フォント
フォント(英: font) は、本来「同じサイズで、書体デザインの同じ活字の一揃い」を指す言葉だが、現在ではコンピュータ画面に表示したり、紙面に印刷(書籍など)したりするために利用できるようにした書体データを意味している。金属活字の時代から書体の世界に関わっている者からは、データとしてのフォントはデジタルフォント (digital font) として区別して呼ばれることもある。
書体という言葉は、現在ではフォント(の使用ライセンス数)を数える単位としても用いられるが、ここでは分けて考えることとする。(書体参照)
目次
1 一般的なコンピュータ用フォントの分類
1.1 等幅フォントとプロポーショナルフォント
1.2 データ形式による分類
1.2.1 ビットマップフォント
1.2.2 スケーラブルフォント
1.2.2.1 ストロークフォント
1.2.2.2 アウトラインフォント(袋文字)
1.3 ファイル形式(または利用できるシステム)による分類
1.3.1 アウトライン形式
1.3.2 ビットマップ形式
2 フォントが持つデータ構造
2.1 グリフデータ
2.2 組版のためのデータ
3 法的保護
4 ユニバーサルデザイン
5 学参フォント
5.1 代表的な学参フォントとそのメーカー
6 代表的なフォントベンダー
6.1 和文
6.2 欧文
7 脚注
8 関連項目
9 外部リンク
一般的なコンピュータ用フォントの分類
等幅フォントとプロポーショナルフォント
- 等幅フォント
- プロポーショナルフォント
それぞれの文字の幅が統一されているフォントを等幅フォント、そうでないフォントをプロポーショナルフォントと呼ぶ。一般にプロポーショナルフォントの方が自然で読みやすいとされるが、初期のデジタルフォントでは技術的制約から等幅フォントが多用された。詳細についてはプロポーショナルフォントを参照。
データ形式による分類
ビットマップフォント
ドットの組み合わせで文字を表現したフォントで、コンピュータの初期には、容量の節減および描画速度の確保のためビットマップフォントを利用した。日本語文字においては、当時はフォントを全て記憶するには記憶容量 (RAM) が少なかった上に、かといって逐次必要なフォントをフロッピーディスクドライブから読み出すのも速度的に問題があるので、漢字ROMにビットマップフォントを格納して運用されることが多かった。現在でも、スケーラブルフォントからビットマップフォントを生成するとき、文字が小さいと線間の調整ができずに潰れて読めなくなってしまうことが多いために、小さな文字ではビットマップフォントが使われることもある[1]が、フォントヒンティングで対応することもある。
8ドットサイズの英字、カタカナ文字が利用できるフォント。400ラインのディスプレイの普及や、漢字が扱えるようになり、16ドットサイズのフォントがコンピュータに搭載されるようになった。印刷では、ワープロ(専用機)を中心に一部で24ドット、48ドットなどのフォントも利用され始め、データサイズの増大からスケーラブルフォントへ移行していった。
スケーラブルフォント
線の位置や形、長さなどで文字の形を作るため、拡大縮小しても、ビットマップフォントのように字形に影響がない。そのためスケーラブル、拡縮自由などと冠される。拡縮自由なフォントとしては、ストロークフォントやアウトラインフォントがある。
ストロークフォント
文字の形状を、中心線だけの情報で保持するフォント形式。線の太さなどは扱わないためデータ量は軽く、かつ出力デバイスの解像度に依存しない。CADシステムやプロッタなどで使用される。なお、「ストロークフォント」という言葉は、文字をストロークごとに分解して管理する作成・生成・管理システム(それをフォントプログラムとして実装した例としてはダイナコムのストロークベーステクノロジなど)や、派生した形式(一つの骨格からファミリーを生成する技術など)を指すこともある。アルファブレンドの三次ベジェ曲線で構成され筆順を持つストロークフォントはASPで利用可能である。
アウトラインフォント(袋文字)
文字の輪郭線の形状を、関数曲線の情報として持つフォント形式。実際に画面や紙に出力する際には、解像度に合わせてビットマップ状に塗り潰すラスタライズが必要になる。
日本ではワープロやDTPを中心にアウトラインフォントの利用が普及し、WYSIWYGが普及したために、コンピュータ画面でもスケーラブルラインフォントの利用が広がった。(当初のDTPは、プリントアウトにはアウトラインフォントを使い、画面表示にはビットマップフォントを使用するワークフローが基本だった)
ファイル形式(または利用できるシステム)による分類
アウトライン形式
ビットマップの埋め込みができる形式も多い。
TrueTypeフォント
Windows、Macintosh共通で利用できることを想定したフォント。LinuxおよびFreeBSDでも利用可能。macOSでも、そのままWindows用TrueTypeを扱うことができる。2次Bスプライン曲線で字形を制御する。ビットマップフォントを内蔵できる。TrueTypeフォントをPostScriptプリンタで処理するための形式をType42という。
- TrueType GX
PostScriptフォント
- Macintoshで普及し使われるフォントで、三次ベジェ曲線で字形を制御する。
- Type1フォント
- 1バイト言語用のフォントで、256文字まで格納できる。
- 一般にType1と呼ばれていても、実際にはType3や5のものなどがあるので注意が必要。詳しくはPostScriptフォントを参照。
- Type 1 GX
OCFフォント
- 2バイト言語用のフォントで、Type1フォントを多数積み重ねた構造をしている。PostScriptのタイプ別でいうと、Type0(Type1や3を組み合わせた形式)に当たる。
CIDフォント
- OCFフォントを改良し、CIDコードとCマップなど、2バイト言語用に簡素化した構造を採用したフォント。異体字切り替え機能を有する。一部仕様が変わった拡張CID (sfntCID) という規格もあり、モリサワのNewCIDフォントはこれに当たる。PostScriptのタイプ別でいうと、Type9に当たるものが多い。(TrueTypeベースのCIDフォントなどは例外)
OpenTypeフォント
- Windows、Macintoshでの互換性を実現したフォントで、TrueTypeとPostscriptの2つの形式を持つ。CIDよりも強力な異体字切り替え機能や、フォントレベルでのダイナミックダウンロード対応(= プリンタフォントが不要)などが特徴。PostScriptのタイプ別でいうと、Type2(データサイズを抑えることのできる形式)に当たる。
METAFONT
- 組版システムのTeXとともにドナルド・クヌースが開発したフォント用のプログラミング言語。Computer Modernのデザインに使われた。
- WIFEフォント
- Windows上で日本語などの2バイトフォントを扱うための機構の1つである、WIFE (Windows Intelligent Font Environment) の仕様に基づいて作られたフォント。Windowsにはラスタライザは付属せず、サードパーティー各社から発売されたラスタライザを入手する必要があった。また、各ラスタライザ間の互換性はなく、それぞれのラスタライザに対応するフォントしか使用できなかった。Windows 3.0時代に普及したが、Windows 3.1で標準装備されたTrueTypeの普及などにより、次第に利用されなくなった。
- 書体倶楽部形式
- EOT (Embedded OpenType) フォント
- OpenTypeフォントを圧縮したもの。Microsoftがウェブフォントとして採用しており、W3Cで仕様が公開されている[1]。
- EOT Lite
- EOTフォントを簡略化したもの。Ascender Corporationが発表。
- WOFF File Format
- Firefox 3.6がウェブフォント形式として対応予定。
- OFF (Open Font Format)
- ISO/IEC 14496-22:2009
- CFF (Compact Font Format)
- ISO/IEC 14496-22:2009
- SFD (Spline Font Database File Format)
- FontForgeで使われるフォントの保存形式。全てがASCIIで表現されるためサイズは大きいが、diffを取りやすいなどの理由により開発に使われることが多い。
- SVGフォント
SVGではフォントを定義することができ、そのフォントをSVGフォントと呼ぶ。しかしながら、仕様にはシステムフォントへの変換はしてはならないとある。
ベンダー独自
写研のCフォントやシャープのLCフォント、モリサワのKeiTypeなどのベンダーで閉じた独自形式のものが存在する。
ビットマップ形式
BDF
UNIXで標準的に使用されたビットマップフォント用の形式。
- 丸漢フォント
Macintoshで標準的に使用されたビットマップフォント用の形式。
- SNF (Server Natural Format)
- PCF (Portable Compiled Format)
フォントが持つデータ構造
グリフデータ
- エンコード
ビットマップや制御点の位置
組版のためのデータ
- 字送り量
カーニング情報
合字情報
法的保護
最高裁判所判例 | |
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事件名 | 著作権侵害差止等請求本訴、同反訴事件 |
事件番号 | 平成10(受)332 |
平成12年09月07日 | |
判例集 | 民集 第54巻7号2481頁 |
裁判要旨 | |
印刷用書体が著作権法二条一項一号にいう著作物に該当するためには、従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性及びそれ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならない。 | |
最高裁判所第一小法廷 | |
裁判長 | 井嶋一友 |
陪席裁判官 | 遠藤光男 藤井正雄 大出峻郎 町田顯 |
意見 | |
意見 | 全員一致 |
参照法条 |
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一 著作権法二条一項一号は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を著作物と定めるところ、印刷用書体がここにいう著作物に該当するというためには、それが従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならないと解するのが相当である。この点につき、印刷用書体について右の独創性を緩和し、又は実用的機能の観点から見た美しさがあれば足りるとすると、この印刷用書体を用いた小説、論文等の印刷物を出版するためには印刷用書体の著作者の氏名の表示及び著作権者の許諾が必要となり、これを複製する際にも著作権者の許諾が必要となり、既存の印刷用書体に依拠して類似の印刷用書体を制作し又はこれを改良することができなくなるなどのおそれがあり(著作権法一九条ないし二一条、二七条)、著作物の公正な利用に留意しつつ、著作者の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与しようとする著作権法の目的に反することになる。また、印刷用書体は、文字の有する情報伝達機能を発揮する必要があるために、必然的にその形態には一定の制約を受けるものであるところ、これが一般的に著作物として保護されるものとすると、著作権の成立に審査及び登録を要せず、著作権の対外的な表示も要求しない我が国の著作権制度の下においては、わずかな差異を有する無数の印刷用書体について著作権が成立することとなり、権利関係が複雑となり、混乱を招くことが予想される。
—民集 第54巻7号2481頁
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ユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)とは、誰にでも読みやすいようなデザインのフォントのことである。例えば数字の「6」、「9」や「8」、「3」はフォントによっては非常に判別がしづらい。このような読みづらい文字を判別しやすいようにしたのがユニバーサルフォントである。
学参フォント
学参フォントとは、文部科学省の「学習指導要領」が定める、「代表的な字形」に準拠したフォントのことである。既存の書体(ゴシック体、明朝体など)をベースに制作されるフォントで、主に、文字の学習段階である小学生向けの教科書などに使用される。また最近では、年齢層に関係ないものでも使用される例がある(テレビや新聞の広告、注意書きなど)。また、教科書体においても、デザインを重視し、代表字形との差異があるものについては、学参フォントが使用されているものがある。
代表的な学参フォントとそのメーカー
- モリサワ…新ゴ、太ゴB101、中ゴシックBBB、新丸ゴ、じゅん、リュウミン、教科書ICA、ネオツデイ、アンチックAN(「新ゴ」と「新丸ゴ」と「教科書ICA」には、かなのみの製品がある。また、「ネオツデイ」と「アンチックAN」は、かなのみで、他書体の漢字と合わせて使う「かな書体」であるため、漢字はない。)
- モリサワは、学参フォント製品の代表的なメーカーである。
- フォントワークス…学参丸ゴ(この書体は、フォントワークスの会員制サービスである「LETS」で提供されている。)
- ダイナコムウェア…DF教科書体R(「学参フォント」との記載はないが、学参フォントとしての位置付けにいる。)
- イワタ…イワタ教科書体、イワタ明朝体、イワタゴシック体、イワタ丸ゴシック体、イワタ新ゴシック体(便宜上、「細」「中太」など、太さに関する表記は省略した。)
- モトヤ…モトヤKJ学参ゴシック、モトヤKJ学参明朝
- タイプバンク…TBUD学参丸ゴシック(この書体は前述の「UDフォント」でもある。)
代表的なフォントベンダー
和文
- イワタ
- 欣喜堂
写研(DTP用はリリースしていない)- 字游工房
- ダイナコムウェア
SCREENグラフィックソリューションズ- ニィス
- フォントワークス
- モトヤ
- モリサワ
- リコー
リムコーポレーション(組込み機器専門)
欧文
- アドビシステムズ
- アグファ・モノタイプ
- ITC
- ビットストリーム
- ライノタイプ・ライブラリ
- エミグレ
脚注
^ “表示用ビットマップフォントの工夫”. リコー (2004年11月17日). 2012年2月24日閲覧。
関連項目
- 活字
- 印刷
- DTP
- 書体
- レタリング
- 文字コード
- 仮想フォント
- フリーフォント
- フォントヒンティング
外部リンク
- フォント千夜一夜物語
- 『嘘じゃない、フォントの話』supported by モリサワ (CINRA.NET連載企画)
- アバウトフォント(フォントリンク、豆知識)
- フロップデザイン(フォントダウンロード)
- フォントな(豆知識・リンク集・フォントダウンロード)
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