航続距離
航続距離(こうぞくきょり)とは、航空機や船舶が燃料を最大積載量まで積んで飛行できる、または航行できる最大距離のことである。
目次
1 航空機
1.1 導出
1.1.1 プロペラ機
1.1.2 ジェット機
1.2 マッハ数による算出
2 船舶
3 脚注
4 関連項目
航空機
航続距離は対地速度に最大飛行時間 tmax を乗じたものである。
以下に、プロペラ機とジェット機について航続距離を求める計算式を示す。
導出
単位時間に、どれだけの燃料を消費するか(燃料消費率)は、まず、下の式で求められる :
F=dWfdt{displaystyle F={frac {dW_{f}}{dt}}}
燃料を燃やした分 (dWf) 航空機の重量は軽くなる (-dW) ので、dWf = -dW. よって
F=−dWdt{displaystyle F=-{frac {dW}{dt}}}
単位距離あたりの燃料搭載量の変化量は、次の式で求める。但しVは速度である:
dWdR=dWdtdRdt=FV{displaystyle {frac {dW}{dR}}={frac {frac {dW}{dt}}{frac {dR}{dt}}}={frac {F}{V}}}
それから、航続距離は次の定積分で求められる:
R=∫t1t2Vdt=∫W1W2−VFdW=∫W2W1VFdW{displaystyle R=int _{t_{1}}^{t_{2}}Vdt=int _{W_{1}}^{W_{2}}-{frac {V}{F}}dW=int _{W_{2}}^{W_{1}}{frac {V}{F}}dW}
ここで V/F は航続率と呼ばれ、単位燃料重量あたりの飛行距離を表す。
ここでは航続率は航空機がほぼ安定した飛行をしているものという前提で求めている。
次の節では、ジェット機とプロペラ推進機の違いについて述べる。
プロペラ機
プロペラ機では、平衡条件 Pa = Pr から、ある航空機重量のときの水平飛行の速さを求めなければならない。
推進効率 ηj と燃料消費率 cp は、それぞれが飛行速度の関数になっている。
エンジン出力は下式で求める:
Pbr=Paηj.{displaystyle P_{br}={frac {P_{a}}{eta _{j}}}.}
次に、対応する燃料重量流量を求める :
F=cpPbr.{displaystyle F=c_{p}P_{br}.}
推進に要する出力(仕事率)は抗力かける速度であり、抗力は揚抗比から計算する。水平飛行なので揚力 L = 重量 W であることに注意すると、
Pbr=DV=L(CL/CD)V=(CDCLW)V.{displaystyle P_{br}=DV={frac {L}{(C_{L}/C_{D})}}V=left({frac {C_{D}}{C_{L}}}Wright)V.}
揚抗比の比が一定と仮定すると、積算の航続距離は次式となる:
R=ηjcpCLCDlnW1W2.{displaystyle R={frac {eta _{j}}{c_{p}}}{frac {C_{L}}{C_{D}}}ln{frac {W_{1}}{W_{2}}}.}
航続距離の解析的な表現を求めるには、航続率と燃料重量流量が、航空機と推進システムに依存していることに注意しなければならないが、もしそれらが一定だと仮定すると:
R=ηjcpCLCDlnW1W2.{displaystyle R={frac {eta _{j}}{c_{p}}}{frac {C_{L}}{C_{D}}}ln{frac {W_{1}}{W_{2}}}.}
ジェット機
同様に、ジェット機の計算は、次の方式でおこなわれる。
ここでは、ほぼ安定な水平飛行を仮定する。
次式の関係を利用する。
D=CDCLW{displaystyle D={frac {C_{D}}{C_{L}}}W}
推力は、以下のように書ける:
T=D=CDCLW{displaystyle T=D={frac {C_{D}}{C_{L}}}W}
ジェットエンジンは燃料消費量に対する推力で特徴付けられる。
つまり、燃料消費量はエンジン出力にではなく抗力に比例している。
F=−cTT=−cTCDCLW{displaystyle F=-c_{T}T=-c_{T}{frac {C_{D}}{C_{L}}}W}
揚力の式を使うと、
12ρV2SCL=W{displaystyle {frac {1}{2}}rho V^{2}SC_{L}=W}
ここでρは空気密度、Sは翼面積。
航続率は次式に等しい:
VF=1cTWWS2ρCLCD2{displaystyle {frac {V}{F}}={frac {1}{c_{T}W}}{sqrt {{frac {W}{S}}{frac {2}{rho }}{frac {C_{L}}{C_{D}^{2}}}}}}
最後に航続距離が求められる :
R=∫W2W11cTWWS2ρCLCD2dW{displaystyle R=int _{W_{2}}^{W_{1}}{frac {1}{c_{T}W}}{sqrt {{frac {W}{S}}{frac {2}{rho }}{frac {C_{L}}{C_{D}^{2}}}}}dW}
一定の高度、一定の迎え角、一定の燃料消費率で巡航しているときは、航続距離は次のようになる:
R=2cT2SρCLCD2(W1−W2){displaystyle R={frac {2}{c_{T}}}{sqrt {{frac {2}{Srho }}{frac {C_{L}}{C_{D}^{2}}}}}left({sqrt {W_{1}}}-{sqrt {W_{2}}}right)}
但し、航空機の航空力学的な特性による圧縮率は無視する。
マッハ数による算出
成層圏での長距離ジェット飛行では音速は一定であり、そのため一定のマッハ数で飛行するとその航空機は局地的な音速を変えることなく上昇する。
この場合、
V=aM{displaystyle V=aM}
ただし、Mが巡航マッハ数で、aが音速を意味する。
航続距離の式は次のように変形できる:
R=aMcTCLCD∫W2W1dWW{displaystyle R={frac {aM}{c_{T}}}{frac {C_{L}}{C_{D}}}int _{W_{2}}^{W_{1}}{frac {dW}{W}}}
または、
R=aMcTCLCDlnW1W2{displaystyle R={frac {aM}{c_{T}}}{frac {C_{L}}{C_{D}}}ln{frac {W_{1}}{W_{2}}}}
船舶
船は他の交通機関と比べて比較的、船体に余裕があるため、大きなタンクに大量の燃料を搭載することが出来る。また、低速で航行すれば燃費は良くなるので航続距離は長大であり、タンカーなどは2ヶ月間、地球を半周する距離を無補給で航海できる[1]。近年ではタンカーの大型化も進み、航続距離が40,000km(地球1周に相当)を超えるような超大型タンカーも就役している[2][3]。
脚注
^ 池田良穂監修 『船のすべてがわかる本』 ナツメ社 2009年2月9日発行 ISBN 9784816346408
^ 川崎重工業プレスリリース http://www.khi.co.jp/news/detail/c3021226-1.html
^ 出光タンカーによる自社船舶紹介 http://www.idemitsu.co.jp/tanker/know/trivia/service/communication4.html
関連項目
- 航空工学
- 船舶工学
- 空中給油