QT延長症候群
QT延長症候群(QTえんちょうしょうこうぐん、long QT syndrome; LQTS)は、心臓の収縮後の再分極の遅延がおき、心室頻拍(Torsades de Pointes:TdP、心室性不整脈の一種)のリスクを増大させる心臓疾患である。
目次
1 概要
2 分類
3 問診・検査
4 治療
5 脚注
概要
心臓の収縮後の再分極の遅延によって生じる心室頻拍は動悸、失神や心室細動による突然死につながる可能性がある。症状は、条件のサブタイプに応じて、様々な刺激によって誘発される。心臓に器質的疾患を持たないにもかかわらず、心電図上でQT時間の延長を認める病態である。QT時間が0.46秒以上、またはRR間隔で補正したQTc時間では0.44秒以上である場合を指す。Torsades de pointes(TdP)と呼ばれる心室頻拍を惹起することがある。より簡略にはT波の終点がRRの中点を越えていれば明らかにQTの延長とする。この方法はスクリーニング診察時に用いることがある。
なお、精密には、QT時間は、RR間隔で補正する必要(Bazett 式のQTc = QT/Root(RR)、Heggliu. Holzman 式 QT = 0.39(RootRR) ± 0.04 sec)がある。
分類
- 先天性QT延長症候群
- Naチャンネル、Kチャンネルの遺伝子に変異を認めることがある。ブルガダ症候群の原因遺伝子と重複している場合が多い[1]。
- 後天性QT延長症候群
- 電解質異常、薬剤性など。よくある例としては抗ヒスタミン薬とマクロライドの併用など。
問診・検査
現病歴・既往歴 -- 失神発作や難聴
家族歴 -- 突然死、失神発作
服薬歴 -- マクロライド系薬剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗ヒスタミン剤など。- 心電図
アドレナリン負荷試験
- (アドレナリン0.1µg/kgの急速静脈注射に引き続き0.1µg/kg/minの持続点滴)により潜在性LQTSの診断に有用である[2]。
- Schwartzの診断基準
基準項目 | 点数 | ||
心電図所見 | QT(QTc)時間の延長 | QTc ≧ 480msec | 3 |
460 ~ 479msec | 2 | ||
450 ~ 459msec(男性) | 1 | ||
運動負荷後4分のQTc | ≧ 480msec | 1 | |
Torsade de pointes | 2 | ||
T波交互脈(交代性T波) | 1 | ||
結節性T波(Notched T波, 3誘導以上) | 1 | ||
徐脈 | 0.5 | ||
臨床症状 | 失神 | ストレスに伴う失神発作 | 2 |
ストレスに伴わない失神発作 | 1 | ||
先天性聾 | 0.5 | ||
家族歴 | 確実なLQTの家族歴 | 1 | |
30歳未満での突然死の家族歴 | 0.5 |
LQTSと診断:点数合計≧ 4点、 疑診:2〜3点
LQTSの可能性が低い ≦1点[3]
治療
先天性QT延長症候群では、交感神経興奮が心室頻拍を誘発すると考えられているため、β-ブロッカーが第一選択薬となる。またカテコールアミン分泌を誘発しないよう運動制限もあわせて行われる。
脚注
^ 清水渉、先天性QT延長症候群 心臓 Vol.46 (2014) No.1 p.15-20, doi:10.11281/shinzo.46.15
^ QT延長症候群における薬剤負荷試験
^ Schwartz PJ et al. Diagnostic criteria for the long QT syndrome. An update. Ciruculation. 1993;88:782-4.
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