転調
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転調(てんちょう)
音楽において、曲中で調を変えること。本項で詳述。
言語学において、音節の結合により声調が変化すること(連続変調)。
転調(てんちょう)とは曲中で調を全く違う調に移しかえることである。
古典派音楽の時代には、近親調(属調、下属調、平行調、属調平行調、下属調平行調、同主調)への転調が主であったが、ロマン派音楽の時代には、複雑で大胆なかつ頻繁な転調が多くなり、それぞれの調を認識することが次第に困難になっていったことが、現代音楽に至って調性が崩壊する一因ともなった。
目次
1 転調の方法
1.1 邦楽の転調
1.2 転調の傾向
2 関連項目
転調の方法
転調のためには、新しい調への移行と、新しい調の確立が必要である。
新しい調への移行には、古くは前後の調に共通の和音を用い、新しい調でその和音を読み替える、ということが行われた。たとえば、ハ長調からト長調への移調では、ハ長調のVの和音はト長調のIの和音であるから、ハ長調のVを鳴らして、それをト長調のIと読み替えるのである。
次に、第1の調の和音の構成音のひとつと、第2の和音の構成音のひとつが、増1度関係にあるような和音を続けて鳴らす、ということが行われた。たとえば、ハ長調のIV度(ヘ=Fを持つ)の次にト長調のVII(嬰へ=F♯を持つ)を並べるのである。
しかし、時代をくだるに従って、これらを省略して、新しい調のV7の和音に直接はいるという方法もとられるようになっていった。
新しい調の確立には、最低限、前の調で使われない音が必要である(この音を特徴音という)。たとえばハ長調からト長調への移調では、ハ長調では用いられないがト長調で用いられる嬰へ(Fシャープ)の音である。前述の新しい調のV7の和音に直接はいる方法を用いれば、同主調からの転調でなければ、必ず前の調に含まれない音がひとつは含まれるので(同主調は、V7が同じである)、それだけで十分である。同主調からの転調では、Iの和音に前の調にない音が含まれる。このように、V7ないしIを鳴らすことで、転調は成立するのである。しかし、より丁寧には、新しい調でT-S-D-T(I-IV-V-Iなど)のカデンツを行うことが求められる。これは、第2の調の和音とされる和音が、第1の調に第2の調の和音のひとつを一時的に借用しただけのもの、または第1の調の和音に一時的に♯や♭を付けたらたまたま第2の調の和音のひとつと一致したというだけのもの(いずれも借用和音と呼ばれる)、という印象を与えないためには重要なことである。
邦楽の転調
近世邦楽の楽曲では、転調が頻繁に行なわれる。地歌などの三味線音楽では、属調、下属調への転調が非常に多いがまれに特殊な転調も使われている。また長唄や義太夫節では同主調への転調も見られる。箏曲にも幕末以降それらに加え、平行調、同主調への転調も見られる。また曲中における大規模な転調の場合には楽器の調弦を変えて対応することが多く、大曲では二回以上調弦変えをすることが普通である。
転調の傾向
日本のポップス曲で見られる転調は、以下の方法を採る傾向が多い。
- キーを1個(=半音分)上げるもの(例:イ長調→変ロ長調)
- キーを2個(=半音2個分)上げるもの(例:ハ短調→ニ短調)
- 同主調同士で移るもの(例:嬰ヘ短調→嬰ヘ長調)
- 短3度(半音3個分)ずらして移るもの(例:ハ長調⇔変ホ長調)
- 平行調同士と同主調同士の移動を併用するもの(例:ト長調→ホ短調→ホ長調。ホ短調→嬰ハ短調→ホ長調)
関連項目
- 関係調
- 移調
- 音律