スラスター
スラスター (thruster) は、スラスト(推す、thrust)に由来する言葉で、広義には推進システムの総称。
目次
1 宇宙機
1.1 イオンスラスタ
1.2 ハイブリッドスラスタ
1.3 レジストジェット
1.4 コールドスラスタ
2 船舶
3 脚注
4 関連項目
宇宙機
人工衛星、惑星探査機などの宇宙機では特に、主推進以外の、姿勢制御や軌道の微修正などに使うものをスラスターと呼ぶ。
宇宙空間で使用されるため、必然的にロケットエンジン(ロケットスラスタ)となる。人工衛星の寿命は地球低軌道以外はほぼスラスタの寿命で決まり、惑星探査機の場合もそれで決まることがあるため、長期にわたり故障せず繰り返しの使用に耐えなければならない。一方、主機関のように限られた時間内に大きな加速度を出す必要はなく、それを補えるだけの長時間運転が可能なら加速度は低くていい。
化学ロケットの場合は、燃料としてヒドラジン、酸化剤として四酸化二窒素などを使ったヒドラジンスラスタが主に使われる。触媒を利用して推進剤の分解を利用する一液推進系と2種類の自己着火性推進剤を使用した二液推進系があり、点火機構の信頼性を気にする必要がない。
イオンスラスタ
ヒドラジンスラスタに取って代わりつつあるのが、イオンエンジンを使ったイオンスラスタである。比推力が化学ロケットの10倍以上と桁違いに高いため、限られた燃料で長期間の使用が可能である。加速度は著しく低いが、スラスタとしては問題とならない。
イオンロケットは、長く主にスラスターとして使われてきてイオンスラスタが同義語として定着しているためか、はやぶさなどイオンエンジンが主機関として使われていてもスラスターと呼ぶことがある。イオンエンジンの性質上、宇宙空間での低加速度・長時間の使用という面では通常のスラスタと共通する。
ハイブリッドスラスタ
ハイブリッドスラスタはハイブリッドロケットと同様に固体燃料に液体の酸化剤を供給して推力を得る[1]。推進剤の組み合わせが自己着火性である場合、点火装置が不要で小型軽量化が可能。反面、端面燃焼式ではない場合には使用回数が増えると徐々に燃焼断面積が変化するので燃料/酸化剤比が変化して推力特性も変化する。
レジストジェット
レジストジェットは水等の不活性の液体を主に電気抵抗による発熱を利用して加熱することにより、気化したガスをノズルから噴出させることにより推力を得る。比推力は200秒未満で推力が低いが長時間作動が可能なので姿勢制御だけでなく、軌道変更や軌道離脱にも使用される。
コールドスラスタ
他の推進器が燃焼や電気的なエネルギーを与えて粒子を加速するのに対してコールドスラスタはガスの膨張による噴出のみを利用する。構造は単純で信頼性も高いが比推力は他の方式よりも低いため、搭載される推進剤の量が同じ量である場合、効果は低い。宇宙開発の黎明期に一部の衛星で使用されていたものの、上述の短所により一時期、廃れたものの、近年、CubeSatのような超小型人工衛星が打ち上げられるようになり、再度、搭載例が増えつつある。連続して使用するとジュール=トムソン効果によって推進剤が冷えるためガス圧が下がるので推力も下がるので連続した使用には適さない。推進剤としては高圧タンクに窒素等の不活性ガスを充填して使用する例や高圧化で液化するガスを利用する場合があり、後者の方が構造重量が軽くなる。
船舶
船舶の推進装置の一部もスラスターと呼ばれる。
- プロペラが水平方向に360度回転するアジマススラスター。宇宙機の場合と異なり、主推進のことが多い。
- 船を横方向に動かすために横方向に向けたスクリュー(サイドスラスター)。
設置位置に着目して、これらが船首に設置されている場合バウスラスター、船尾ならスターンスラスターとも呼ぶ。
脚注
^ “人工衛星搭載用の小型ハイブリッドマイクロスラスタの研究 (PDF)”. 2018年11月24日閲覧。
関連項目
- 原子力推進
- ジェットエンジン
ロケットエンジン
- 固体燃料ロケット
- 液体燃料ロケット
- ロケットエンジンの推進剤
- 固体ロケットブースタ
- アポジキックモーター
- ブースター
- バーニア
プロペラ
- シュナイダープロペラ
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