書体




書体(しょたい)とは、一定の文字体系のもとにある文字について、それぞれの字体が一貫した特徴と独自の様式を備えた字形として、表現されているものをいう。基礎となる字体の特徴、およびその字形の様式から導かれる、形態の差異によって分類される。例えば、漢字という文字体系のもとにある書体として、篆書・隷書・楷書・行書・草書の五体に加え、印刷用の書体(明朝体やゴシック体など)がある。これらはいずれも共通の文字集合から生まれながら、時代・地域・目的などにより、その形態を変化させていったものである。


英語の typeface の訳語としても用いられる。この場合は、広義における活字とその意匠についての概念として扱われる。


近年ではフォントと同義に用いられることがあり、フォントの使用ライセンスの単位として、1書体、2書体と数えることもある。しかし本来、書体は文字に通底する概念であって、金属活字の字面や写真植字の文字盤、またデジタルフォントのアウトラインデータそれ自体を指すものではない。


以下は字形から見た書体の類別(組版の視点から見た分類)に従って叙述する。




目次






  • 1 東亜書体


  • 2 欧文書体


    • 2.1 欧文書体の各構成要素




  • 3 植字にあたって


  • 4 出典


  • 5 参考文献


  • 6 関連項目


  • 7 外部リンク





東亜書体


主な書体は以下のように分類される。




  • 中国大陸

    • (一般的に用いられる)活字書体

      • 宋朝体

      • 明朝体

      • ゴシック体




    • 毛筆書体

      • 篆書体


      • 隷書体

        • 秦隷

        • 草隷

        • 古隷

        • 八分



      • 章草体


      • 楷書体
        • 痩金体


      • 行書体

      • 草書体

      • 飛白体




    • 木版書体
      • 清朝体



    • 石碑体
      • 魏碑体


    • 亀甲獣骨文字

    • 金文体

    • 大篆

    • 花文字




  • 香港
    • デザイン書体

      • 綜藝体(中国語版) - 創挙蘭、DF綜藝体、AR新藝体、花風テクノなど。日本では、未来を舞台とするゲームに良く使われている[1]




  • 日本

    • 印章書体

      • 古印体

      • 角字

      • 八方篆書




    • 毛筆書体

      • 和様

      • 写経体

      • 連綿体


      • 江戸文字の多く

        • 勘亭流

        • 橘流

        • 籠文字

        • 髭文字

        • 相撲文字

        • 提灯文字






    • 活字書体

      • 築地体

      • 秀英体

      • 印刷局書体

      • 凸版書体

      • 石井書体

      • モトヤ書体

      • 平成書体

      • デザイン書体

        • POP体

        • 重ね丸ゴシック体

        • 浪漫系書体

        • フワンテル形


        • ラテン体 (通称「タイポス系」) - タイポス、OH、フォーク、キアロ、源暎ラテゴ、源暎ラテミンなど。

        • ナショナル体


        • デザイナーズフォントなど



      • 教科書体

      • 学参書体

      • 筆順書体

      • モダンゴシック体

      • 丸ゴシック体

      • 丸明朝体


      • 篆書ゴシック体[2]


      • アンティーク書体(ドイツ語版、英語版)(アンチック体)

      • 新聞書体 - 扁平書体を採用している。


        • 朝日字体 - 拡張新字体を採用した朝日新聞の独自字体。

        • 読売書体



      • コンデンス体 (長体、堅形[3]) - パッケージや看板などに使われている。




    • 公団文字 - 簡略化や強調によって視認性を上げた書体。

    • 鉄道関係


      • すみ丸角ゴシック体 - 国鉄などの鉄道で使われている書体。ゴシック体を手描き向けにしたもの。


      • 客車表記文字[4][5]


      • 貨車表記文字[4][5]

      • 修悦体




    • 斜体 - 鉄道方向幕の「快速」表記などに使われる。また、斜体書体としては、スーシャやアローエース、ゴーシャなどがある。

    • 字幕書体


    • ペン字体
      • へた文字


    • 彫刻書体
      • 機械彫刻用標準書体


    • ステンシル体

    • ゲバ字

    • コンピュータやゲーム向け書体


      • ドット文字 - 簡略化によって少ない解像度でも表示できるようにした書体。


      • ギャル文字 - 既存の書体の要素で構成された新たな書体。

      • レイアウト用擬似文字 - レイアウト製作用に、意味の全く持たないダミーテキスト(グリーキング)を作るための擬似文字書体。使用する書体に似た擬似文字書体が使われる。ギジモやニセミンなど。







欧文書体


欧文書体の設計は、画数や字数が少ないこと、またその造形的特徴、そしてその豊富な歴史から、整理・体系化が進んでいる。


主な書体は以下のように分類される。




  • セリフ(ストロークの端に飾りがついた書体)

    • オールド・フェイス

    • トランジショナル

    • モダン・フェイス




  • サンセリフ(セリフのない、均一な太さのストロークをもつ書体)

    • グロテスク

    • ネオ・グロテスク

    • ヒューマニスト

    • ジオメトリック




  • スクリプト(筆記体などの手書き文字に近い書体)

    • フォーマル

    • インフォーマル

    • カリグラフィック

    • イタリックスクリプト(英語版)


    • ロンドスクリプト(英語版) (フランス風)



  • ディスプレイ (POP) 書体


  • ブラックレター
    • フラクトゥール


  • コンピューター向け

    • ドットディスプレイ用書体

    • セグメントディスプレイ用書体



  • その他


    • OCR用書体 (OCR-A(英語版)OCR-B(英語版)、E-13B及びCMC-7、Data 70など)

    • タイプライター再現用書体 (ムラや掠れなどを再現したもの)





欧文書体の各構成要素



欧文書体のエレメント


欧文書体のデザインでは各部のデザインが決まれば、他の文字の同様の部分もおおむね定まってくる。


なお、「カウンター」は、閉じた部分だけではなく、CやVなどの字の内側も指す。また、図中の「ケルン」は日本独自の用語であり、英語ではball-shaped terminal、ドイツ語ではTropfenなどと呼ばれる。金属活字において、一般にボディから張り出した部分を指すkernという語をエレメントと混同した呼称であって、誤りとされる。



欧文書体の各種ライン


欧文書体はベースラインだけではなく、図のように幾つもの(見えない)線に沿ってデザインされている。



ベースライン

単にラインとも呼ばれる。欧文に限らず、様々な文字体系に存在する仮想的な線と言える。和欧混植の組版においては、一方が下がって見えるといった問題を解消するために、和欧間で異なるベースラインを設定することがある。

ミーンライン

ベースライン+エックスハイト(後述)の高さに引かれる水平線。ベースラインと並んで、視線を誘導するうえで重要な要素である。

キャップライン


大文字の上端の高さに引かれる水平線

アセンダーライン


小文字のf、h、l などの上端の高さ、すなわちアセンダの上端に引かれる水平線。

なお、Lの小文字「l」と大文字「I」の字形が書体によっては酷似するが、基本的に小文字lの上端はアセンダラインに達し、大文字Iの高さはキャップラインに収められる。本文書体では、目立ちすぎないように両者の差は小さい。見出し書体では、逆にキャップラインがアセンダラインより高く設計されることがある。これは可読性よりも誘目性を重視した設計と言える。

ディセンダーライン

ディセンダ(後述)の下端を揃える水平線。


エックスハイト(xハイト)


a、c、x などの小文字の高さ。ベースラインとミーンラインの間。文字通り、xの活字の高さ(ハイト)から来ている。

小文字の高さは「エックスハイト・エックスハイト+アセンダ・エックスハイト+ディセンダ」の3種類であり、エックスハイトを基本として全体のデザインが組み立てられる。書籍などの本文組版に使用される字種の大部分は小文字であり、読者の視線はエックスハイトを基準として流れていくため、これが揃っていない書体の可読性は損なわれる。

なお、実際の書体設計においては、cやoなどの丸く小さい文字が、錯視により過度に小さく見えるのを防ぐため、オーバーシュートといって上下のラインに若干重なるようデザインされる。これにより、人間の目にとってラインが揃っているように知覚されるのである。

キャップハイト

大文字の高さ。小文字と異なり、(一般的な欧文書体では)大文字はこの高さで揃う。

アセンダー


b、d、f、h、k、lについて、ミーンラインより上に出た部分。

ディセンダー


g、j、p、q、yについて、ベースラインより下に出た部分。

(特に横組みにおいて)活字を単独でなく並べた状態で俯瞰して、和文と特に異なる要素の一つが、このディセンダである。これに相当する要素が和文活字には存在しないためである。1バイト部分に欧文書体を組み合わせてあるフォントで、半角(すなわち1バイトの)括弧のベースラインが下がって見えることがあるのは、その括弧が ディセンダを計算に入れて デザインされているからと言える。


欧文書体では等幅活字を除いて、文字ごとに字幅(セット、字面の横の長さ)が異なるため、活字のサイズはボディサイズ(字面の縦の長さ)が基準となっている。ある活字のサイズを一辺とする正方形を、組版における相対的な長さの単位としたものがem(エム)である。例えば、12ポイントの活字での1 emは12ポイントであり、14級の活字での1 emは14級である。emという呼称は大文字Mに由来しており、古くはMの活字の字幅とボディサイズがほぼ一致し、正方形に近かったためとされる。文書全体の量を知るためには単語数を計量することが多いが、このemを用いることもある。


小文字のaからzまでを並べた長さ、すなわちabcdefghijklmnopqrstuvwxyzの長さを、a-zレングスという。



植字にあたって


和欧混植では、ポールやエッジセリフ、ステムなどのデザインが、和文の同様の要素とデザインとして合っているかを考慮しながら組み合わせを考える。もっとも、あらかじめ設定された従属書体を用いる場合も多い。



出典




  1. ^ 【電撃PS】海外のビッグタイトルを手掛けたローカライザーたちによるスペシャル鼎談、その全文を掲載!(前編) 電撃オンライン 2016年6月29日


  2. ^ 青山安吉 とは - コトバンク


  3. ^ 東京築地活版製造所 活版見本 P.81 野村宗十郎 1903年11月

  4. ^ ab最新客貨車関係法規便覧 P.41-52 鉄道教育研究会 1942年

  5. ^ ab鉄道法規類抄. 第1編 コマ95-109 鉄道院総裁官房 1912年



参考文献



  • 永原康史『日本語のデザイン』美術出版社、2002年 (ISBN 4568502438)

  • 組版工学研究会編『欧文書体百花事典』朗文堂、2003年 (ISBN 4947613556)

  • 小林章『欧文書体 その背景と使い方』美術出版社、2005年 (ISBN 4568502772)



関連項目



  • 書体の一覧

  • フォント

  • 活字

  • 字体

  • レタリング



外部リンク




  • 書体の基礎知識 和字書体編 タイプラボ


  • 宋朝体と明朝体のうつりかわり 欣喜堂









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