仮釈放
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
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仮釈放(かりしゃくほう)とは、収容期間満了前において仮に釈放されること。
目次
1 概要
2 狭義の仮釈放
3 仮釈放(仮出獄)中の者が犯した主な事件
4 関連項目
5 脚注
概要
- 広義の仮釈放
- 広義の仮釈放とは、矯正施設に収容されている者が、収容期間が満了する前に、仮に釈放されて、残りの期間を矯正施設の外で、社会生活を営むことを許可されるという、刑事政策上の制度である。少年院からの仮退院、婦人補導院からの仮退院、労役場留置からの仮出場などのほか、刑事施設からの仮釈放がある。この刑事施設からの仮釈放を、狭義の仮釈放(かつては「仮出獄」・かりしゅつごく)と呼ぶ。
- 狭義の仮釈放
- 狭義の仮釈放とは、懲役または禁錮といった刑罰の確定裁判を受け、その刑罰が執行され、刑事施設に収容された受刑者が、当該自由刑の期間満了前に、刑事施設から一定の条件の下に釈放され、社会生活を営みながら残りの刑期を過ごすことが許されるという、刑事政策上の制度である。かつては「仮出獄」と呼ばれたが、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律施行後は、各法令の用語も「仮出獄」から「仮釈放」に改められた。なお、当時より、少年院からの「仮退院」と「仮出獄」とを併せて、広義の「仮釈放」と呼び習わされることもあったが、少年院送致は刑罰ではなく保護処分であることから、「仮退院」のことを「仮出獄」と呼ぶことは無かった。また、これらを併せて「仮出所」と呼ぶ場合もある。
狭義の仮釈放
刑法28条に「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。」と定められている。ここにいう行政官庁とは、法務省所管の地方更生保護委員会であり、本人の資質、生活歴、矯正施設内における生活状況、将来の生活計画、帰住後の環境等を総合的に考慮するとともに、悔悟の情、再犯のおそれ、更生の意欲、社会の感情の4つの事由を総合的に判断し、保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると認められるときに(「仮釈放、仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則」[1]の31条、32条を参照)、仮釈放を決定する権限が与えられている。実際に仮釈放が許される時期については、有期刑は最近ではほとんどの場合、執行刑期の3分の2以上であり、刑期の半分に満たないで許される者は稀にしかおらず、無期刑は2003年以降、すべての許可例において刑確定後20年以上が経過してからである[2][3][1]。
仮釈放の手続きの流れは、以下のようなものである。
- 自由刑の確定判決を受けた者が、検察官によって刑の執行指揮を受け、刑事施設に収容され、刑事施設内で所定の調査が行われると、その結果が、地方更生保護委員会と、法務省所管の保護観察所に知らされる。
- 保護観察所は、受刑者が希望する帰住地および引受人について調査を実施する。実施にあたるのは、主に保護司であるが、保護観察官が直接行うこともある。調査は、帰住先の住居は安定して居住できるか、引受人は保護観察所と協力して、受刑者が仮釈放を許された後に社会復帰のために援助できるか、人的・物的環境は更生のためにふさわしいか等多岐にわたり、それらの諸要素を考慮した上で、保護観察所長が総合判断の結果、帰住先が更生に適当かどうかの意見を付して、刑事施設と地方更生保護委員会に連絡を行う。
- 法務省所管の刑事施設の長は、帰住先が更生に適当であると保護観察所長から連絡を受けた者で、かつ、刑事施設内での処遇の状況が良好である者について、地方更生保護委員会に仮釈放許可を申請する。
- 地方更生保護委員会は、あらかじめ、刑事施設内での処遇の状況や、保護観察所が行っている帰住先の環境調整の結果のほか、地方更生保護委員会事務局の保護観察官による面接や、被害者感情調査の結果などについて調査する。これらの調査の結果や、委員自身が直接受刑者に面接することによって、仮釈放が許されるべきかどうかを審理している。
- 審理の結果、仮釈放することが適当であると判断されれば、一定の約束事(遵守事項)を遵守することを条件として、仮釈放許可決定がなされる。仮釈放が許されると、残刑期間中は、保護観察を受け、遵守事項を守るよう指導、監督を受けて生活することになる。
仮釈放はあくまで「仮」であり、刑法29条1項の各号に該当する場合には、仮釈放は取り消される。犯罪を犯して罰金刑以上の刑罰が課せられた場合や、保護観察中に遵守すべき遵守事項に違反した場合には、地方更生保護委員会の仮釈放取消決定により、仮釈放が許された全ての期間を、刑事施設で過ごさなくてはならない。
また、刑の執行が停止されたわけではなく、社会の中で保護観察を受けて遵守事項を守りながら生活することを条件に、残りの刑期を過ごすことが許されたという状態であるため、例えば無期刑に処せられた者が仮釈放を許された場合には、死亡するか、あるいは恩赦(保護観察所長が上申権者となる「刑の執行の免除」)がなければ、一生保護観察下に置かれ、住居、旅行等、日常生活にも制限を受けることになる。ただし、少年のとき無期刑の判決を受けた者については、残刑期間主義ではなく考試期間主義が採られているため、仮釈放が取り消されることなく10年が経過すれば、刑は終了したものとされる(少年法59条)。
仮釈放は、受刑者のうち、一定の要件を満たした者について、早期に社会生活の機会を与え、更生や社会復帰を円滑に進めさせるための制度である。仮釈放期間中の保護観察も、そのために行われる。一方で、刑事施設における過剰収容の緩和という機能があることも否めない。刑事施設における過剰収容は、刑務官の定員や、刑事施設の物理的な収容定員には限界があることから、刑事施設内での処遇の質の低下や、受刑者による暴動を招来しかねない。また、犯罪者処遇を刑事施設内で行う場合と比べると、保護観察という社会内処遇は圧倒的に安価であるということも、仮釈放制度のメリットといえる。
ただ、仮釈放中の保護観察は、刑事施設内の処遇と比較すると、物理的・人的に再犯を防止する機能に乏しい、というデメリットがある。仮釈放中の保護観察を忌避し、所在をくらませて再犯に至る者がいることも事実である。2005年、愛知県安城市のショッピングセンターにおいて、仮釈放中に所在をくらませた者が幼児殺人事件を起こしたことが契機となり、対策が講じられた。仮釈放中に所在をくらまし、保護観察を受けていない者については、2005年12月以降、保護観察所自身が、裁判所から令状の発付を受け、警察と連携して所在調査を実施することとなった。
仮釈放(仮出獄)中の者が犯した主な事件
- 渋谷駅駅員銃撃事件
- 安城市男児刺殺事件
- 熊谷養鶏場宿舎放火殺人事件
関連項目
- 刑事施設
脚注
^ 過去には15年程度での仮釈放が過半数を占めた時期もあったようである。1975年自由国民社発行の植松正監修口語六法全書第6巻刑法全訂版56頁によると、当時の最近5年間における無期刑仮出獄者の在監期間は14年から16年の者が過半数を占めていたとのことである。