動力車操縦者
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動力車操縦者(どうりょくしゃそうじゅうしゃ)とは、日本の動力車操縦者運転免許に関する省令で定める一定の動力車を操縦する資格がある者を指すための欧米の行政用語である。
目次
1 概要
1.1 対象車両
1.2 対象範囲
2 沿革
3 運転免許の分類
4 試験
4.1 受験資格
4.2 訓練・教習
4.3 養成費用
4.4 試験の免除
4.5 試験科目
5 免許の効力
5.1 更新
5.2 取消・停止
5.3 自主返納
6 その他
7 脚注
8 関連項目
9 外部リンク
概要
一般的には「鉄道の運転士」や「列車の運転士」(機関士とも)[1]などと呼ばれている人を指すための、日本の行政上の用語である。
日本の機関車、電車や気動車、路面電車、トロリーバス(無軌条電車)の運転に必要な資格を持つ者のことである。
「動力車操縦者」は日本の法律で定められた鉄道のみを運転出来る資格であり、その他の類似する物まで運転出来る資格ではない。また、国内外の類似する資格との融通する仕組みもない(自動車の国際運転免許証に相当する制度はない)。
対象車両
この省令の第2条で、動力車とは、「鉄道及び軌道の蒸気機関車、電気機関車、電車、蓄電池機関車、蓄電池電車、内燃機関車、内燃動車、無軌条電車」とされている。
これ以外の動力を有する車両の操縦には資格制度はなく、鉄道事業者・軌道経営者の教育訓練と確認のみで操縦することになる。
対象範囲
基本的に、この免許を受けていなければ、動力車の操縦は出来ない。ただし、無軌条電車を除き、運転見習中の係員が運転免許を受けた者と同乗して直接の指導を受ける場合および本線に支障を来たす恐れがない側線において移動する場合は運転免許は不要である。
沿革
2006年(平成18年)9月までは、公共団体(1949年〈昭和24年〉5月31日以前は「国」〈=日本の中央政府などを指すための日本独特の行政用語〉も含まれる)の経営する鉄道で動力車を操縦するにあたっては、鉄道営業法の鉄道係員(鉄道掛員)の資格に関する規定そのものが適用除外とされていたため、この省令が適用されず、それらすべての鉄道係員は国及び公共団体が定める資格や講習が必要とされていた。ただし、軌道の場合は軌道法上その分類がなかったため、すべての軌道で動力車操縦者運転免許が必要であった。
2006年(平成18年)10月1日より運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律施行に伴い、鉄道営業法の除外規定が削除され、この省令が地方公共団体の経営する鉄道に適用されることとなり、動力車操縦者運転免許を含む鉄道係員の要件や資格について鉄道営業法で規制されることとなった。
運転免許の分類
- 甲種蒸気機関車運転免許
- 甲種電気車運転免許(電気機関車と電車)
- 甲種内燃車運転免許(内燃機関車と内燃動車)
- 乙種蒸気機関車運転免許
- 乙種電気車運転免許
- 乙種内燃車運転免許
新幹線電気車運転免許- 第一種磁気誘導式電気車運転免許
- 第二種磁気誘導式電気車運転免許
- 第一種磁気誘導式内燃車運転免許
- 第二種磁気誘導式内燃車運転免許
- 無軌条電車運転免許
- 「甲種」免許は、鉄道事業法で定める鉄道(一般のJR・私鉄路線などの専用敷地に敷かれた線路)及び軌道法で定める軌道のうち専用軌道等を走る動力車を操縦する場合に必要な資格で、「乙種」とは軌道法で定める軌道のうち専用軌道等以外(併用軌道)を走行する動力車(併用軌道を走行する路面電車や機関車)を操縦する場合に必要な資格である。[2]
- 「第一種」免許は特に限定項目はなし、「第二種」は専ら自動運転を行う区間で自動運転が不能になった場合に限り、最寄の駅又は車庫まで操縦する場合に限るものとしている。同種の限定項目は「甲種」「乙種」免許にも存在するが、「運転免許の条件」に記載しており免許上の区分けはない。
- 「甲種」免許は、鉄道事業法で定める鉄道(一般のJR・私鉄路線などの専用敷地に敷かれた線路)及び軌道法で定める軌道のうち専用軌道等を走る動力車を操縦する場合に必要な資格で、「乙種」とは軌道法で定める軌道のうち専用軌道等以外(併用軌道)を走行する動力車(併用軌道を走行する路面電車や機関車)を操縦する場合に必要な資格である。[2]
- なお「内燃車」とは内燃機関(エンジン)で動く気動車、「磁気誘導式」とは2005年日本国際博覧会(愛知万博)でのIMTSのように、他車および地上と通信を行いながら軌道上を自動操舵する方法、「無軌条電車」とはいわゆるトロリーバスのことである。
試験
受験資格
項目 | 基準 |
視機能 | 一 視力(矯正視力を含む。)が両眼で一・〇以上、かつ、一眼でそれぞれ〇・七以上であること。 二 正常な両眼視機能を有すること。 三 正常な視野を有すること。 四 色覚が正常であること。 |
聴力 | 各耳とも五メートル以上の距離でささやく言葉を明らかに聴取できること |
疾病および身体機能の障害の有無 | 心臓疾患、神経及び精神の疾患、眼疾患、運動機能の障害、言語機能の障害その他の動力車の操縦に支障を及ぼすと認められる疾病又は身体機能の障害がないこと。 |
中毒 | アルコール中毒、麻薬中毒その他動力車の操縦に支障を及ぼす中毒の症状がないこと。 |
動力車操縦者の資格と試験は、省令上は鉄道事業者・軌道事業者に所属していることを要件としておらず、15歳以上の者で、運転免許の取消を受けた者の場合は、取消日から起算して10年を経過していれば学歴、経験、国籍を問わず受験でき資格を得られる。
視力、色覚、心電図等のチェックをクリアする必要がある。裸眼または矯正視力で両目1.0以上。片目それぞれ0.7以上。
また、色覚は少しでも異常があると不合格となる。加えて、内田クレペリン精神検査も課される。
- これらの規定は、多くの鉄道事業者の採用試験を受ける際の受験資格にもなっている。このため、採用試験受験の段階で規定をクリアしていなくてはならない。
訓練・教習
国土交通省認可の養成施設で専門の教育訓練(学科講習及び技能講習を行う第一類と学科講習を行う第二類がある。無軌条電車は第一類のみ)を受け、試験に臨むのが通例である。JRや大手私鉄は自社の施設を持っているが、準大手私鉄や中小私鉄の場合は、養成施設がないことが多く、他の鉄道事業者に委託することになる。このため、養成施設を持たないモノレールや案内軌条式鉄道事業者の運転士が他社の鉄レール式の電車で試験のための訓練を受ける場合もある(免許の種類が同じであれば可である)。中には後述するように複数の鉄道事業者に委託する事例も存在する。
養成委託は関東方面を中心に、東日本では多数の鉄道事業者が受け入れている。一方で西日本においては、関西大手私鉄・準大手私鉄では他社からの委託は自社に関係している系列会社などの一部例外を除き受け入れていない。またその他の地域での鉄道事業者でも私鉄関連では養成委託を受け入れてない事例が多く、あっても西日本鉄道において熊本電気鉄道の、JR九州において沖縄都市モノレールの新人運転士の養成委託を実施している程度である(なお、JR九州を除くJRグループ各社が他社からの委託養成を実施しているかについては不明)。このため、島根県の一畑電車では運転士の養成委託を他社に委託しているが、近隣の中国地方の各私鉄はおろか、同社のエリアから比較的近隣にある関西大手私鉄が全社他事業者の養成を行っていないため、養成費用の他、宿泊費用などを負担した上で、遠く離れている関東の京王電鉄に委託している事例[3]や、沖縄都市モノレールではやはり同様の理由で遠く離れた複数の関東大手私鉄および比較的近隣のJR九州に要請を委託し、JR九州以外では京浜急行電鉄、西武鉄道[4]で学科および技能講習の委託を行った他、モノレールの特性に関する知識や技術の教習のため、千葉都市モノレールでも研修を行った実績がある[5]。
養成費用
- 個人的に取得する免許ではないので、免許取得費用は全て鉄道事業者が負担している。ただし、免許証申請の際の諸費用については社員に負担させている会社もある。事業者は教習費用を負担した上で、教習中の社員に対して給与等も支給する。
- 新規開業の鉄道会社の場合、他社の運転士を採用する場合がある。異なる会社であっても免許の種類が同じであれば、その免許は有効であるが、自動車の運転免許証と違い、免許証には「所属事業者名」が記載されており、基本的には記載された事業者が管理している路線以外での乗務はできないので、運転法規などの違いなどの教習・試験を終えた後関係書類を添付して免許証を運輸局に提出し、記載事項の変更(この場合は「所属事業者名」)を行わなければならない。
- 2010年にいすみ鉄道が訓練費用約700万円を自己負担で免許取得することを条件に、運転士を募集した。必要な費用はこの時に初めて明らかになった。
試験の免除
詳細は動力車を参照。
試験科目
- 身体検査
- 適性検査
- 筆記試験
- 甲種蒸気機関車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 蒸気機関車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 乙種蒸気機関車
- 軌道運転規則
- 運転の安全の確保に関する省令
道路交通法及び道路交通法施行令- 蒸気機関車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 甲種電気車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 乙種電気車
- 軌道運転規則
- 運転の安全の確保に関する省令
- 道路交通法及び道路交通法施行令
- 電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 甲種内燃車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 内燃車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 乙種内燃車
- 軌道運転規則
- 運転の安全の確保に関する省令
- 道路交通法及び道路交通法施行令
- 内燃車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 新幹線電気車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 新幹線鉄道の電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 第一種磁気誘導式電気車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 磁気誘導式鉄道の電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 第二種磁気誘導式電気車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 磁気誘導式鉄道の電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 第一種磁気誘導式内燃車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 磁気誘導式鉄道の内燃車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 第二種磁気誘導式内燃車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 磁気誘導式鉄道の内燃車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 無軌条電車
- 無軌条電車運転規則
- 運転の安全の確保に関する省令
- 道路交通法及び道路交通法施行令
- 無軌条電車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 甲種蒸気機関車
- 実技試験
- 速度観測
- 距離目測
制動機の操作- 制動機以外の機器の取扱
- 定時運転
- 非常の場合の措置
免許の効力
更新
この免許には更新・書換制度がないため、事実上終身免許である。ただし、鉄道事業者や軌道経営者では運転士に対して定期的に健康診断を行っており、乗務に耐えられないと判断されれば、社内的に運転業務から駅務等、他職種へ転換する場合が殆どである。
取消・停止
地方運輸局長は次の場合に運転免許の取消又は停止をすることができる。
- 動力車の操縦に関する法律若しくはこれに基づく命令又は運転免許に付した条件に違反したとき。
- 省令別表二の上欄に掲げる項目(身体検査の基準)についてそれぞれ同表の下欄に掲げる基準に適合しないこととなつたとき、又はそのおそれが生じたとき。
自主返納
この省令には、免許の自主返納制度が存在する。
その他
- 「限定免許」
本線運転ではない工場や電車区構内の入換要員として、駅区限定免許を取得させており、限定免許とも呼ばれる。この限定免許は通常の免許と違い2か月程度の社内教育で取得できるが、電車区や工場内での入換運転や入出庫運転等、本線以外の決められた範囲でしか運転できない。- 蒸気機関車運転免許
- 蒸気機関車の機関士になるためには、動力車操縦者免許のほかにボイラー技士の資格が必要となる。また、蒸気機関車を操縦する際には、機関士・機関助士の両方が二級以上または機関士のみが一級以上のボイラー技士資格を持つ必要がある。
- 乙種運転免許
- 乙種のうち蒸気機関車運転免許は、2018年現在に至るまで、蒸気機関車に引かれる路面“電車”が日本には存在したことがないため、書類上のみの存在と化している。内燃車運転免許も、札幌市交通局で路面ディーゼルカーが1964年から運行されていただけで、1971年の電化・廃止以後は書類上だけの存在だった。2001年に伊予鉄道が坊っちゃん列車の牽引機関車を「蒸気機関車風のディーゼル機関車」としたため、路面を走る内燃車両が約30年ぶりに復活することになり、乙種内燃車の資格が復活した。先述の通り坊っちゃん列車はディーゼル機関車として復活したものの、復活の際には蒸気機関車として復活させる計画もあったため、乙種蒸気機関車運転免許が実在する可能性もあった。
- 新幹線電気車運転免許
- 新幹線運転士であっても在来線の電車は運転出来ない。これは新幹線と甲種がそれぞれ別の存在であるためで、在来線列車の運転に必要なのは甲種電気車免許となる(新幹線が上位として甲種を包含するわけではない。特殊自動車運転免許しかない人は普通車・大型車を運転出来ないのと同じ)。なお、博多南線と上越線支線(越後湯沢駅 - ガーラ湯沢駅間)は、旅客営業上在来線であるが、動力車操縦者の関係法規では新幹線の扱いである。
- 電気機関車・ディーゼル機関車の免許
- 電車・気動車により甲種電気車・甲種内燃車の免許を取得した者が電気機関車・ディーゼル機関車を操縦する際にも、運転士と機関士では求められる技能が違うので、免許の種類は同じでも別に講習と試験を受ける必要がある。
- 第二種磁気誘導式電気車・第二種磁気誘導式内燃車・無軌条電車運転免許
- 従来は、第二種磁気誘導式電気車運転免許・第二種磁気誘導式内燃車運転免許・無軌条電車運転免許について、大型自動車第二種運転免許を所持していれば試験は全項目免除となり取得できたが、2009年11月、省令改正でこの特権は廃止された。
- 鉄道事業者によっては動力車操縦者の運転資格を所持しない外部者の参加を募り、鉄道車両を運転させるイベントを開催することがある。参加費を徴収し、運転士の指導・監視のもとで車庫・工場内などの非営業線内で実施することが多い。
脚注
^ ワンマン運転実施路線である路線の中には「運転士」とは称さずに、例えばOsaka Metro長堀鶴見緑地線やOsaka Metro今里筋線では「操縦員」と、東京メトロ南北線や東京メトロ副都心線では「乗務掛」(川島令三「全国鉄道事情大研究 東京都心部編」2000年 草思社)と称している。一方で同じワンマン運転実施路線であっても、都営地下鉄三田線や都営地下鉄大江戸線では「運転士」と称している。
^ 動力車操縦者運転免許に関する省令別表一
^ 一畑電車運転士の京王電鉄への養成委託の様子は、映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」でも公開され、また同映画のDVDにも収録されている。
^ 琉球新報 ゆいレール運転士に免許交付/全国初、女性5人も
^ 群星「ゆいレール」いろいろ再発見! (PDF)
関連項目
- 動力車操縦者養成所
- 鉄道営業法
- 鉄道事業法
- 軌道法
- 日本鉄道運転協会
- アルコール検査
- 運転の安全の確保に関する省令
- 運転免許
外部リンク
- 動力車操縦者運転免許に関する省令
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