大動脈解離








































大動脈解離

AoDissekt scheme StanfordB en.png
左鎖骨下動脈起始部 (3) から腹部大動脈 (4) に至る大動脈解離。上行大動脈 (1) および大動脈弓 (2) には及んでいない。

分類および外部参照情報
診療科・
学術分野

血管外科学

ICD-10

I71.0

ICD-9-CM

441.0
DiseasesDB
805
MedlinePlus
000181
eMedicine
emerg/28
Patient UK
大動脈解離

大動脈解離(だいどうみゃくかいり、英: Aortic dissection)とは、3層構造を作っている大動脈のうち、何らかのきっかけで真ん中の層の膜(中膜)に血流が入り込み、層構造が別々に剥がれていく(解離してしまう)疾患。


なお、大動脈解離と解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう、dissecting aneurysm of the aorta)とを混同しないよう留意されたい。この症例においては特に瘤形成を認めないことも多く、前述の症状の中でも、大動脈の径が拡大して瘤形成を認めた場合にのみ「解離性大動脈瘤」と呼ばれるからである[1]




目次






  • 1 病態


  • 2 分類


    • 2.1 Stanford分類


    • 2.2 DeBakey分類




  • 3 症状


  • 4 検査・診断


  • 5 治療・予後


  • 6 脚注


  • 7 参考文献


  • 8 関連項目


  • 9 外部リンク





病態




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正常な層構造が壊れた大動脈は弱くなり、最悪の場合破裂してしまう。また、大動脈の出発点である大動脈起始部(バルサルバ洞)から心臓にかけて解離が進めば、そこから出ている冠動脈の血流を阻害して心筋梗塞を起こしたり、大動脈弁輪拡張に伴い大動脈弁を壊したり(大動脈弁閉鎖不全症)、心臓を包む心嚢という袋の中に出血を起こしたりすると、心タンポナーデを起こす。これらの合併症は死に至るものであり、大動脈解離が危険な病気である所以といえる。


また、急性大動脈解離においては破裂や心タンポナーデのみが危険と言うわけではない。解離によって偽腔が重要血管を閉塞すると、脳梗塞、脊髄梗塞、腸管などの消化管虚血、下肢の虚血を引き起こす。重要臓器に対する虚血が起きた場合の救命率は手術を行い得た場合でも70%以下であり、血管疾患の中でも特に重篤なものである。



分類
































各種分類


AoDissect DeBakey1.png

AoDissect DeBakey2.png

AoDissect DeBakey3.png
頻度
60%
10–15%
25–30%
分類
DeBakey I
DeBakey II
DeBakey III
Stanford A
Stanford B
近位
遠位

Stanford(スタンフォード)分類、DeBakey(ドゥベイキー)分類が用いられる。



Stanford分類



Stanford A


上行大動脈に解離が及んでいる状態

Stanford B

上行大動脈に解離が及んでいない状態



DeBakey分類



I型

上行大動脈にtearがあり弓部大動脈より末梢に解離が及ぶもの

II型

上行大動脈に解離が限局するもの

III型


下行大動脈にtearがあるもの

IIIa型


腹部大動脈に解離が及ばないもの

IIIb型

腹部大動脈に解離が及ぶもの


DeBakey分類に際しては以下の亜型分類を追加できる
追加分類



弓部型

弓部にtearがあるもの

弓部限局型

解離が弓部に限局するもの

弓部広範型

解離が上行または下行大動脈に及ぶもの

腹部型

腹部にtearがあるもの

腹部限局型

腹部大動脈のみに解離があるもの

腹部広範型

解離が胸部大動脈に及ぶもの


(逆行性III型解離という表現は使用しない)



症状


強烈な痛みは患者の96%に見られ、解離の場所を推定するのにも重要な症状である。しかし解離が腹部大動脈まで及ぶと「全身を動き回るように痛む」とも言われている。加藤茶が、2008年にStanford Aを発症した際の痛みとして述べたことがある。心不全症状を起こすこともあるほか、初発症状が突然死であることもある。また、解離によって血圧の上昇または低下が起こるほか、胸水の貯留が見られることもある。



検査・診断


激痛から大動脈解離を疑う。胸部X線で大動脈陰影や上縦隔の拡大が見られることがあるが、特に所見が見られないこともあるため、基本的にCTやMRIで診断する。



CT


静脈内に造影剤(ヨウ素系)を注入して造影する撮影法が基本である。真腔、偽腔、フラップの検出が可能で、感度は83〜87%、特異度は87〜100%と高い。最近登場したヘリカルCTはより正確な診断が可能であり、感度は96%、特異度は100%にも及ぶ。また、近年の多チャンネルヘリカルCTでは造影CTではなく単純CTで診断可能な場合も希では無い。

MRI

さまざまな断面で鮮明な画像を得られるのが特徴である。解離の範囲や状態を正確に把握するのに適している。感度・特異度はともに96%。

心エコー

内膜フラップを検出できれば確定できる。また、Stanford A型解離では心タンポナーデ(エコーフリースペースとして見える)をきっかけに解離を診断するケースもある。



治療・予後


予後はStanford AであるかStanford Bのどちらかによって大きく異なる。


Stanford Bの場合、脳に血流を送る腕頭動脈、左総頚動脈が保たれるため、保存的に治療が行われる。ただし、腹腔動脈、両側腎動脈、上腸間膜動脈に解離が及んだ場合は手術適応となりえる。また、腸骨動脈が解離によって閉塞された場合も下肢の筋壊死を引き起こすため、ステントや非解剖学的バイパスなどの手術治療が行われる場合がある。この場合、閉塞した時間が長ければ、筋腎代謝症候群(MNMS: MyoNephrotic Metabolic Syndrome)を引き起こし、これにより命を失う場合もある。


Stanford Aの場合、腕頭動脈、左総頚動脈に血流が減少し脳死の危険が高いので、緊急手術適応となる場合が多い。ただし、早期血栓閉塞型であれば保存的に治療を行う。大動脈弁に解離が及んで大動脈弁閉鎖不全、心筋梗塞、心タンポナーデを起こした場合、予後は非常に悪い。


なお、大動脈解離に伴う急性心筋梗塞 (AMI: Acute Myocardial Infarction)に対して血栓溶解療法や抗凝固療法、IABP(Intra Aortic Balloon Pumping:大動脈内バルーンパンピング)が禁忌であるが、実際の診療の場においては、医師の慎重な判断の下にIABPが行なわれることがある。



脚注


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  1. ^ 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011 年改訂版)




参考文献







関連項目



  • 大動脈

  • 大動脈瘤

  • 心タンポナーデ

  • 心臓血管外科学







外部リンク













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