屈斜路湖
屈斜路湖 | |
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津別峠から見た屈斜路湖 | |
位置 | 北緯43度38分0秒 東経144度20分0秒 / 北緯43.63333度 東経144.33333度 / 43.63333; 144.33333座標: 北緯43度38分0秒 東経144度20分0秒 / 北緯43.63333度 東経144.33333度 / 43.63333; 144.33333 |
面積 | 79.54[1]km2 |
周囲長 | 57 km |
最大水深 | 117.0 m |
平均水深 | 28.4 m |
貯水量 | 2.25 km3 |
水面の標高 | 121 m |
成因 | カルデラ湖 |
淡水・汽水 | 淡水 |
湖沼型 | 酸栄養湖 |
透明度 | 6.0、1917年の測定では 20m m |
プロジェクト 地形 |
屈斜路湖(くっしゃろこ)は北海道東部、弟子屈町にある自然湖である。日本最大のカルデラ湖で[2]、全面結氷する淡水湖としても日本最大の面積を持つ[要出典]。昭和9年、全域が阿寒国立公園に指定された。
目次
1 名称の由来
2 地学的知見
2.1 屈斜路カルデラ
2.2 主な火山活動
3 生物相
4 人間史と観光
5 伝説
6 温泉
7 交通
8 ギャラリー
9 参考文献
10 脚注
11 関連項目
12 外部リンク
名称の由来
アイヌ語で喉口、転じて沼の水が流れ出る口を意味する「クッチャラ[3]」に由来し、この湖の「クッチャラ」近くにあったアイヌの集落(コタン)「クッチャロ」に和人が字を当てたとされる[4]。
地学的知見
藻琴山、サマッカリヌプリなどを外輪山とする東西約26km、南北約20kmの日本最大のカルデラである屈斜路カルデラの内側に約3万年前に形成された[5]。日本の湖沼では6番目の面積規模を有し、平均水深は28.4m、カルデラ湖としては浅いほうだが、和琴半島東岸の旧噴火口にある最深部では117mになる[6][7]。
湖中央部には、日本最大の湖中島である中島(面積5.7km2、周囲12km)が浮かぶ。中島は直径約1.4kmのタフリングを持っており、その中に貫入している溶岩円頂丘が最高点(355m)となっている。南岸には和琴半島が突出する。中島と同様、火山の山頂が湖中島になったものであったが、尾札部川の扇状地から成長した砂州により陸繋島となった。
周囲から小河川が流入し、南端から釧路川が流れ出す。河川からの流入は、湖に入る全水量の20パーセントほどで、残りは地下から湖底に入っている[8]。
道北にあるクッチャロ湖とは、呼び名が似ていることから混同されがちであるが、全くの別の湖である。ただし、語源は同じである。
- 島 : 中島
- 流入河川 : 湯川、尾札部川、オンネナイ川、跡佐川、トイコイ川、オンネシレト川、シケレペンベツ川
- 流出河川 : 釧路川
屈斜路カルデラ
初期の屈斜路湖は面積が現在の倍ほどあり、ほぼ円形の湖だったと考えられる。現在のカルデラは、東西約26km 南北約20kmで日本最大。
- 約160万年から100万年前 先カルデラ火山を形成した。その名残が屈斜路湖北側にある藻琴山。
- 約40-4万年前 カルデラを形成する活動がおき、10回程度大規模火砕流噴火の繰り返す。
- 約12万年前 最大級の噴火を生じ、その火山灰(クッチャロ羽幌と呼ばれる広域テフラ)は札幌以西を除く北海道のほぼ全域を覆った。
- 約4万年前 約12万年前の噴火に次ぐ大規模な噴火が生じ、クッチャロ庶路テフラを形成。
- 約4万年前~現在 「中島」、「アトサヌプリ」(別名硫黄山)、「摩周火山」を生じる活動により溶岩円頂丘群が噴出してカルデラ湖の南東部を失い、空豆状の現在の形になった[9]。
主な火山活動
- 大きく分けて古梅溶結凝灰岩前の先カルデラ期、古梅溶結凝灰岩以後-Kpfall I噴火以前のカルデラ形成期、Kpfall I噴火以降の後カルデラ期に分けられる[10]。
年代 | イベント名・噴出物 | 噴出量 (DRE km3) | 主な岩石 | 噴火様式 | ステージ |
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400ka | 古梅溶結凝灰岩 | 32 | デイサイト | 火砕流 | 屈斜路 カルデラ 形成期 |
210ka | Kp VIII噴火 | 18 | デイサイト-流紋岩 | 火砕流 | |
200ka | Kp VII噴火 | 6 | 火砕流 | ||
190ka | Kp VI噴火 | 36 | 火砕流 | ||
130ka | Kp V噴火 | 18 | 火砕流 | ||
117.5ka | Kp IV噴火 | 84 | 火砕流 | ||
97ka | Kpfall V噴火 | 3.6 | 降下火砕物 | ||
89ka | Kpfall IV噴火 | 3.6 | 降下火砕物 | ||
87.5ka | Kp II/III噴火 | 12 | 火砕流 | ||
76ka | Kpfall III噴火 | 4.5 | 降下火砕物 | ||
59ka | Kpfall II噴火 | 3 | 降下火砕物 | ||
39.31ka | Kp I噴火 | 60 | 火砕流 | ||
38.84ka | Kpfall I噴火 | 5 | 降下火砕物 | ||
34ka以降 | アトサヌプリ外輪山溶岩 | (3.8に一括) | 安山岩 | 溶岩流 | 古期アト サヌプリ 火山 |
オヤコツ山円頂丘溶岩 | 溶岩ドーム | ||||
252m山円頂丘溶岩 | 溶岩ドーム | ||||
30.74ka | 上部中春別gテフラ | 1.38 | デイサイト | 降下火砕物 | アトサ ヌプリ カルデラ 形成期 |
29.94ka | 上部中春別eテフラ | 2.64 | デイサイト | 火砕流、降下火砕物 | |
28.82ka | 上部中春別cテフラ | 0.08 | デイサイト | 降下火砕物 | |
28.21ka | 上部中春別aテフラ | 0.44 | デイサイト-流紋岩 | 火砕流 | |
27.662ka | Midk-2〜5テフラ | 0.24 | 降下火砕物 | ||
27.64ka | 茶内cテフラ | 4.14 | デイサイト〜流紋岩 | 火砕流、降下火砕物 | |
15ka | Midk-1テフラ | 0.18 | 降下火砕物 | ||
10ka〜現在 | 中島火山噴出物 | 0.6(合計) | デイサイト-流紋岩 | 溶岩ドーム、降下火砕物、サージ | 新期 アトサ ヌプリ 火山群 |
10ka-5.5ka | サワンチサップ円頂丘溶岩 | (3.8に一括) | デイサイト | 溶岩ドーム | |
オプタテシュケ円頂丘溶岩 | |||||
トサモシベ円頂丘溶岩 | |||||
ニフシオヤコツ円頂丘溶岩 | |||||
274m山円頂丘溶岩 | |||||
丸山円頂丘溶岩 | |||||
ヌプリオンド円頂丘溶岩 | |||||
5.5ka | リシリ山円頂丘溶岩 | 降下テフラ、火砕流→溶岩ドーム | |||
5.5ka-1.5ka | At-c噴火 | 降下テフラ | |||
5.5-1.5ka | マクワンチサップ円頂丘溶岩 | (3.8に一括) | デイサイト | 溶岩ドーム | |
アトサヌプリ古期円頂丘溶岩 | |||||
1.5ka | At-b噴火 | 水蒸気爆発:降下火砕物 | |||
1.5-1ka | アトサヌプリ新期円頂丘溶岩 | (3.8に一括) | デイサイト | 溶岩ドーム | |
AD1000以降 | At-a噴火 | 水蒸気爆発:降下火砕物 |
- 後カルデラ期(34〜0ka)に合計4.8 DRE km3の火砕流堆積物と、3.8 DRE km3の溶岩、0.02 DRE km3の降下火砕物を噴出したとされている[10]。
- 屈斜路カルデラ東縁に摩周火山が形成されているが、噴出物の成分の違いから別火山と考えられている。
生物相
アトサヌプリや川湯温泉から強酸性(pH2前後)の温泉水を運ぶ湯川が北東部に流入し、屈斜路湖全体もpH5前後の酸性湖となっているため魚類は乏しい。
過去には魚類が豊富だった時期もあった。江戸時代の終わり頃、1858年(安政5年)に松浦武四郎が通りかかったときにはイトウ・ウグイ類・ヒメマスがいた。1917年(大正6年)の調査では、イトウ・ウグイ・アメマス・ヤマベ・カジカ・イトヨに加え、サケが遡上していた。植物プランクトンが多く、セキショウモやヒルムシロのような水草が生えていた[11][12]。
この状況は1929年(昭和4年)頃に一変した。この年、多くの魚種が消えるか局地的にしか見られず、水草は稀になっていた。湖水表面のpHは4.9から5.1で酸性を呈した。このあと昭和9年頃には一時期酸性度が弱まり pH 6-7 程度まで回復し[13]、魚類の回復もみられたが、1938年(昭和13年)5月の屈斜路地震で湖底から硫酸塩が噴出したとみられ、pH4前後まで酸性に傾き魚類はほぼ全滅した[14]。
このため屈斜路湖では現在でも漁業権が存在しない。2000年代以降酸性度は低減される傾向にあり、優占種は耐酸性に優れたウグイで他には放流されたニジマス、ヒメマス、サクラマスが僅かに生息する[15]。
また、和琴半島はミンミンゼミ生息の北限地であり、1951年に「和琴ミンミンゼミ発生地」として国指定の天然記念物となっている。オオハクチョウの飛来地としても知られる。
人間史と観光
江戸時代の探検書・古地図には「クスリ・トー」(アイヌ語で温泉、薬の湖の意)と書かれていた。その後、釧路川源流付近にあったコタン名「クッチャロ」(喉・口、湖からの流出部の意)から現在の「屈斜路湖」となった[16]。
冬季には、2月になると全面結氷し[17]総延長5-10km程度[18]の日本最大級となる鞍状隆起現象 御神渡り が形成される[19][20]。1970年代には、謎の生物クッシーの棲む湖として話題となった。
伝説
アイヌの伝説では、英雄アタシントクルが巨大なアメマスを捕らえて山に結びつけたところ、暴れるアメマスのせいで山が崩れ、中島が生まれたという[21]。
昭和50年代(1975年から1985年頃)に大きな影が遊泳する様子や湖面の波紋が立て続けに目撃され、この湖に巨大な未知の生物が棲んでいるという噂がテレビなどで取り上げられた。ネッシーにならってクッシーと名付けられた[22]。とはいえ、酸性が強いこの湖に大型水生生物が存在する可能性は無いとされる。
温泉
火山地帯であることから、周囲には火山や温泉が多数存在し、湖岸を掘ると湯が湧き出す砂湯は観光名所となっている。また湖底からも温泉が噴出している[23]。 弟子屈町周辺に名湯スポットが点在している。
屈斜路湖畔温泉郷
- 仁伏温泉
- 和琴温泉
- 三香温泉
- コタン温泉
- 池の湯温泉
- 砂湯温泉
川湯温泉(湖畔からは若干離れている)
交通
- 国道243号
- 北海道道52号屈斜路摩周湖畔線
阿寒バス
釧網本線:摩周駅、川湯温泉駅通
石北本線:美幌駅、網走駅
- 女満別空港
- 定期観光バス
ギャラリー
津別峠より望む
北海道道102号駐車公園より望む
湖畔
砂湯付近に群れるハクチョウ
小清水峠から見た12月末の屈斜路湖の黎明
参考文献
- 中尾欣四郎・黒萩尚・矢島睿「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」、『日本の湖沼と渓谷』第1巻(北海道 I)、ぎょうせい、1987年。
- 広瀬亘、中川光弘:北海道東部,屈斜路カルデラ地域の新生代火山岩類のK-Ar年代と第四紀火山活動史 地質学雑誌 Vol.101 (1995) No.1 P99-102
- 長谷川健、岸本博志、中川光弘、伊藤順一、山元孝広:北海道東部,根釧原野および斜里平野における約3万5千~1万2千年前のテフラ層序と後屈斜路カルデラ火山の噴火史 地質学雑誌 Vol.115 (2009) No.8 P369-390
脚注
^ 国土地理院 (2015年3月6日). “平成26年全国都道府県市区町村別面積調 湖沼面積 (PDF)”. 2015年3月7日閲覧。
^ 「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」39頁。
^ アイヌ語ラテン翻字: kut-char
^ “アイヌ語地名リスト キト~コム P41-50P”. アイヌ語地名リスト. 北海道 環境生活部 アイヌ政策推進室 (2007年). 2017年10月19日閲覧。
^ 「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」39頁。
^ 湖沼図リスト 国土地理院
^ 但し、水深を125mとしている文献もある
^ 「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」40頁。
^ 「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」39-40頁。
- ^ ab2.屈斜路カルデラ 産業技術総合研究所, 2016年2月10日閲覧。 (PDF)
^ 「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」41頁。
^ 橋本進:温泉廃水による環境破壊-Ⅱ.川湯温泉の廃水汚染が釧路川水系の魚類に及ぼす影響 さけ・ますふ研報 (43):39-51 (1989)
^ 益子帰来也:夏期に於ける阿寒湖及屈斜路湖の観測 陸水学雑誌 Vol.4 (1934-1935) No.4 P136-142
^ 「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」41-43頁。
^ 伴真俊、鈴木俊哉:屈斜路湖におけるベニザケの人工増殖 さけ・ます資源管理センター技術情報 第169号 2003(H15)年3月発行 13-23
^ 「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」41頁。
^ "御神渡り現象"発生ラインにおける氷紋の出現 日本雪氷学会・日本雪工学会 雪氷研究大会(2008・東京)セッションID: P1-60
^ 杉本芳博ほか、屈斜路湖における鞍状隆起現象と氷震活動の観測 北海道大学地球物理学研究報告 1981年11月30日 第40巻 p.79-91
^ 屈斜路湖の結氷 地学雑誌 Vol.25 (1913) No.7 P522a-523
^ 屈斜路湖の魅力 釧路湿原・阿寒湖・摩周湖 北海道東部の観光情報ポータルサイト
^ 「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」44頁。
^ 「カルデラの湖とアイヌの伝説 摩周湖・屈斜路湖」44頁。
^ 屈斜路湖底の温泉動画
関連項目
- 阿寒摩周国立公園
- 日本の湖沼一覧
- クッシー
- 北海道の観光地
外部リンク
産業技術総合研究所
日本の第四紀火山『屈斜路カルデラ』 - 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
屈斜路湖地質図幅説明書 (PDF)
弟子屈町ナビ - てしかがえこまち推進協議会
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