日本の近世文学史








日本の近世文学史(にほんのきんせぶんがくし)では、江戸時代(近世)の日本文学の歴史を述べる。




目次






  • 1 概略


    • 1.1 前期


    • 1.2 後期




  • 2 文学の周辺


  • 3 近世文学の主な作品一覧


  • 4 関連項目





概略


日本の近世文学は江戸中期の享保年間(1716年 - 1735年)を境目に大きく前後半に区分される。江戸前期はそれまでの文化的中心地であった上方を中心とした文芸が栄え、江戸中後期には都市の発達に伴い江戸を中心に町人文化・出版文化が成立し、江戸を中心とする文芸が栄えた。



前期


お伽草子の流れを汲み仮名草子や井原西鶴らによる浮世草子がうまれた。16世紀に入って急速に成長した浄瑠璃の世界では、人形を加えた人形浄瑠璃用に近松門左衛門が戯曲を書き人気を博した。松永貞徳らにより栄えた俳諧は、後に松尾芭蕉が現れ表現として大成させた。



後期


後期には俳諧の与謝蕪村、小林一茶らが活躍した。上田秋成の『雨月物語』や曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』といった読本が書かれ、庶民向けの娯楽として赤本・青本などの草双紙が出版され、広く読まれた。人形浄瑠璃に押されていた歌舞伎は、鶴屋南北や河竹黙阿弥等の戯曲を得て、人気の回復に成功した。



文学の周辺


形骸化した歌学を批判する形で、儒教の一派の古学の影響を受けて国学が現れた。賀茂真淵、本居宣長らが活躍した。滑稽話の元祖として安楽庵策伝の『醒睡笑』が著され、さらに江戸と上方で現在の落語の原形となる話芸が流行する。三味線音楽など江戸期に特徴的な音曲が流行した。葛飾北斎らにより浮世絵が描かれ、町人に愛玩された。浮世絵は遠くフランスの印象派にも大きな影響を与えた。



近世文学の主な作品一覧



  • 1623年頃『竹斎』富山道治/ 仮名草子

  • 1623年『きのふはけふの物語』未詳/ 噺本

  • 1623年『醒睡笑』安楽庵策伝/ 仮名草子・噺本

  • 1633年『犬子集』松江重頼/ 俳諧

  • 1639年頃『仁勢物語』未詳/ 仮名草子

  • 1643年『新増犬筑波集』松永貞徳/ 俳諧

  • 1649年『挙白集』木下長嘯子/ 和歌・和文

  • 1660年『二人比丘尼』鈴木正三/ 仮名草子

  • 1661年『むさしあぶみ』浅井了意 仮名草子

  • 1662年『江戸名所記』浅井了意/ 地誌

  • 1662年『源氏物語湖月抄』北村季吟/ 注釈

  • 1666年『御伽婢子』浅井了意/ 仮名草子

  • 1671年『覆醤集』石川丈山/ 漢詩

  • 1682年『好色一代男』井原西鶴/ 浮世草子

  • 1685年『出世景清』近松門左衛門/ 浄瑠璃

  • 1686年『好色五人女』井原西鶴/ 浮世草子

  • 1686年『好色一代女』井原西鶴/ 浮世草子

  • 1687年『男色大鑑』井原西鶴 /浮世草子

  • 1687年『武道伝来記』井原西鶴/ 浮世草子

  • 1688年『日本永代蔵』井原西鶴 /浮世草子

  • 1690年『万葉代匠記』契沖/ 注釈

  • 1690年『花摘集』宝井其角/ 俳諧

  • 1691年『猿蓑』/ 向井去来・野沢凡兆

  • 1692年『狗張子』浅井了意/ 仮名草子

  • 1692年『世間胸算用』井原西鶴/ 浮世草子

  • 1693年『西鶴置土産』井原西鶴 /浮世草子

  • 1694年『すみだはら』野坡・利牛ら/ 俳諧

  • 1696年『源注拾遺』契沖/ 注釈

  • 1698年『梨本集』戸田茂睡/ 歌学

  • 1701年『けいせい色三味線』江島基磧/ 浮世草子

  • 1702年『奥の細道』松尾芭蕉 /俳諧紀行

  • 1703年『曾根崎心中』近松門左衛門/ 浄瑠璃

  • 1703年『紫家七論』安藤為章/ 注釈

  • 1704年『去来抄』向井去来/ 俳諧

  • 1706年『本朝文選』五老井許六/ 俳諧

  • 1709年『笈の小文』松尾芭蕉/ 俳諧

  • 1711年?『冥途の飛脚』近松門左衛門/ 浄瑠璃

  • 1715年『国性爺合戦』近松門左衛門/ 浄瑠璃

  • 1716年『葉隠』山本常朝/ 修養書

  • 1718年『独ごと』鬼貫/ 俳諧

  • 1720年『心中天の網島』近松門左衛門/ 浄瑠璃

  • 1721年『女殺油地獄』近松門左衛門/ 浄瑠璃

  • 1724年『ひとりね』柳沢淇園/ 随筆

  • 1725年以前『折たく柴の記』新井白石/ 伝記

  • 1727年『南郭先生文集』服部南郭/ 漢詩

  • 1736年『徂徠集』荻生徂徠/ 漢詩

  • 1746年『菅原伝授手習鑑』竹田出雲/ 浄瑠璃

  • 1749年『英草子』都賀庭鐘/ 読本

  • 1758年『源氏物語新釈』賀茂真淵/ 注釈

  • 1763年『源氏物語年紀考』『紫文要領』本居宣長/ 国学

  • 1763年『詩学逢原』祇園南海/ 漢詩

  • 1765年『誹風柳多留』柄井川柳/ 川柳

  • 1768年『万葉考』賀茂真淵/ 国学

  • 1768年『西山物語』建部綾足/ 読本

  • 1770年『遊子方言』田舎老人多田爺 /洒落本

  • 1770年『神霊矢口渡』福内鬼外 /浄瑠璃

  • 1770年『常山紀談』湯浅常山/ 軍記物

  • 1771年『妹背山婦女庭訓』近松半二 /浄瑠璃

  • 1771年『日本詩史』江村北海 /漢詩史

  • 1775年『金々先生栄花夢』恋川春町/ 黄表紙

  • 1776年『雨月物語』上田秋成/ 読本

  • 1768年『本朝水滸伝』建部綾足/ 読本

  • 1783年『万載狂歌集』四方赤良・朱楽菅江共編/ 狂歌

  • 1785年『江戸生艶気樺焼』山東京伝/ 黄表紙

  • 1785年『鶉衣』横井也有/ 俳文

  • 1789年『玉くしげ』本居宣長/ 国学

  • 1790年『古事記伝』本居宣長/ 国学

  • 1790年『近世畸人伝』伴蒿蹊/ 伝記

  • 1792年『道の幸』屋代弘賢/ 随筆

  • 1793年『群書類従』塙保己一/ 国学

  • 1795年『玉勝間』本居宣長/ 国学

  • 1796年『万葉集略解』加藤千蔭/ 歌学

  • 1797年『新花摘』与謝蕪村/ 俳諧

  • 1801年『父の終焉日記』小林一茶/ 俳諧

  • 1802年『東海道中膝栗毛』十返舎一九/ 滑稽本

  • 1803年『花月草紙』松平定信/ 随筆

  • 1807年『椿説弓張月』曲亭馬琴/ 読本

  • 1809年『浮世風呂』式亭三馬/ 滑稽本

  • 1810年『詩聖堂詩集初編』大窪詩仏/ 漢詩

  • 1811年『古道大意』平田篤胤/ 国学

  • 1811年『ふでのまにまに』菅江真澄/ 随筆

  • 1812年『すみれ草』北村久備/ 注釈

  • 1812年『黄葉夕陽村舎詩』菅茶山/ 漢詩

  • 1813年『浮世床』式亭三馬/ 滑稽本

  • 1814年『南総里見八犬伝』曲亭馬琴/ 読本

  • 1814年『耳嚢』根岸鎮衛/ 随筆

  • 1816年『宇下人言』松平定信/ 随筆

  • 1816年『真葛がはら』只野真葛/ 随筆ほか

  • 1820年『おらが春』小林一茶/ 俳諧

  • 1825年『東海道四谷怪談』鶴屋南北/ 歌舞伎狂言

  • 1825年『傾城水滸伝』曲亭馬琴/ 合巻

  • 1826年『日本外史』頼山陽/ 史書

  • 1829年『偐紫田舎源氏』柳亭種彦/ 合巻

  • 1829年『近世説美少年録』曲亭馬琴/ 読本

  • 1830年『桂園一枝』香川景樹/ 和歌

  • 1834年『江戸名所図会』斎藤月岑/ 地誌

  • 1832年『春色梅児誉美』為永春水/ 人情本

  • 1835年『蓮の露』良寛・貞心尼/ 和歌




『北越雪譜』二編 巻一(鈴木牧之著、天保12年(1841年)刊)



  • 1837年『北越雪譜』鈴木牧之 /随筆

  • 1847年『比古婆衣』伴信友 /国学

  • 1854年『源氏物語評釈』萩原広道/ 注釈

  • 1859年『柳橋新誌』成島柳北/ 随筆

  • 1860年『三人吉三廓初買』河竹黙阿弥 /歌舞伎狂言

  • 1863年『弁天娘女男白浪』河竹黙阿弥 /歌舞伎狂言

  • 1863年『越後獅子』井上井月 /俳諧

  • 1878年『橘曙覧遺稿志濃夫廼舎歌集』橘曙覧/ 和歌

  • 1927年『砂払』山中共古/ 江戸文学研究



関連項目



  • 日本の上代文学史

  • 日本の中古文学史

  • 日本の中世文学史

  • 日本の近現代文学史


  • 青空文庫 - 日本語の文章で、著作権の切れたもの、著者がフリーにしたものが置かれている。








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