くしても大気汚染物質の総量削減効果はない。



理論


煙突からの排出ガスは、ガスそのものが持つ熱による浮力、煙突頂部から排出されるときの吐出速度による運動量、外気の風速や気温などにより、一定の高さまで上昇した後に、有風時には風下側に流れていく。その時の煙流の上昇高さ(ΔH )に、煙突そのものの高さ(実煙突高)を加えたものを有効煙突高He )と呼ぶ。


風下に流れた排出ガスは、煙突から離れるに従って拡散し濃度が薄くなっていく。その濃度分布を表す式を大気拡散式といい、正規分布形で表される。


煙突の高さの設計にあたっては



  • 地上での排出ガス濃度の許容値を設定

  • 大気拡散式により、煙突の有効煙突高を決定

  • 有効煙突高より、吐出速度やガス温度を決定


といった手順を踏む。



世界の煙突の高さ



330mを越えるもの(およそ上位20位まで)、および各国で最も高い煙突などの重要性・著名性の高いものを掲げた。日本の煙突は、200m以上で資料等で確認出来たもののみを掲載した。










































































































































































































































































































































































































































名称 画像 高さ 都市 竣工年 備考

エキバストス第二発電所

GRES-2.jpg
419.7 m

 カザフスタン

エキバストス
1987年
世界一高い煙突

インコ・スーパースタック
 (Inco Superstack

Inco Superstack.JPG
381 m

カナダの旗 カナダ

サドベリー
1971年
世界一高い独立塔煙突

ホーマーシティ発電所
 (Homer City Generating Station

HCGeneratingTowers.JPG
371 m

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

ホーマーシティ
 (Homer City
1977年
 

ケンネコット大煙突
 (Kennecott Smokestack

KennecottSmokestack.JPG
370.4 m

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

マグナ
1974年
 

ベリョーゾフスカヤ発電所
 (ru:Берёзовская ГРЭС

370 m

ロシアの旗 ロシア

シャルイポボ
 (Sharypovo
1985年
 

ミッチェル発電所

367.6 m

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

マウンズビル
 (Moundsville
1971年
 

トルボヴリェ煙突

Trboveljski dimnik.jpg
364 m

スロベニアの旗 スロベニア

トルボヴリェ
1976年
ヨーロッパで最も高い煙突

エンデサ発電所
 (Endesa Termic

Endesa-Termic.jpg
356 m

スペインの旗 スペイン

アスポンテス
 (As Pontes
1974年
 

フェニックス精錬所
 (Phoenix Copper Smelter

Phoenix copper smelter.jpg
351.5 m

 ルーマニア

バイア・マーレ

 

シルダリヤ火力発電所

350 m

 ウズベキスタン

シルダリヤ
1975年
 

テルエル火力発電所

Térmica Andorra.jpg
343 m

スペインの旗 スペイン

テルエル

 

プロミン火力発電所

Plomin2.JPG
340 m

クロアチアの旗 クロアチア

プロミン
 (Plomin

 

ヴェスターホルト火力発電所
 (Power Station Westerholt

Kamin westerholt.JPG
337.5 m

ドイツの旗 ドイツ

ゲルゼンキルヒェン
1997年

2006年12月に爆破解体。
爆破解体された独立建造物としてはもっとも高い。


マウンテニア発電所

336.2 m

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

ニューヘイブン
 (New Haven
1980年
 

クチュルガン発電所
 (Kuchurgan power station

Молдавская ГРЭС 2015 - Донор.JPG
335 m

モルドバの旗 モルドバ

ドネストロフスク
 (Dnestrovsc
1970 ?  

エキバストス第一発電所

330 m

 カザフスタン

エキバストス

 

ペルムスカヤ発電所
 (ru:Пермская ГРЭС

330 m

ロシアの旗 ロシア

ドブリャンカ
 (Dobryanka
1987年
2本

レフチンスカヤ発電所
 (ru:Рефтинская ГРЭС

330 m

ロシアの旗 ロシア

レフチンスキー
 (ru:Рефтинский
1980年
2本

TETs5

330 m

 ウクライナ

ハルキウ(ハリコフ)
1981年
 
Zuevska発電所
 (Zuevska thermal power station

330 m

 ウクライナ
Zuhres
 (Zuhres

 

東マリツァ発電所
 (Maritsa Iztok Complex

325 m

 ブルガリア

スタラ・ザゴラ
1977年
1980年
同国で最も高い煙突・建築物の一つ

ピルドプ精錬所
 (Pirdop copper smelter

325 m

 ブルガリア

ピルドプ
 (Pirdop

同国で最も高い煙突・建築物の一つ
Ugljevik発電所
 (Ugljevik Power Plant

UgljevikPP.jpg
310 m

ボスニア・ヘルツェゴビナの旗 ボスニア・ヘルツェゴビナ
Ugljevik
 (Ugljevik
1985年
同国で最も高い煙突・建築物

ブッシュハウス発電所
 (Buschhaus Power Station

Kraftwerk Buschhaus Luftbild (2007).JPG
307 m

ドイツの旗 ドイツ

ヘルムシュテット
 (Helmstedt
1984年
同国で最も高い煙突
Chvaletice発電所
 (Chvaletice Power Station

305 m

 チェコ
Chvaletice
 (Chvaletice
1977年
同国で最も高い煙突・建築物
SASOL III合成燃料工場
 (Secunda CTL

301 m

 南アフリカ共和国

セクンダ
 (Secunda
1979年
同国で最も高い煙突・建築物

リブニク発電所
 (Rybnik Power Station

Elektrownia Rybnik.jpg
300 m

ポーランドの旗 ポーランド

リブニク
1974年
同国で最も高い煙突の一つ。

ヤヴォジュノ発電所
 (Jaworzno Power Station

ELJAW3.jpg
300 m

ポーランドの旗 ポーランド

ヤヴォジュノ
?
同国で最も高い煙突の一つ。

ベウハトゥフ発電所
 (Bełchatów Power Station

20051029 Belchatow power station.jpg
300 m

ポーランドの旗 ポーランド

ベウハトゥフ
?
同国で最も高い煙突の一つ。

コジェニツェ発電所
 (Kozienice Power Station

POL EC Kozienice.jpg
300 m

ポーランドの旗 ポーランド

コジェニツェ
 (Kozienice
?
同国で最も高い煙突の一つ。
Kawęczyn発電所
 (pl:Elektrociepłownia Kawęczyn

POL Warsaw EC Kawęczyn.jpg
300 m

ポーランドの旗 ポーランド
Warszawa-Kawęczyn
 (pl:Kawęczyn-Wygoda
?
同国で最も高い煙突の一つ。
Novaky発電所
 (Novaky Power Plant

300 m

スロバキアの旗 スロバキア
Nováky
 (Nováky
1976年
同国で最も高い煙突
Orot Rabin発電所
 (Orot Rabin

Orot rabin.JPG
300 m

イスラエルの旗 イスラエル

ハデラ
 (Hadera
1997年
同国で最も高い煙突

プロヴァンス発電所
 (Provence Power Station

300 m

フランスの旗 フランス
ガルダンヌ
 (Gardanne
1984年
同国で最も高い煙突

ビシュケク火力発電所

300 m

キルギスの旗 キルギス

ビシュケク
1989年
同国で最も高い煙突

東京電力鹿島火力発電所

231 m

日本の旗 日本

08茨城県神栖市

日本一高い煙突

中部電力尾鷲三田火力発電所

230 m

日本の旗 日本

24三重県尾鷲市



東京電力常陸那珂火力発電所

230 m

日本の旗 日本

08茨城県東海村

常陸那珂レインボータワー

中部電力西名古屋火力発電所

230 m

日本の旗 日本

23愛知県飛島村



中国電力玉島火力発電所

230 m

日本の旗 日本

33岡山県倉敷市



東京二十三区清掃一部事務組合豊島清掃工場

Toshima Waste Incineration Plant.JPG
210 m

日本の旗 日本

13東京都豊島区
1998年


JFEスチール千葉工場Ⅰ

207 m

日本の旗 日本

12千葉県千葉市



大王製紙三島新工場

207 m

日本の旗 日本

38愛媛県四国中央市
1985年
愛称はエリエールタワー。エレベーター、展望台完備。完成当時、コンクリート製煙突としては東洋一の高さであった。映画『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』に街のシンボルとして登場。

関西電力姫路第一発電所

関西電力姫路第一発電所 大煙突.jpg
204 m

日本の旗 日本

28兵庫県姫路市
2005年
天気予報を兼ねたライトアップが施されていたが2011年3月の東日本大震災以後、節電のために休止している。

中国電力大崎火力発電所

200 m

日本の旗 日本

34広島県大崎上島町



パンパシフィック・カッパー佐賀関製錬所

200 m

日本の旗 日本

34大分県大分市
1972年
高さ167.6mの第一煙突(1916年完成当時は世界一であった)に続く第二煙突として、2012年まで2本並んで立っていた。第一煙突は2013年5月に解体工事完工。


煙突に関連する逸話




  • サンタクロースはクリスマスに煙突から部屋に入り子供達にプレゼントを渡す、とされている。これは聖ニコラウスが貧しい少女の家の煙突から金貨を投げ入れたという伝説が由来である。


  • ドイツでは、ヒトラーが政権をとった1930年代に「煙突掃除法」が制定された。これは「煙突掃除職人を生粋のドイツ人に限る」という内容で、各家庭が「ナチスに反抗的かどうか」の監視も兼ねていた。第二次世界大戦後、西ドイツでは条文が改正されて形式上は外国人も参入可能になったが、東西ドイツ統一後も煙突掃除業界によりドイツ国内が7888の「煙突掃除区」に区分され、事実上、各家庭が掃除を頼む時は地域の職人に依頼しなければいけない状態が続いていた。しかし、EUの圧力により2008年に法改正が行われ、既得権益が解体され、自由化が行われた(出典:MSN産経ニュース2008.11.19 18:54)。


  • イギリスなどの煙突掃除夫たちの陰嚢付近に癌が多発していた。当時は陰嚢のしわの中にすすがたまって腫瘍ができるので「すす病」と呼ばれていた。これを知った東京帝国大学の山極勝三郎教授と大学院生の市川厚一は、石炭副生物であるコールタールを660日にもわたってウサギの耳に塗布する実験を行い、1915年に世界初の人為的な皮膚癌発症に成功した。



煙突に関連する俗語


次のものを俗に「エントツ」と呼ぶ。




  • 売店などの店頭において丸めて筒状に積み重ねた新聞。


  • 新聞の見出しの配置において避けるべきレイアウトの一つで、複数の縦見出しが直列に並んでしまうこと。

  • タクシーメーターの不正行為の一つ(タクシーメーターの項目参照)。


  • 麻雀においてシャンポン待ちと両面待ちを併用する聴牌形を「煙突待ち」と呼ぶ。



脚注


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  1. ^ 「煙突、テント材料で開発/太陽工業 日立造船重さ、コンクリ製の10分の1」『日経産業新聞』2018年6月26日(環境・エネルギー・素材面)2018年6月27日閲覧


  2. ^ 管野浩編 『雑学おもしろ事典』 日東書院、1991年、211頁。 


  3. ^ 山根一眞監修 『日本のもと : 技術』 講談社、2011年11月、69頁。ISBN 978-4-06-282690-7。 




関連項目











  • おばけ煙突

  • 暖炉

  • サンタクロース

  • すす

  • 煙突効果

  • ファンネルマーク

  • 薪ストーブ

  • 登り窯


  • 日立鉱山の大煙突 約155.7メートル - 1914年(大正3年)12月末完成




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