フナ
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フナ(鮒、鯽(魚+(喞-口)、鮅[1])は、コイ目コイ科コイ亜科フナ属(Carassius)に分類される魚の総称。ユーラシア大陸において広く分布する魚の一種。
目次
1 概要
2 分類
3 文化
3.1 釣りなど
3.2 食文化
3.3 漁業
4 脚注
5 関連項目
6 外部リンク
概要
日本を含むユーラシア大陸に広く分布し、河川、湖沼、ため池、用水路など、水の流れのゆるい淡水域などにも生息し、水質環境の悪化にも強い。
他のコイ目の魚同様背びれは1つだけで、ひれの棘条は柔らかくしなやかである。背中側の体色は光沢のある黒色か褐色で、腹側は白い。全体的な外見はコイに似るが、口元にひげがない。また、コイに比べて頭が大きく、体高も高い。体長は10-30cm程度だが、ゲンゴロウブナやヨーロッパブナは40cmを超えるものもいる。
ゲンゴロウブナとその品種改良種であるヘラブナは植物プランクトンを食べるが、他のフナはほとんどが雑食性である。水草、貝類、昆虫類、甲殻類など、さまざまなものを食べる。
産卵期は春で、浅瀬の水辺に集まって水草などに直径1.5mm程度の付着性卵を産みつける。
分類
フナは生物学的な分類が難しいとされている魚のひとつである。姿・形・色だけで種を判別することはできないため、初心者が種類を見分けることは困難である。例えば、日本社会においては、「フナ」と呼ばれる魚は慣例的に細かい種類に呼び分けられている。しかし、その「種類」がそれぞれ生物学的に別種か、亜種か、同じ種なのかはいまだに確定されていない。なお、俗に言う「マブナ」はゲンゴロウブナと他のフナ類を区別するための総称である。
ギンブナ Carassius langsdorfii または Carassius buergeri langsdorfii
- 全長30cmほど。日本全域に分布する。ほぼ全てがメスであり、無性生殖の一種である雌性発生でクローン増殖することが知られている。
キンブナ Carassius buergeri subsp. 2[2]
- 日本の関東地方・東北地方に分布する。全長は15cmほどで、日本のフナの中では最も小型。名のとおり体が黄色っぽく、ギンブナよりも体高が低い。
準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)(2007年)
オオキンブナ Carassius buergeri buergeri
- (†注: FishBase では okin-buna と naga-buna をこの学名魚の一般名として併記する[3])
- 日本西部に分布する。全長40cmほど。名のとおりキンブナに似るが大型になる。 最近は放流されたのか関東方面でも見られるようになった。
ゲンゴロウブナ Carassius cuvieri[2]
琵琶湖固有種。全長40cmほど。体高が高くて円盤型の体型をしている。植物プランクトンを食べるため、鰓耙が長く発達し、数も多い。釣りの対象として人気があり、今や日本各地に放流されている。ヘラブナとはゲンゴロウブナを品種改良したもの。
絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)(2007年)
ニゴロブナ Carassius buergeri grandoculis[2]
- 琵琶湖固有種。全長30cmほど。頭が大きく、下あごが角ばっているのが特徴である。滋賀県の郷土料理である鮒寿司にも使われる。
絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)(2007年)
ナガブナ Carassius buergeri subsp. 1[2]
諏訪湖周辺に分布。全長25cmほど。名のとおり体高が低くて幅が厚く、円筒形に近い体型をしている。また、体に対して頭と目が大きいのも特徴である。体色がやや赤っぽいことから、アカブナと呼ばれることもある。
情報不足(DD)(環境省レッドリスト)(2007年)
ヨーロッパブナ Carassius carassius
- ヨーロッパから中国北部まで分布する(日本には分布しない)。全長60cm、体重3kgに達する大型種。ヨーロッパではCrucian carp(クラシアンカープ)と呼ばれる。また、英語ではこのクラシアンカープが属名魚(type species)となっており、例えばニゴロブナのことを "crucian carp" や "nigoro crucian carp"と表記したりするので混乱する。
ギベリオブナ Carassius gibelio
- 遺伝子研究の結果、キンギョの原種とされる、アジア系のフナ。英名 "Prussian carp"
ギンブナ
キンブナ
ゲンゴロウブナ
ニゴロブナ
ヨーロッパブナ(クラシアンカープ Crucian carp)
ギベリオブナ
文化
フナは、人間に触れやすい環境に生息していることから、身近な魚として人々に親しまれてきた。例えば、日本社会では多くの人が知っている文部省唱歌『ふるさと』(高野辰之作詞・岡野貞一作曲)には、「小鮒(こぶな)釣りしかの川」という一節があり、郷里のイメージのひとつとして歌われている。また、日本の古典文学である『万葉集』や『今昔物語集』にも「鮒」はしばしば登場している。なお、こうした古典文学におけるフナの別名としては波臣、フモジ、山ぶきなどがある。
また、色素変異を起こして体色が赤色となったものをヒブナとよぶ。キンギョはヒブナをさらに品種改良したものである。
釣りなど
釣りでの餌はミミズや練り餌が用いられる。フナは水の流れのゆるいところにいるので、ウキを利用した釣り方が一般的である。釣り上げる際には、うまくウキの動きに合わせて釣り竿を上げる必要があるが、それほど高級な釣具を使う必要もなく、さまざまな淡水域に生息している魚であるため、年齢を問わず多くの人々にフナは魚とりや釣りの対象となっている。そのため、「釣りは鮒に始まり鮒に終わる」と言われるほど基礎的な釣りである。
食文化
フナはアジア地域においてしばしば食用とされる。
日本においては滋賀県の「鮒寿司」や愛知県・岐阜県・三重県の「鮒味噌」、岡山県の「鮒飯」、佐賀県(鹿島市)の「鮒の昆布巻き(ふなんこぐい)」などの伝統的なフナの料理が知られている。かつては身近で重要な蛋白源としてよく食べられていたが、近年では、淡水魚独特の泥臭さが敬遠されたり、フナそのものが水環境の悪化によって減少したりしているため、一般的には食べる機会は減っている。しかし、フナの食利用が途絶えたわけではなく、例えば滋賀県の鮒寿司は現在でも著名な特産品の一つである。佐賀県鹿島浜町では毎年1月19日の早朝から「ふな市」が行われ、鮒が販売されている。早朝に買い求めた客はそれぞれが家庭にて「ふなんこぐい」として調理するのに半日以上を要するため、翌日の二十日正月に間に合わせるため、市は早朝に開催される。ふな市ではヘラブナよりマブナが美味とされ、より高額で売られている。
その他、日本での一般的な調理方法として、塩焼きや煮付け、天ぷら、甘露煮、刺身、洗いなどがあるほか、小さいフナを複数、一本の竹串で刺し連ね、タレをつけて焼くすずめ焼きなどもある。また、小鮒を素焼き(白焼き)にしてから煮るとよいダシが出るという。香川県では、酢漬けにしたフナの切り身を野菜と酢味噌で和えた「てっぱい」という料理もある。長野県佐久地域の「鮒寿司」は、フナの甘露煮を酢飯の上に載せたもので、滋賀の鮒寿司とは異なるものである[4]。
しかし、生食や加熱不完全な調理状態の物を摂食すると、肝吸虫[5]や有棘顎口虫 (Gnathostoma spinigerum) による寄生虫病を発症する可能性がある[6]。
漁業
フナは内水面漁業の主要な漁獲魚種である。日本における2004年の総漁獲量は2258tで、養殖を除くとサケ・マス、アユに次ぐ漁獲量だった。都道府県別に見ると埼玉県(290t)が最も多く、続いて岡山県(266t)、茨城県(251t)、千葉県(184t)、熊本県(180t)、青森県(140t)、岐阜県(118t)、新潟県(117t)、島根県(113t)、滋賀県(112t)の順に多い(水産庁平成16年漁業・養殖業生産統計(概数)による)。天然魚の捕獲だけで無く養殖用種苗魚生産[7]と農業用溜め池や水田での養殖も行われている[8]。
脚注
^ 「鮅」は「マス」と読むが、「類聚名義抄(8コマ目)」によれば「フナ」とある
- ^ abcd環境省レッドリスト2018
^ Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2006). langsdorfii"Carassius auratus langsdorfii" in FishBase. April 2006 version.; Main reference: Masuda, H., K. Amaoka, C. Araga, T. Uyeno and T. Yoshino. 1984. (Ref. 559)
^ 佐久市農村生活マイスターの会『母から子へ 孫へ伝える佐久の味』佐久市農村生活マイスターの会、2013年、21ページ。
^ こんなに怖い寄生虫 厚生労働省検疫所
^ 口虫(1/11) ※平成 22 年度食品安全確保総合調査 食品安全委員会 (PDF)
^ 水田を活用したフナおよびドジョウの増殖手法開発 長野県] (PDF)
^ 井口恵一朗、鶴田哲也ほか、長野県佐久地方における稲田フナ養殖の現状 水産技術 第4巻第1号 (PDF)
関連項目
- 魚の一覧
- キンギョ
- コイ
- 釣り堀
- 鮒寿司
- 鮒の子まぶし
- 黄鮒
外部リンク
フナ属魚類 Carassius の系統と分類 (PDF) 野口 智明 三重大学大学院盤物資源学研究科
フナ 香川県庁
田んぼのフナの話 長野県水産試験場