オープンカー
この記事には複数の問題があります。改善やノートページでの議論にご協力ください。
|
オープンカーとは、屋根がないか、もしくは屋根開放が可能な乗用自動車を指す言葉。和製英語である。
馬車の歴史からボディスタイルを詳細に区別する欧米では、アメリカ合衆国ではコンバーチブル(Convertible )、イギリスではロードスター(Roadster )もしくはドロップヘッドクーペ(Drophead Coupe )、フランスやドイツではカブリオレ・カブリオレット(Cabriolet / Kabriolett )やカブリオ (Cabrio )と呼ばれるものが現代の代表的なオープンカーである。黎明期の自動車はオープンボディであったが、クローズドボディのセダンが一般化したため、従来のオープンボディの自動車を示すレトロニムである。現代では開放的な走りを楽しむ趣味的な車として使用されることが多い。客室が開放され外部へのアピールができるため、このタイプの車両は馬車の時代から各種のパレードや式典などでも用いられている。
現在では、ほとんどの車種が折りたたみや取り外しが可能な幌を備えており、車種によっては収納式や取り外しが可能なハードトップが用意されているものもある。
目次
1 概要
1.1 日本のオープンカー市場
1.2 ボディースタイル一覧
2 安全性
3 レーシングカー
4 改造オープンカー
5 オープンカーの車種
6 ギャラリー
7 関連項目
概要
黎明期の自動車は基本的にすべてがオープンカーであった。エンジン出力にまだ制約があったこの時代には、自動車に大きな屋根を取付けて車体重量を増やすことは、パワーウェイトレシオを低下させた結果として速度も出ない、無駄なものだった。また現在の乗用車の主流であるモノコックボディではなく、頑丈なフレームにエンジンやトランスミッションなどの装備を配したため、ボディ形状による強度の問題もなかった(モノコック構造は開口が存在すると強度が低下するため、密閉構造が理想となる)。したがって、当時の自動車は通常は剥き出しで、当時の馬車ではすでに当たり前だった箱型の客室ではなく、よくても重量の少ない簡単な幌しか付いていなかった。
やがて自動車が広く一般家庭にまで普及し、エンジンの出力が上がって必要なだけの馬力とスピードが確保できるようになると、二の次だった車内の居住性にも配慮できるようになり、恒久的な屋根で被われた箱形の自動車が以後の主流となった。
今日の自動車はモノコック構造が主流であり、モノコック車をベースとして屋根をカットした車種は強度と剛性が損なわれる弱点がある。そのためオープンカーにはそれらを補うための工夫が施されている。ルーフ部分だけが着脱可能でその他の部分を残したタルガトップという形式も編み出された。強度確保のためだけでも、屋根付きの車両の開発の後工程として開発時間がかかり、また部品点数も多くなる。屋根がないから安価なのではなく、屋根をカットしながらも強度を確保するからこそコストがかかり、そのため重量も増し、高価格となる。また屋根やその動作部分を収納するため、座席やトランクスペースが犠牲となっているなど、趣味性の高い自動車といわれる。
日本ではオープンカーは伝統的に「幌型」と呼ばれ、現在の自動車検査証上でもそう表記されている。Tバールーフはハードトップに分類され、表記は「箱型」となる。また、クーペカブリオレもハードトップであるが、こちらは「幌型」となる。
海外で「オープンカー」に相当する用語には「バルケッタ」(barchetta )、「ロードスター」(roadster )、「スパイダー」(spider )、「カブリオレ」(cabriolet )、「コンバーチブル」(convertible )などがある。呼称の違いは国によるものの他にも、「バルケッタ」「ロードスター」「スパイダー」 は「屋根を閉められる車」、「カブリオレ」「コンバーチブル」 は「屋根を開けられる車」という車造りの方向性の違いにも立脚しており、幌の有無や面積、耐候性なども違いが見られる。
また、最近ではより高い耐候性と耐久性、安全性を備えた「クーペカブリオレ」「リトラクタブルハードトップ」と呼ばれる電動格納式ハードトップも増え、フィアット・500Cやシトロエン・DS3カブリオのようにキャンバストップの延長線上にあるオープンモデルも登場している。
これらのほとんどが2ドア車なのに対し、以前は4ドア車の「フェートン」というタイプがあったが、現在では一部の式典用を除いて消滅したため、ほとんど使われなくなった。
なお近年ではアウディなど一部のメーカーで、クーペ派生の二座モデルには「ロードスター」、セダン派生の2ドア・四座のものには「カブリオレ」の名称を用いて区別しているところがある。「ロードスター」は車体の大部分がそれ専用の部品から成り立っているか、スポーツカーからの派生で、「カブリオレ」は大衆車(ファミリーカー)をベースにしている場合が多い。例外として、生産車のすべてがスポーツカーであった時代のポルシェでは、356にスピードスター、ロードスター、コンバーチブル(カブリオレ)の3タイプが、911にはスピードスターとカブリオレの双方がそれぞれ存在しており、911/912と914にはデタッチャブルトップのタルガもラインナップする。
日本のオープンカー市場
日本車で1933年に登場した日産のダットサン12型フェートンに始まり、1935年にダットサン14型ロードスターで、ロードスターの名が使われた。2名分のシートをトランクルーム格納式とした2+2のクーペをベースとした、よりスポーティーなロードスターがラインナップに追加された。
その後この流れは、戦後初のスポーツカーとなった1952年のダットサン・スポーツDC-3や、オースチンとの提携による「ダットサン・1000」をベースとしたFRPボディーを採用した1959年の「フェアレディ」へと受け継がれて行く。これらは車名にロードスターの名は付けられなかったが、北米では後継となる SR311型(フェアレディ2000) まで、ダッツン(ダットサン)・ロードスターとして親しまれた。
1962年には四輪車製造に参入したばかりの本田技研工業がS360を発表し、後のSシリーズの布石となる。しかし1960年代末から主な輸出先となる北米の保安基準の強化による一般的な屋根つき車体(クローズドボディー)への移行や、排ガス規制に対応を迫られた時期の開発費の削減などの理由のほか、オイルショックなどの社会的な背景から、その後、このジャンルは、前述のユーノス・ロードスターの登場まで、長期にわたる空白を迎える。また、そのほかのオープンカーも、高い趣味性ゆえ、流行や景気の動向にその売上が左右されやすいことなどから、幾度となく市場からの撤退をよぎなくされている。
日本のマツダが1989年に発売した「ユーノス・ロードスター」(後の「マツダ・ロードスター」)は、新時代のロードスター車の先駆けであり、今日では「ロードスター」の代名詞となった。このユーノスあるいはマツダ・ロードスターは、マツダの大衆車であるファミリア用の1,600ccエンジンを改良したものを車体前部に搭載し後輪を駆動、専用の車体を与えられた。
1980年代前半以来、この分野は隙間市場となっており、化石的ともいえる旧世代の生き残りモデルも絶えて久しく、一部の海外高級車を除くほとんどの自動車メーカーも進んで手を出すことがなかった。しかし、ユーノス / マツダ・ロードスターは2004年4月までに70万台を出荷し、2人乗りの小型オープンスポーツカー生産台数世界一としてギネスに認定されるなど、この分野での最高の成功作となった。また2002年にはダイハツ・コペン、2015年にはホンダ・S660が発売されるなど、新車の開発もわずかながら続いている。
ボディースタイル一覧
一部は商標
- ロードスター(Roadster ) - 基本的に二人乗り。
- カブリオレ(Cabriolet )/カブリオ(Cabrio ) - 馬車の一形態が由来。しっかりとした幌と幌骨を持つ。
- スパイダー(Spider ) - スポーツ/スポーティーカー。低い姿勢がクモを連想させることから。
- バルケッタ(Barchetta ) - イタリア語で小船の意。
- コンバーチブル(Convertible )
- スピードスター(Speedster ) - ポルシェの商標。
ドロップヘッドクーペ(Drop head coupe ) - 英国流の2ドアオープンカーの呼称。
デカポタブル - フランス語で「屋根をはずせる」の意。
フェートン - 4ドアオープンカー。- クーペカブリオレ
- ラナバウト
- トノー
- 幌車
- 幌型
ハードトップ - ソフトトップの対義語。
タルガトップ - 「タルガ」はポルシェの商標。
Tバールーフ - Tトップ。
安全性
オープンカーの安全面で問題となるのが、ロールオーバー(横転)した場合の乗員に対する重大な危険性である。Tバールーフやタルガトップ、または横転時に瞬時に突出して頭部を保護する干渉装置等の安全機構の装備が存在する。ユーロNCAPなどの第三者機関による衝突安全テストでは、オープンカーはそれ単体でクラス分けされ、クローズドボデーとは異なる基準でテストされている。
レーシングカー
自動車レースの最高峰といわれるフォーミュラ・ワンクラスのマシンをはじめとして、レーシングカー(特にフォーミュラカー)には伝統的にオープンカーが多々見られる。またプロトタイプスポーツカーにも採用されることがある。
一分一秒を争う自動車レースの世界では屋根やクーラーの重さが致命的となる。運転席(レーシングカーでは特に「コックピット」という)の広さを人一人がやっと収まるほどの極限にまで小さくして無駄を省いているのと同様に、屋根などという「サーキットでは無用の長物」は取り付ける必要はないとみなされていたのである。
ただしレーシングカーの設計においては、抵抗を減らすなど空気力学的な理想を追求する事も求められる。オープン構造だと空気力学的には不利になるのは自明である。よって、オープン構造は一長一短という事になる。F1をはじめとするフォーミュラカーの車体が依然として旧来の形態をとどめているのは、レーシングカーの伝統という文化的な側面や、事故時にドライバーを救出しやすくするためなどの理由がある。
一方で物がドライバーに直撃して重傷・死亡する例も近年起きており、クローズドコックピット化にしようという議論も起きている。LMPマシンはその理由から総クローズド化が進んでいるが、フォーミュラに関しては脱出やクローズドコックピットの強度の問題などもあり依然として進んでいない。
改造オープンカー
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証し出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2015年10月) |
オープンカーは野外行事や祝典に用いられることが多い。しかし市販されているオープンカーは幌が設置される関係上、後部座席が狭いものが多い。そこで本来はオープンカーではない車をオープンカーに改造することがしばしは必要になる。
旧ソビエト連邦と後継国のロシア連邦、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国などでは、軍事パレードの際に国家の最高指導者や軍の指揮官などが改造オープンカーに立った状態で乗って兵士たちを閲兵するのが通例である。
また、要人や有名人のパレードにオープンカーを使う場合も多い。ただし、昨今ではセキュリティの観点から使われないケースも増えてきている。
かつて王室や国家元首が参加する公式行事には、ロールス・ロイスなどの高級車を改造したオープンカーが使用されることが多かった。アメリカでも1960年代初頭までは、大統領が加わるパレードや地方遊説などには、リンカーンやキャデラックを改造したオープンカーが使われることが多かった。しかし1963年11月22日のケネディ大統領暗殺事件以後は事情が一変し、現在では現職大統領のオープンカー使用はほぼ皆無となっている。
ローマ教皇庁でもかつては、教皇が外国を訪問した際に行うパレードやお膝元のサンピエトロ広場に集まった群衆に親しく祝福を与える行事などでオープンカーを使用していたが、1981年5月13日のヨハネ・パウロ二世暗殺未遂事件で教皇が重傷を負ったことを機に警護が徹底化され、以後はメルセデス・ベンツ・Gクラスを改造したオープンカーの上部に四面を強固な防弾ガラスで囲んだショーケースのような覆いを乗せた専用車(パパモビル)を使用することになり、現在に至っている。
なお日本ではスポーツ競技などで優勝決定後の祝賀パレードにオープンカーを使用することが多い。競技者が腰掛けるのは通常後部座席の背もたれの上部で、一人ないし二人を乗せる。この際によく使われるのは、トヨタ・クラウンや日産・セドリックを改造したオープンカーが多い。このような車両は普段はメーカーの車庫で保管されており、必要に応じて貸し出される。
日本のプロ野球などは、参加選手の多い場合は、オープンタイプのバスが使われることがある。1998年の横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)優勝パレードの際には、横浜市交通局磯子営業所所有で1998年度廃車予定の路線バスをオープンバスに改造して投入していた。2004年に日の丸自動車興業がオープントップバスを使用した定期観光バス「スカイバス東京」の運行を開始してからは優勝パレードでスカイバス専用車を使用する機会も増えている。
オープンカーの車種
オープンカーまたはオープンボディをバリエーションに持つ車種をあげた。いずれも生産を終了した車種を含む。◎は現在生産中の車種を表す(輸入車を除く)。順不同。
日本メーカー
マツダ(一時は下記の3車種を同時に生産していた。)
マツダ・ロードスター◎- サバンナRX-7 カブリオレ
- ファミリア カブリオレ
スズキ
- ジムニー
- カルタス コンバーチブル
- X-90
- エスクード
- カプチーノ
ホンダ
- S500
- S600
S660◎- S800
- バモス(初代)
- シティーカブリオレ
CR-Xデルソル(1992年デタッチャブルトップ)- NSX タイプT
- ビート
- S2000
トヨタ
トヨタジープ/ランドクルーザー20/40/70系ソフトトップ- パブリカ コンバーチブル
- セリカ コンバーチブル
- サイノス コンバーチブル
- カムリソラーラ コンバーチブル
- MR-S
- トヨタ・MRスパイダー
- レクサス・SC
- レクサス・IS250C
日産
4W60型系/パトロール60型系ソフトトップ- ダットサン・ロードスター/フェアレディ
フェアレディZ コンバーチブル/ロードスター◎(ロードスターのみ生産中)- シルビア コンバーチブル/ヴァリエッタ
- マイクラC+C
- マーチ カブリオレ
- パルサーEXAコンバーチブル
インフィニティ・G37コンバーチブル
三菱
- ジープ J2/J3/20/40/50系
- パジェロ スポーツターボ
3000GT スパイダー・リトラクタブルハードトップ(1994年)- エクリプス スパイダー
ダイハツ
- コンパーノスパイダー
- フェロー バギー
タフトソフトトップ
ラガーソフトトップ- リーザスパイダー
コペン◎
いすゞ
- ユニキャブ
ビッグホーンソフトトップ
スバル
- ヴィヴィオTトップ
光岡
ヒミコ◎
ロックスター◎- ガリューコンバーチブル
- ゼロワン
- マイクロカー K-4
- タイプF
- ドゥーラ
- ゼロワン1600
- BUBUクラシックSSK
- BUBUスピードスター356
海外メーカー
MG/MGローバー
- MGA
- MGB
- MGC
- ミジェット
- MGF
- RV8
ポルシェ
356カブリオレ/コンバーティブルD/スピードスター
911カブリオレ/スピードスター- ポルシェ・914
ポルシェ・944S2カブリオレ
ポルシェ・968カブリオレ- ポルシェ・ボクスター
BMW
- 507
- ノイエクラッセ
3シリーズカブリオレ
Z1/Z3/Z4/Z8
6シリーズ カブリオレ
アルピナ・B6スーパーチャージカブリオ- BMW・ミニコンバーチブル
メルセデス・ベンツ
- SLKクラス
- SLクラス
CLKクラスカブリオレ- SLRマクラーレン ロードスター
アルファロメオ
- スパイダー
プジョー
404カブリオレ
304カブリオレ
204カブリオレ
504カブリオレ
205CTi- 206CC
306カブリオレ- 307CC
- 207CC
- 207CCGT
ルノー
- フロリド/カラベル
- GP4
19 カブリオレ
メガーヌ カブリオレ/グラスルーフカブリオレ- ウインド
シトロエン
DS デカポタブル- メアリ
C3プルリエル
フォルクスワーゲン
タイプ1カブリオ
ヘブミューラーカブリオ
カルマンギアカブリオ
ゴルフカブリオ
ニュービートルカブリオレ- イオス
フィアット
- バルケッタ
124スパイダー
プントカブリオレ- X1/9
クライスラー
PTクルーザーカブリオ
セブリングコンバーチブル
ルバロンコンバーチブル
フェラーリ
F430スパイダー- カリフォルニア
360スパイダー
458スパイダー
ランボルギーニ
ディアブロVT/SVロードスター
ムルシエラゴロードスター
ガヤルドロードスター
アヴェンタドールロードスター
マセラティ
- スパイダー
- グランカブリオ
ロータス
- エラン
- エリーゼ
- スーパーセブン
トライアンフ
- スピットファイア
TVR
- タモーラ
- キミーラ
- グリフィス
ジャガー・XK コンバーチブル
アストンマーティン DB9ヴォランテ
アウディ
TTロードスター
R8スパイダー
S5カブリオレ
A4カブリオレ
RS5カブリオレ
- オペル・スピードスター
シボレー
インパラ・コンバーチブル(2代目)
コルベットコンバーチブル
カマロコンバーチブル
フォード
マスタングコンバーチブル
フォード・GTGTX1
- ポンテアック・ソルスティス
ダッジ・バイパーコンバーチブル
KTM
- X-BOW
ギャラリー
マツダ・ロードスター
ダットサン・スポーツDC-3
日産フェアレディZ280ZX Tバールーフ
レクサスSC430
ダイハツコペン
MG F
サーブ・ソネットI
ポルシェ・356スピードスター
オースチン-ヒーレースプライトMkI
コルベット(C2)コンバーティブル
ロータス・エランシリーズ4
ジャガー・Eタイプ シリーズ1(4.2L)
アストンマーティン・DB7・V12ヴァンテージヴォランテ
ルノー・メガーヌグラスルーフ。カブリオレ電動格納式のハードトップを装備している
日産・セドリックを改造したパレード用オープンカー
プジョー・403クーペ
BMW M6 カブリオレ
BMW Z4
BMW Z3 2.5i ロードスター
メルセデス・ベンツ SLクラス
関連項目
本文中にリンクのあるものを除く。
クーペ - 固定された屋根を備える自動車
ミッレミリア - かつてイタリアで開催されていた伝説的な自動車レース
オープントップバス - 主に観光目的で運行される屋根のないバス。- ライトウェイトスポーツ
|