団地
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団地(だんち)は、生活または産業などに必要とされる各種インフラおよび物流の効率化を図るために、住宅もしくは目的・用途が近似する産業などを集中させた一団の区画もしくは地域、またはそこに立地している建物および建造物を指す。団地の語源は、都市再生機構(UR)の前身にあたる日本住宅公団のさらに前身にあたる住宅営団が昭和10年代に進めていたプロジェクト「労務者向集団住宅地計画」。
日本国内における法律上の意味としては、都市計画上工業地域・住宅地などを新たに計画して建設されたものを指す。一般的には住宅の集合体を指し、建物の区分所有等に関する法律においては、一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設がそれらの建物の所有者の共有に属する場合に団地としての扱いを受けるものとされている(65条)。また、「工業団地」のように製造業等の事業所画地の集合体を指す場合もある。
目次
1 計画に当たって
2 団地設計
3 住宅団地
3.1 歴史
3.2 建て替え
3.3 戸建の団地
3.4 コハウジング
3.5 団地の名称
4 農業団地の例
5 パーク
6 団地を含む言葉
7 団地が舞台の作品
8 脚注
9 関連項目
10 外部リンク
計画に当たって
建築基準法では、一敷地一建築物が原則であり、建築基準法第86条第1項の一団地建築物設計制度と同法第86条第2項の連担建築物設計制度は、特例的に複数建築物を同一敷地内にあるものとみなして建築規制を適用する制度となっている。
都市基盤におけるインフラの整備は大きく分けると、長々期的な計画の元に国家や地方公共団体が政策主導で行なう数十年単位のものと、5 - 10年程度の間隔において比較的短期間に目標を達成して収益や効果を期待するものがある。
どちらの場合もインフラ整備には少なからぬ時間と費用を要し、団地建設のためには団地建設を費用面から支える一定規模以上の事業者や入居者が必要となり、団地建設にかかる建設費用との対比によって採算性が問われ、事業決定される。
団地では、地域としての需要と採算に見合った供給の見通しにより計画が決定されることが多い。このため住宅団地では人口のスプロール化やドーナツ化等により人口増が生じた場合への対処として、単位面積当たりの人口密度の多寡では人口密度の低い一戸建て住宅に代表される単体の居住用建物を分散して建設するよりは、集中して建設した方がバスや電車等の公共交通機関の運行や周辺施設へのアクセス等を左右する道路整備などで高密度なサービスが可能となり、利便性の観点からも効率がよい結果が得られる。
更に高効率化する場合には重層構造の居住用建物を計画して対処する。
他方、工業団地では工場から発生する音や振動等を周辺地域に及ぼしたり周辺環境を乱さないように住環境と離れた位置に集中して建設されることが多い。加えて工業団地では物流関連の観点から原材料や製品を効率的に運般可能とするために高速道路や主要幹線道路に近い立地条件に開発される場合が多い。
農業団地は、農産物を集荷し加工運般するための工場等が必要となる場合もある。
一般に、大規模なものが大都市の近郊や高速道路・鉄道路線などに設けられることが多い。また、大都市中心部などに置かれた大規模工場を住宅地に変更する際にもこの手法が採り入れられる事がある。建設の際には目的に合致した都市インフラ設備の整備も合わせて行われる。
団地設計
団地設計は渡邉高章「日本住宅公団黎明期における団地設計活動に関する研究」で定義について説明されており、「団地設計とは土地利用計画、道路設計から住棟の配置計画までいたる一連の設計活動を指すものである。」としている。なおそれに対し、配置計画は「住棟を敷地内にプランニングしていく作業を指し、必ずしも道路設計と一体化していないことが多い。」としている。
住宅団地
住宅団地の場合、日本では日本住宅公団(現・都市再生機構)や地方公共団体が建築したものを指す場合が多い。また、企業や公営企業が社宅として建設したもの(特に旧・日本電信電話公社や旧・日本国有鉄道)もある。鉄筋コンクリート造の集合住宅が建ち並んでいる姿が一般的であるが、一戸建ての住宅が建ち並んでいる住宅地でも「○○団地」と名乗っていることがある。棟の形態としては、高層住宅のものや、5階建て程度の直方体の階段室型、2階建てのテラスハウス、星型のスターハウスがある。
歴史
団地や「ダイニングキッチン」の概念を生み出した日本住宅公団初代設計課長の本城和彦から聞き取りを行った建築史家の藤森照信によると[1]、「団地」とは「集団住宅地」の略であり、これを住宅営団の内部で略して「団地」と言っていたらしい。「集団住宅地」の語の初出は1939年に日本建築学会主催で開かれたコンペ「労務者向集団住宅地計画」であり、これが戦後の1955年、日本住宅公団の「公団住宅」として実を結んだ。「団地」の語の初出は1958年に刊行された住宅公団のパンフレットである。団地の設計に当たっては西山卯三の「食寝分離論」が取り入れられた。
1950年代半ばに日本住宅公団によって建設が始まった公団住宅は、水洗トイレ、風呂、ダイニングキッチン、ベランダなどを取り入れ、近代的なものとして憧れの住宅だった[2]。
1960〜1970年代頃に建設された団地は5階建てまでになっているのが多く、エレベーターが設置されていないものが多い(集合住宅では、5階までであればエレベーターの設置が義務づけられておらず、6階以上でエレベーターを設置する義務がある。設置されていてもカゴのサイズがあまり大きくないこともあり、引越しなどで家具を搬出入する際の弊害になることがある)。
建て替え
2000年代頃から高度経済成長期に数多く建てられた団地は、老朽化とともに住民が高齢化し、バリアフリーや引越し時における負担の観点から大きな課題を抱えるようになった。また、治安も懸念されるようになった。そのため建て替えが相次いで行われるようになった。容積率に余裕を持って建てたものが多く、住宅需要の高い地域であれば高層化し戸数を増やし、余った敷地を売却して分譲住宅を建設し資金を賄うなどの手法で団地建替えが増加した。また建て替え後は一新したイメージを出すため「団地」という名称を使わないことが主流となっているため、
- 建て替えられた団地
草加松原団地 - かつて東洋一の団地と称されたが、コンフォール松原となった。また、松原団地駅も獨協大学前駅に変更された。
上野台団地 - コンフォール上野台。他分譲住宅地。
豊四季台団地 - コンフォール柏豊四季台。
赤羽台団地 - ヌーヴェル赤羽台。街並みがグッドデザイン賞を受賞。
桜上水団地 - 都内最大の団地建替え事業。桜上水ガーデンズとなった。
桜堤団地 - サンヴァリエ桜堤。
ひばりが丘団地 - ひばりが丘パークヒルズ。他分譲地。
多摩平団地 - 多摩平の森。
原宿団地 - ザ・神宮前レジデンス。
戸建の団地
広島県廿日市市の四季が丘団地にあるとおり、一戸建住宅の新興住宅地・分譲住宅地を、団地と呼ぶことがあり、これについて、「製造業等の事業所画地の集合体を『工業団地』と呼ぶのと同様に、戸建住宅画地の集合体であるため」、としている。その他、土地付一戸建の販売形態で木造平屋一戸建と一部土地のみの分譲も実施した住宅地である八千代台団地も、これを団地の範疇にして同地では「団地の発祥」を主張している。
戸建の団地には以下のようなものがある。
若槻団地...長野県企業局が造成・分譲した住宅地が広がり、一戸建てが整然と並んでいる
白銀台団地...八戸市
茂庭台団地戸建住宅地...仙台市太白区。その他仙台市内に同様の住宅団地は鶴ヶ谷・泉パークタウン・南光台・長命ヶ丘・泉ビレジ・将監・黒松などがある
七里第二団地…埼玉県さいたま市見沼区にある、戸建て住宅地- 勝田台団地...勝田台駅の南側に広がる戸建て住宅地
香椎神宮駅駅西側...昭和40年代に開発された一戸建ての住宅団地になっている- 広島県、とりわけ広島市とその近隣市町村では、単に「団地」と呼んだ場合、特に山の上等に造成された住宅団地を指すことが多い。広島市北西部に位置する西風新都にはA.CITYや花の季台・こころなど多数の住宅団地が群集している。なお一般的な「団地」は県営(市営・公営)住宅などと、住宅団地とは区別して呼ばれる。
コハウジング
コハウジング(cohousing)は、一戸建住宅群による構成の団地形態のひとつ。共住方式ともいう。各住宅の敷地境界に設える塀としての垣根を取り払う、若しくは生垣の植栽を低いものにする、等々の物理的な開放性を高くし、隣接する互いの敷地を視覚的に一体化した形式。垣根開放団地ともいう。三菱地所による神奈川県逗子市の高台に位置する逗子披露山庭園住宅(披露山公園)が日本国内の代表例。一戸当たりの平均的な敷地面積は300坪だが前述の物理的な開放性により数倍の広さに見えるのが特徴。
団地の名称
名称をつけるのに法的な規程はなく、団地という言葉自体も法的な規程はないが、建築基準法といった法規の建築用途区分上、日本では宅地であり、共同住宅タイプの団地建物は全てアパートメント、となる。規程が無いことで土地形態や場所、構造、規模仕様においての名称区別などもないので、建物の名称にはアパート、マンション、ハイツ、コーポといった団地にゆかりのある名称を付ける場合がみうけられ、近年では都市再生機構の団地立替時に、新たな名称として付けられる場合がある。
日本でマンションとは主に鉄骨や鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート造の中高層建物の集合住宅のうちで、通常は民間会社から販売され分譲形式になっているもの。
集合住宅・住宅団地などにつける呼び名として、以下のものがある。
- ハイツ
- ハイツ(heights)は高台にある集団住宅や集団住宅地を意味した。近年日本ではヒルズも同様に使用される。
- コーポ
- 主に木造や軽量鉄骨造の建物の集合住宅で使用されるコーポには語源説はいくつかあり、コーポラスが短くなってコーポになったことは知られているが、コーポラスの発生自体いろいろ語源説をもっている。共同組合の住宅を意味するコーポラティブハウスからコーポラス、これを略してコーポになったというものと、鉄筋コンクリート造の高級分譲アパートを意味するcorporate houseを略したものとある。
農業団地の例
観光農園施設、観光果樹園としても運営している。果樹団地、営農団地などとも呼ばれる
大平町ぶどう団地 - 栃木県栃木市大平町- 南信州の観光農園: 井戸入りんご団地 - 飯田市
- JAはが野益子観光いちご団地 - 栃木県芳賀郡益子町塙
- ニチダン旭川 - 北海道旭川市工業団地
- みやざき種子田団地
- 西島園芸団地 ニシジマフラワーガーデン - 高知県南国市廿枝
- 新開団地 - 島根県浜田市金城町
- 市田施設園芸団地 -
- 日田観光さくらんぼ団地 - 山形県寒河江市和泉田
- 種子田団地 - 宮崎県小林市の観光農園団地
- フルーツランドいけだ - 群馬県沼田市池田地区果樹団地の総称
- 奈良ぶどう団地
羽沢町営農団地「菅田・羽沢農業専用地区」- 岡谷ぶどう団地
- 上発知町天狗の里フルーツ団地
- 大阪府和泉市仏並町農業団地
- ガーベラ団地 - 千葉県白子町
- 藤山パイロット梨団地 - 福岡県久留米市藤山町
- 桧山果樹団地 - 周南市須金桧山
- 北島町農業公園B菜団地 - 徳島県北島町
- 椎の木団地観光農園「エコファーム内子」
- ダナ高原そ菜団地 -高山市荘川町黒谷
- 果樹園団地有田巨峰村 - 和歌山県有田郡有田川町川口
- 黒川東営農団地・観光農園 - 神奈川県川崎市麻生区黒川
- 川里水耕組合団地 - 埼玉
- 伊久間原桑園団地
- 鍋田地区さくらんぼ生産団地 - 南陽市
新島村生産団地「くさやの里」
パーク
パーク(park)は、古フランス語の「囲い」を意味する parc を語源として、特定の目的をもった地域や場所を表す名称で以下に示す団地で用いられる。
- エネルギー団地をエネルギーパーク(energy park)、工業団地・産業団地、流通団地等をテクノロジーパーク (technology park)、テクノパーク、ハイテクパーク、サイエンスパーク(science park)など。
また、スカイパーク(sky park)は、諸外国では飛行場付きの住宅団地の意味だが、日本ではそれとは異なり、以下の使用例がある。
大分県竹田市久住町にある展望台・スカイパークあざみ台 、大阪国際空港周辺緑地の伊丹スカイパーク、福島県福島市大笹生にある農道離着陸場のふくしまスカイパーク、長野県松本平広域公園の愛称信州スカイパーク、阪神競馬場のスカイパークステージ、高知県の遊園地・三宝山スカイパーク、三郷市にある三郷スカイパーク、秋田県の寒風山回転展望台・通称スカイパーク、FMおおむらの中継局・平尾スカイパーク、黒崎そごうの屋上・大スカイパーク、南陽市にある南陽スカイパーク、大村市にあるピクニックやドライブ向けの施設・琴平スカイパーク、白鷹町にある白鷹スカイパーク、航空公園・たきかわスカイパーク、白石町の有明スカイパークふれあい郷、芽室町のスキー場や展望台の新嵐山スカイパーク、など。
団地を含む言葉
- 団地族
- 団地族とは、1960年版『国民生活白書』によると「世帯主の年齢が若く、小家族で共稼ぎの世帯もかなりあり、年齢の割には所得水準が高く、一流の大企業や公官庁に勤めるインテリ、サラリーマン」とされている[3]。生活合理化への意識の高さから、パン食・イスに代表される洋式の生活や「三種の神器」(テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫)に代表される電化製品・耐久消費財が、一般に比べいち早く普及していた[3]。
- 1958年頃から団地族という名がジャーナリズムでさかんに使われるようになり、世間の羨望を集めた[3]。「ダンチ族」という言葉が初めて使われたのは『週刊朝日』1958年7月20日号の記事「新しき庶民ダンチ族 アパート住まいの暮らしの手帖」で、「ダンチ族は新しい都会の中堅庶民層」としてその生活エピソードを紹介している[3]。
- 団地妻
- 有閑マダムの一種。各住戸が鉄扉(玄関ドア)一枚で仕切られるようになり、隣戸間(りんこかん)の相互干渉が減少し、発生したとされる。複数の映画シリーズ、小説が生まれた。
- 団地造成
- 団地造成(だんちぞうせい)とは、団地を造成すること。一般に団地造成事業と呼ぶ。1例として豊橋鉄道の住宅団地造成(芦原駅が復活)、入野駅 (広島県)周辺造成住宅団地、泉区 (仙台市)団地造成、桜川 (青森市)団地造成など。不動産業での団地造成宅地販売という言葉もある。工業団地造成を契機に快適な道に改良するため、大規模団地造成等のため地区割を変更するケースも多い。臨海部の工業団地造成の場合埋立を伴うものも多い。
- 団地萌え
工場萌えなどと同様、団地そのものを趣味の対象にすることを呼ぶ。現在、様々な団地の写真を集めた写真集やWebサイトなどが複数作られている。
団地が舞台の作品
- ひょっとこスクール
- 団地ともお
- 童夢
- 耳をすませば
- クロユリ団地
- みなさん、さようなら
- 団地で暮らそう!
- まんまる団地
- しあわせ団地
- 団地殺人事件シリーズ
団地妻シリーズ
しとやかな獣 - 1962年、監督川島雄三
私は二歳 - 1962年、監督市川崑
- 団地・七つの大罪 - 1964年、監督千葉泰樹・筧正典
- 壁の中の秘事 - 1965 年、監督若松孝二
夕陽カ丘三号館 - 1972年、テレビドラマ
家族ゲーム - 1983年、監督森田芳光
ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY - 2002年、監督堤幸彦
- 未来ハウジングの今:ベルリン・インターバウ・ハウジングの記録 - 2007年、監督Marian Engel、ドイツ西ベルリンにある1957年築の団地のドキュメンタリー
- 桜の樹の下 - 2015年、監督田中圭、川崎市営野川西団地のドキュメンタリー
団地 - 2016年、監督阪本順治
海よりもまだ深く - 2016年、監督是枝裕和
- 限界団地
脚注
^ 藤森照信『天下無双の建築学入門』 ちくま新書 p.151
^ 『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』第6回 「妻へ贈ったダイニングキッチン 勝負は一坪・住宅革命の秘密」(公団住宅・日本住宅公団) 2000年5月2日放送
- ^ abcd青木俊也 「1章 団地・2DKの誕生」『再現・昭和30年代 団地2DKの暮らし』 河出書房新社、2001年5月30日、51-53頁。ISBN 4309727093。
関連項目
- 工業団地
公団住宅/都市再生機構
公営住宅/地方住宅供給公社
- ニュータウン
集合住宅
プルーイット・アイゴー(アメリカの失敗例)
日本の住宅団地一覧
八千代台団地(住宅団地発祥の地。戸建中心)
金岡団地(日本最初の公団住宅。集合住宅による)
晴海団地(都市型公団住宅における高層住宅の先鞭)
うぐいす住宅(昭和30年代の高度経済成長期における団地ブームの第一号ともいえる存在)
マンモス団地
ひばりが丘団地(日本最初のマンモス団地。住宅公団によるニュータウン開発の嚆矢)
常盤平団地、小金原団地
ポイントハウス(箱型の集合住宅が並ぶ画一的な景観にアクセントを加える意図でデザインされた集合住宅。春日丘団地やひばりが丘団地には歴史的建築物としてスターハウスが保存されている)
- L字型ポイントハウス
- ダブルスターハウス
生協団地/日本勤労者住宅協会
- テラスハウス
- 管理組合
- 大山顕
- フルシチョフカ
外部リンク
日本の集合住宅-アパート、マンションに見る20世紀(国立国会図書館)
公団ウォーカー(日本各地の集合住宅団地のスナップ写真集)
Panoramio(グーグルアースに掲載された団地の写真)