銀河鉄道の夜




銀河鉄道の夜』(ぎんがてつどうのよる)は、宮沢賢治の童話作品[1]。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語で、宮沢賢治童話の代表作のひとつとされている。


作者逝去のため未定稿のまま遺されたこと、多くの造語が使われていることなどもあって、研究家の間でも様々な解釈が行われている。この作品から生まれた派生作品は数多く、これまで数度にわたり映画化やアニメーション化、演劇化された他、プラネタリウム番組が作られている。




目次






  • 1 成立


  • 2 あらすじ


  • 3 解説


  • 4 登場人物


  • 5 文庫本の比較


  • 6 用語


  • 7 設定


    • 7.1 舞台


    • 7.2 日付




  • 8 宗教観


  • 9 翻案作品群


    • 9.1 漫画


    • 9.2 映画


      • 9.2.1 銀河鉄道の夜


      • 9.2.2 銀河鉄道の夜 I carry a ticket of eternity




    • 9.3 テレビドラマ


      • 9.3.1 80年後のKENJI〜宮沢賢治 映像童話集〜「銀河鉄道の夜」




    • 9.4 ミュージカル


      • 9.4.1 銀河鉄道の夜


      • 9.4.2 銀河鉄道の夜


      • 9.4.3 バウ音楽詩劇『イーハトーヴ 夢』宮澤賢治「銀河鉄道の夜」


      • 9.4.4 星めぐりのうた




    • 9.5 演劇


      • 9.5.1 銀河鉄道の夜


      • 9.5.2 イーハトーボの音楽劇「銀河鉄道の夜」


      • 9.5.3 光速銀河鉄道の夜(賢治島探検記内)


      • 9.5.4 想稿 銀河鉄道の夜


      • 9.5.5 人形演劇 銀河鉄道の夜


      • 9.5.6 群読音楽劇「銀河鉄道の夜」




    • 9.6 プラネタリウム


      • 9.6.1 銀河鉄道の夜 -Fantasy Railroad in the Stars-




    • 9.7 ドラマCD


      • 9.7.1 1996年


      • 9.7.2 2008年




    • 9.8 その他


    • 9.9 電子書籍


      • 9.9.1 音楽絵本・銀河鉄道の夜






  • 10 銀河鉄道の夜から影響を受けたもの


    • 10.1 作品


    • 10.2 命名




  • 11 関連項目


  • 12 出典・脚注


  • 13 参考文献


  • 14 外部リンク





成立


1924年ごろ初稿が執筆され、晩年の1931年頃まで推敲がくりかえされて、1933年の賢治の死後、草稿の形で遺された。初出は1934年刊行の文圃堂版全集(高村光太郎ら編。全国書誌番号:47022638。)である。未定稿のため本文の校訂が研究者を悩ませてきたが、筑摩書房版全集(『校本宮澤賢治全集』、1974年)の編集過程で綿密な検討が行われ、第1次稿から4次稿まで3回にわたって大きな改稿が行われたことが明らかになった[2]


第1-3次稿(初期形)と第4次稿(最終形)の間には大きな差異がある。「銀河鉄道の夜」という題名や、冒頭の三章分、そして結末のカムパネルラが川で行方不明になる挿話などは4次稿で追加されたものである。また、第3次稿までは銀河鉄道の旅はブルカニロ博士(後述)の実験により主人公が見た夢だったとされていたが、最終形に博士は登場しない。


文圃堂版全集以来、長く読まれてきた刊本では、ブルカニロ博士の存在が大きな位置を占めていたが、校本全集編集時の調査により、博士が登場する結末の場面は第4次稿で差替えられていたことが判明した。この結果、校本全集では博士の登場しない展開が最終形となり、博士の登場していた第3次稿の終形については「初期形」として分離されることとなった。さらに、1996年の筑摩書房版全集(『【新】校本宮澤賢治全集』)では、第1次稿の初形・第2次稿の初形についてもそれぞれ「初期形一」「初期形二」として収録され、従来の初期形は「初期形三」として収録された。以下のあらすじは最終形の第4次稿によるものである。



あらすじ





天の川(7月22日)



(草稿で実際に章番号が振られているのは「一、」と「三、」のみで、他は全集での校訂時に補われたものである)

一、午后の授業


銀河系の仕組みについての授業。天の川について先生に質問されたジョバンニは、答えを知りつつ気もそぞろに答えることができない。次に指されたカムパネルラも、答えない。

二、活版所

放課後、ジョバンニは活版所で活字拾いのアルバイトをする。仕事を終えたジョバンニは、パンと角砂糖を買って家へ急ぐ。

三、家、

家に帰ると牛乳が未だ配達されていない。

病気の母親と、北方へ漁に出たきり帰ってこない父のことやカムパネルラのことなどを話す。ジョバンニは、銀河のお祭り(烏瓜のあかりを川へ流す)を見に行く、と言って家を出る。

四、ケンタウル祭の夜

牛乳屋(牧場)に行くが、出てきた老婆は要領を得ず、牛乳をもらえない。途中で、同級生のザネリたちに会い、からかわれる。一緒にいたカムパネルラは気の毒そうに黙って少し笑っている。銀河の祭りに行くザネリたちと反対に、ジョバンニは一人町外れの丘へ向かう。

五、天気輪の柱


天気輪の柱の丘でジョバンニは一人寂しく孤独を噛み締め、星空へ思いを馳せる。

六、銀河ステーション

突然、耳に「銀河ステーション」というアナウンスが響き、目の前が強い光に包まれ、気がつくと銀河鉄道に乗っている。見るとカムパネルラも乗っていた。

七、北十字とプリオシン海岸


北十字の前を通った後、白鳥の停車場で20分停車する。二人はその間にプリオシン海岸へ行き、クルミの化石を拾う。大学士が牛の祖先の化石を発掘している現場を見る。

八、鳥を捕る人

気のいい鳥捕りが乗車してくる。彼は、鳥を捕まえて売る商売をしている。ジョバンニとカムパネルラは鳥捕りに雁を分けてもらい食べるが、お菓子としか思えない。突然鳥捕りが車内から消え、川原でさぎを捕り、また車内に戻ってくる。

九、ジョバンニの切符

(以下、全体のおよそ半分にわたり章立てはない)


アルビレオの観測所の近くで検札があり、ジョバンニは自分の切符だけが天上でもどこまででも行ける特別の切符であると知る。


鷲の停車場のあたりで、鳥捕りが消え、青年と姉弟が現れる。彼らは、乗っていた客船が氷山に衝突して沈み、気がつくとここへ来ていたのだという。かおる子(姉の少女)とは長い会話を交わす。


蠍(さそり)の火を眺めながら、かおる子は「やけて死んださそりの火」のエピソードを話しはじめ、ジョバンニたちは、黙ってそれを聞く。その後列車はケンタウルの村を通過する。少女たちと別れ際に、「たった一人の本当の神様について」宗教的な議論が交わされる。

天上と言われるサウザンクロス(南十字)で、大半の乗客たちは降りてゆき、ジョバンニとカムパネルラが残される。二人は「ほんとうのみんなのさいわい」のために共に歩もうと誓いを交わす。その直後、車窓に現れた石炭袋を見たふたりは、非常な恐怖に襲われる。ジョバンニはカムパネルラをはげますが、カムパネルラは気の乗らない返事をしたのち、「あすこにいるのぼくのお母さんだよ」といい残し、いつの間にかいなくなってしまう。


一人丘の上で目覚めたジョバンニは町へ向かう。今度は牧場で牛乳をもらい、川の方へ向かうと「こどもが水へ落ちた」と知る。同級生から、カムパネルラは川に落ちたザネリを救った後、溺れて行方不明になったと聞かされる。カムパネルラの父(博士)は既にあきらめていた。博士は、ジョバンニの父から手紙が来た、もう着く頃だとジョバンニに告げる。ジョバンニは胸がいっぱいになって、牛乳と父の知らせを持って母の元に帰る。


解説










けれどもほんたうのさいはひは一体何だらう。



漁から戻らない父のことでクラスメイトにからかわれ、朝夕の仕事のせいで遊びにも勉強にも身が入らない少年ジョバンニは、周りから疎外され、あたかも幽霊のような存在として描かれている。


星祭りの夜、居場所を失い、孤独をかみしめながら登った天気輪の丘で、銀河鉄道に乗り込み、親友カムパネルラと銀河めぐりの旅をしばし楽しむ。二人は旅の中で出会う様々な人の中に次々と生きる意味を発見して行く。旅の終わりにジョバンニはさそりの話に胸を打たれて、カムパネルラに、みんなの本当の幸いのためにどこまでも一緒に行こうと誓い合うが、カムパネルラは消えてしまう。悲しみのうちに目覚めたジョバンニは、まもなくカムパネルラが命を犠牲にして友達を救った事実を知る。この瞬間、ジョバンニは銀河鉄道の旅が何を意味していたのか気づいて、みんなの本当の幸いのために尽くすことに、生きる意味を悟った[3]


さらに父が間もなく帰ってくることを知らされ、勇気づけられる。こうしてジョバンニは星祭りの夜、幽霊であった自分と決別して、母の元に戻ったのである。





みなみじゅうじ座の石炭袋。上方の明るい2つの星はβ星とα星。


銀河鉄道の旅は、銀河に沿って北十字から始まり南十字で終わる異次元の旅であり、ふたつの十字架はそれぞれ石炭袋を持っている[4]。石炭袋が一般に暗黒星雲だと知られるようになったのは最近のことであり[5]、かつては天文分野の専門書でもしばしば「空の穴」と表現されていた[6]。賢治は南北ふたつの石炭袋を冥界と現世を結ぶ通路として作品を構成した[5]とされている。


南十字の天上に行かなかったカムパネルラの行方については、ブルカニロ編にふれ輪廻したという解釈[7]や、母の記述にふれ、万物の母の元に帰ったという解釈[8]など、様々に解釈されていて定説はない。


『銀河鉄道の夜』の成立には、賢治が盛岡高等農林学校在学時から親密な関係を築いた一年後輩にあたる保阪嘉内の影響が大きく関係していると考える研究者もおり、作品中の様々なモチーフに、20代の頃に賢治と嘉内とが二人で登山し夜を通して共に語り合った体験が色濃く反映され、登場人物の「ジョバンニ」を賢治自身とするなら、「カムパネルラ」は保阪嘉内をあらわしていると考える研究者もいる[9][10]。ただし第4稿におけるカムパネルラのモデルは、賢治の死別した妹トシであるとする説がある[11]


登場人物の名前について、「ジョバンニ」はイタリアの洗礼名のひとつ(ラテン語におけるヨハンネス)に由来し、「カムパネルラ」は神学者トマソ・カンパネッラ(ちなみに幼名は「ジョヴァンニ・ドミニコ」)からとったという推定がある[12]。天沢退二郎は、作品の成立にいたる草稿の中では、賢治が「ジョバンニ」と「カムパネルラ」の混同ないし混同しかけていた形跡から、「ジョバンニ」と「カムパネルラ」というネーミングに隠れた、双子性に光を当てている[12]。ちなみにイタリア語のCampanellaは「鐘」を意味する単語(またフランツ・リストのピアノ曲に「ラ・カンパネッラ」がある)。



登場人物



ジョバンニ

孤独で空想好きな少年。歳は授業内容や仕事から思春期前とわかる。家は貧しく、母親が病気で寝込んでいるので、早朝には新聞配達、学校が終わってからは活版所でアルバイトをしている。父親は長らく家に帰っていない。漁に出ているとジョバンニは信じているが、らっこ[13]を密猟して投獄[14]されていると噂され、近所の子供たちはそのことでジョバンニをからかう。結婚して別に住む姉がいて、料理を作ってくれたりする。

カムパネルラ

ジョバンニの同級生で親友。父親同士も親友だった。裕福で人気者の優等生として描かれている。彼の母親は石炭袋にいたことから亡くなっていると推察される。しかしジョバンニの「何もひどいことない」という言葉から健在な母親もいるのではないかという見方もあり、一見幸福そうなカムパネルラの複雑な生い立ちが覗われる。他の同級生がジョバンニをからかうときは気の毒そうにしている。ジョバンニとともに銀河鉄道に乗り込み、共に旅する。

現代表記として「カンパネルラ」を採用する書籍もある(原文でも一部「カンパネルラ」と表記された箇所がある)。

モデルと推測される人物に河本緑石、保阪嘉内(この2名は盛岡高等農林学校で賢治と親交があった)、宮沢トシ(賢治の実妹)がいる。

先生

ジョバンニの学校の先生。

ザネリ

ジョバンニの同級生。仲間と共に「お父さんから、らっこの上着が来るよ」と言ってジョバンニをからかう。烏瓜のあかりを流す際に川に落ち、カムパネルラに助けられる。

ジョバンニの母

病気で床に臥せっており、ジョバンニが幼くして働かざるをえない要因の一つとなっている。作中では病状は不明であるが、会話の中で昔を振り帰ったジョバンニが「昔は良かった」と言っていたことからジョバンニが本編よりも幼い時は健康であったかと思われる(あるいは病状が軽かった)。

大学士(学者)

途中下車した先で出会う。学説を証明するため、ウシの祖先の化石を発掘している。初めて会うジョバンニ達に対して丁寧な態度で接していることから紳士的な人物だと思われるが、不慣れな作業員に対してはついつい言動が荒くなってしまう。

鳥捕り

銀河鉄道の乗客の一人。雁やさぎなどの鳥を捕まえ、押し葉にして食用に売る商売をしている。

燈台看守(燈台守)

銀河鉄道の乗客の一人。灯台の明かりを規則どおりに間歇させるのが仕事。

女の子(かおる子)、男の子(タダシ)、青年

12歳くらいの姉、6歳くらいの弟と、その家庭教師。乗っていた船が氷山に衝突して沈み、気がつくと銀河鉄道に乗っていた。回想の話から現世ではすでに亡くなっていることがわかる。

第2次稿の初形(初期形二)までは女の子が3人姉妹となっていた。変更後も原文では一部修正されていない箇所がある。

ブルカニロ博士

初稿から第3次稿まで登場したが、第4次稿では全てのシーンがカットされた。

「やさしいセロのような声」をした大人。ジョバンニが銀河鉄道に乗ったのは博士の実験によるものだった。銀河鉄道内では、どこからともなく声が聞こえるか、乗客として現れる。ジョバンニにものの見方や考え方などを指し示す。

マルソ

第4次稿にのみ登場。

ジョバンニにカムパネルラが川に流されたことを伝えた人物。ジョバンニの同級生(ただし明言されてはいない)。

カムパネルラの父(博士)

第4次稿にのみ登場。

ジョバンニに息子のカムパネルラが川に落ちてから45分たち、生存の可能性が無いことと、ジョバンニの父が帰ってくることを伝える。



文庫本の比較


現在の底本として、「校本宮澤賢治全集」の鑑賞用普及版である「新修宮沢賢治全集」(1980年)が主流となっている。




  • 『宮沢賢治全集7』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、1985年12月。ISBN 4-480-02008-X。 - 新修宮沢賢治全集が底本。異稿(第1次-3次稿)も収録している。


  • 『新編銀河鉄道の夜』 新潮社〈新潮文庫〉、1992年11月。ISBN 4-10-109205-2。 - 新修宮沢賢治全集が底本。別に同文庫『ポラーノの広場』に第3次稿が収録されている。


  • 『銀河鉄道の夜』 角川書店〈角川文庫〉、1996年5月。ISBN 4-04-104003-5。 - 【新】校本宮沢賢治全集が底本。


  • 鎌田東二 『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」精読』 岩波書店〈岩波現代文庫〉、2001年12月。ISBN 4-00-602045-7。 - 第1次-4次稿を収録。


  • 『銀河鉄道の夜 他十四篇 童話集』 谷川徹三編、岩波書店〈岩波文庫〉、2007年4月、第80刷改版。ISBN 4-00-310763-2。 - 谷川徹三による校訂。第3次稿が混淆した本文で、ブルカニロ博士が登場する。底本は校本全集より前の1956年版全集(筑摩書房)であるが、賢治の弟で研究者の宮沢清六に示唆を受け、草稿の順序を入れ替えた[15]



用語


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天気輪(天気柱)


天気輪(天気柱)



太陽柱

太陽柱






プリスクス野牛の化石



銀河のお祭(銀河の祭り)


盛岡市の舟っこ流しがモデルとされる。

星めぐり

宮沢賢治作詞作曲の歌「星めぐりの歌」のこと。


天気輪の柱

造語だが、具体的に何を指すか定説はない。墓場の入り口に設置される天気柱という説[16]や、日没直後に発生する自然現象である太陽柱という説がある。

ケンタウル露をふらせ

銀河のお祭で唱えるまじないのようなかけ声。賢治の造語。射手座であるケイロンは人の生死を分ける医術に長けた人馬神。

ハルレヤ

作中の台詞。校本全集よりも前の全集では誤記とみなして「ハレルヤ」に校訂していたが、いったん「ハレルヤ」と書いて修正した箇所があり、賢治が意図したものである。また、賛美歌が出てくる場面では番号が記されていない。第2次稿の段階では「主よみもとに近づかん」の歌詞が記された箇所があり、校本全集より前はそれに従って「306番」(賢治在世当時の番号。現行では320番)と書き加えられていた。

プリオシン海岸/クルミ/ボス


プリオシンとは地層年代のひとつ。 400万年 - 150万年前の地層であるが、当時は作中のとおり120万年前とされていた。賢治はプリオシン時代に属する花巻市郊外の北上川の川原をイギリス海岸と名づけて化石採取を楽しんでいた。ボスとはウシの属の事を指す。賢治は1922年にこの川原でクルミの化石とウシの足跡の化石を発見していることから、この川原がプリオシン海岸のモデルと言われている。

賢治が採取したクルミの化石は後に日本における「オオバタクルミの化石」と同定され、賢治が実質上の第一発見者となった逸話が残っている。また、ウシの足跡は絶滅したプリスクス野牛 (Bison priscus)の一種であるハナイズミモリウシのものであることが同定されている。バイソン類は一般にボス(Bos) とは分類されていない。ただしバイソンをボスに含める考え方がないわけではない。

鳥を捕る人

物語中かなりの紙面を割いているにもかかわらず、具体的に何を意味するかは特定されていない。こぎつね座のキツネという説[17]が有名である。その他大自然から貰ったインスピレーションを童話や小説にして糧にしようとする賢治自身とする説や、キリスト教で使用される聖餅(十字架の入った白い煎餅)を魂の鳥に見立てたとする説などある。

蠍(さそり、原作中では蝎)

蠍の火のエピソードは本作中の重要な箇所で人間の罪、原罪の問題が扱われている[18]。さそり座は、星の寓意を豊饒に使用した宮澤賢治の作品群のなかでももっとも多く現れるものであり[19]賢治が一番好きだった[20]星座と言われている。蠍の火のエピソードで語られる主題は「よだかの星」ときわめて近いものがある[21]

三角標

作品中、星々は三角標として表現されている。三角標とは三角測量の際に利用した測標(一時標識)である三角覘標(てんぴょう)のこと。これは三角点を設置する際に測量時の目標物とするためのもので、当時は陸地測量部(国土地理院の前身)が全国の地形図作成に当たって位置の基準とする目的で三角覘標を設置していた。「三角標」は三角覘標から賢治が考えた語とする解釈が一般的である。なお登山家の間では三角覘標を三角標と呼んでいた例があり、賢治の1911年の短歌にも数作品に使用例がある[22]。測量に造詣が深かった賢治は、現代のVERAプロジェクトの到来をイメージしていたのではないかと言われている[23]



設定



舞台


小説の舞台は、宮沢賢治の故郷にあった岩手軽便鉄道沿線風景をモデルにしたとされる。一方、小説を執筆する直前の1924年、宮沢賢治は花巻農学校の修学旅行引率で北海道苫小牧市を訪れており、同地の王子軽便鉄道・浜線(現JR北海道日高本線)沿線風景をモチーフにしたのではないかと推測する論文も存在する[24]



日付






この物語に日付はないため特定はできないが、登場する星座から初夏から初秋にかけての物語ということが判り、九月の彼岸とする説、八月のお盆とする説、七月の旧盆とする説などがある。


物語中で学校の場面が描かれており、夏休み中ではないと想像されること、「カムパネルラ」が釣鐘草の学名(Campanula)と酷似していることに併せて天気輪の丘に釣鐘草らしき花が一面に咲いたこと、銀河鉄道の夜(プリオシン、南十字星、蠍の火、黒い胡桃林、鳥)を連想させる詩「薤露青(かいろせい)」に付された日付(1924年7月17日)、賢治の親友保阪嘉内と行った旅行の時期などから、七月の旧盆の説が有力である。



また銀河祭りは、盛岡での盆行事(送り火)に相当する舟っこ流しがモデルであろうとする意見も有力で、それに従えば8月16日となる。



賢治の童話の創作は、保阪が3月に退学処分になり、4月の兵役検査の後「自分の命もあと15年」と周囲に漏らした1918年の冬から始まったと証言されている[要出典]。この年の旧暦の七夕は新暦の8月13日にあたる。


琴の星の記述と、四次稿にあるジョバンニとカムパネルラの会話、車掌の台詞から「11時丁度に白鳥座に停車」「南十字座の到着は3時」および「鷲の停車場に2時」の記述を一箇所にとどまって物語の順に見ることは物理的に不可能である。しかし琴の星ベガの南中を見て日本を北上し、北極圏で23時のはくちょう座デネブの南中を見て、タイタニックの乗客の魂を拾い、南北アメリカ大陸上で日本時間午前2時に(作中の記述の通り外は明るい)地下でわし座が南中し、さらに南下し、極夜の南極圏でサソリ座のアンタレスを眺めて、南極点で日本時間の午前3時に南十字座を眺めることは可能である。(賢治は童話『風野又三郎』の中で、風が地球を一周する話を登場させている。さらに童話『猫の事務所』において、南極点に到達したパンポラリスが登場しており、アムンゼンの南極到達の知らせの数ヶ月後に、タイタニックの事故が報じられている。)


理論上南北の星座盤を使っても同じことが導かれ、作中において日付と時間、星座の南中時刻が決まっている事から日付が8月13日になる事が導き出される。また8月13日はペルセウス座大流星群の日であり星祭の夜と符合することから「8月13日未明の場面」となる。


物語の中心は魔物や幽霊と遭遇しやすいとされる逢魔時(おうまがとき)(日没 - 天文薄明終了)におきた物語であろうと言われている。 ただし決定的な時間の特定はされていない。



宗教観


本作とキリスト教の関連がしばしば指摘されるが、宗教学者からは法華経との関連を指摘されている[25][26]。賢治は、父親が浄土真宗の熱心な信者であったことから、幼少のころから仏教的な環境で育ったが、18歳のときに『漢和対照、妙法蓮華経』を読み、法華経に興味を持った。国柱会の田中智学の講演会を聴いたことをきっかけに、家出をして上京し、国柱会に入信、同会の講師から法華文学の創作を勧められたことから、『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』『風の又三郎』などの童話を執筆した。後年、国柱会とは一定の距離を置いたものの、法華経への信仰は生涯続いた。



翻案作品群



漫画




  • ますむらひろし 『銀河鉄道の夜』 朝日ソノラマ〈デュオセレクション〉、1985年。ISBN 4257900601。
    • 『銀河鉄道の夜』 扶桑社〈扶桑社文庫〉、1995年。ISBN 4594016987。


    主要登場人物を人間ではなく擬人化した二足歩行の猫型生物として描いている。

    最終形と初期形の両方を(前者を1983年に、後者を1985年に)漫画化している。




  • 居村眞二 『銀河鉄道の夜』 暁教育図書〈コミグラフィック日本の文学12〉、1988年
    原作のエピソードが一部省略されている。



  • 松田一輝 『銀河鉄道の夜』 ぎょうせい、1992年小田切進監修。2010年に新装版として再出版。ISBN 978-4-324-09017-6

  • 永島慎二 『銀河鉄道の夜』 NHK出版、1996年。ISBN 4140052651。


  • 片山愁 『銀河鉄道の夜』 角川書店〈あすかコミックスDX〉、1996年。ISBN 4048526936。
    原作のエピソードが一部省略されている。



  • バラエティ・アートワークス 『銀河鉄道の夜』 イースト・プレス〈まんがで読破〉、2007年。ISBN 978-4872578669。
    作画者の独自解釈と脚色が(他の漫画化作品に比して)大きく、最終形を基本にしつつ初期形の内容も一部取り入れている。


  • 北原文野 『銀河鉄道の夜』 ホーム社〈MANGA BUNGOシリーズ〉、2010年。ISBN 978-4834263053。

  • 木野陽 『銀河鉄道の夜』 学研プラス〈マンガジュニア名作シリーズ〉、2015年。ISBN 978-4-05-203920-1。



映画







銀河鉄道の夜


1985年制作の劇場用アニメ映画。同年7月13日公開。毎日映画コンクール・大藤信郎賞受賞作。



  • 監督:杉井ギサブロー

  • 原案:ますむらひろし

  • 脚本:別役実

  • 音楽:細野晴臣

  • アニメーション制作:グループ・タック

  • 配給:日本ヘラルド映画

  • 出演:田中真弓(ジョバンニ)、坂本千夏(カムパネルラ)、堀絢子(ザネリ)、一城みゆ希(マルソ)、島村佳江(ジョバンニの母)、納谷悟朗(カムパネルラの父)、常田富士男(燈台守)、金田龍之介(先生・学者)、大塚周夫(鳥捕り)、渕崎ゆり子(ただし)、中原香織(かおる子)、槐柳二(雑貨屋主人)、青野武(無線技師)、八代駿、梶哲也、新村礼子、菊池英博、仁内建之、倉崎青児、山崎哲也、勝田治美、丸山真奈実、渡辺真砂子ほか


  • 配給収入:6億円[27]


劇中に登場するすべての文字はエスペラントで、表題のラテン文字表記も「Nokto de la Galaksia Fervojo」としている。主要登場人物を人間ではなく擬人化した猫として描いた設定は、ますむらひろしが(アニメ版のもとになった)漫画化に際して施した脚色で、賢治の実弟である宮澤清六は、当初これに反発したが『校本宮澤賢治全集』の編集者である天沢退二郎らの説得により了承。最終的に作品の仕上がりを評価した。研究者の間でも最後まで「猫」への変更を了としない向きもあった。これはますむらの著書『イーハトーブ乱入記』(ちくま新書)に詳しい経緯が記されている。なお、漫画版ではズボンに靴まで履いていたのに対して、アニメ版では上着だけと衣服の着用は最低限度なものになっている。


また、この映画を観て「宮沢賢治の原作でも登場キャラクターは猫なのだろう」と勘違いする人が少なからず存在する。小谷野敦(比較文学者)も、この様な影響を及ぼした事は好ましくないとして批判している。


なお、本作にはタイタニック号の沈没をモチーフとした(ただし細部はタイタニックと合致せずあくまで架空の)エピソードが登場するが、この映画の音楽を担当した細野晴臣の祖父(細野正文)が実際のタイタニック号に乗船していたことが公開当時奇縁として紹介された。またこの歴史的な惨事に配慮して、船舶事故のシーンのみ猫の世界ではなく人間世界に起きたこととしてリアルに描かれており、ジョバンニらと旅をともにする青年と幼い姉弟も人間の姿となっている(漫画版ではジョバンニ達と同じく猫として描かれていた)。青年は、ますむらひろしの代表作「アタゴオル」シリーズの登場人物を基にデザインされている。


エンディングで細野晴臣の音楽に合わせて常田富士男が朗読している詩は、詩集『春と修羅』の「序」の一節である。


1986年7月21日にテレビ放送され、13.2%の視聴率(ビデオリサーチ調べ)を記録した[28]


2007年9月27日の『BSアニメ夜話』でこの作品が取り上げられた。


2009年8月13日には『BS夏休みアニメ特選』でこの作品が放送された。


地方の局では年末になると深夜に放送する事も多く、また制作にテレビ朝日が関わっていたので既に地上波では何度か放送されている。


近年ではBSやCSで再放送される機会が多い。この映画の原作であるますむらひろしの漫画をはじめ、パンフレット、サウンドトラック等のデザインは羽良多平吉が手掛けている。



銀河鉄道の夜 I carry a ticket of eternity



2006年制作の劇場用実写映画。



テレビドラマ



80年後のKENJI〜宮沢賢治 映像童話集〜「銀河鉄道の夜」


2013年3月6日、NHK BSプレミアムで宮沢賢治没後80年を記念した映像作品による特別番組『80年後のKENJI〜宮沢賢治 映像童話集〜』の第5回と第6回として、それぞれ前編と後編が放送された。



放送日時



  • 前編:2013年3月6日 22:00 - 22:30

  • 後編:2013年3月6日 22:30 - 23:00





ストーリー

カムパネルラの死から1年が過ぎ、カムパネルラの父の招きで、カムパネルラの家にやって来たジョバンニが、カムパネルラの父からカムパネルラの最後の1日について聞かれ、それに答える形で銀河鉄道でカムパネルラと旅をした話を語る。回想シーンはほぼ原作通りに展開するが、ジョバンニやカムパネルラをはじめとする少年たちの年齢が高校生くらいに設定されている。また舞台設定は基本的に無国籍(建物はヨーロッパ風)だが、現代の日本のようにも見える部分がある(ジョバンニがイヤホンで音楽を聴いているなど)。



キャスト



  • ジョバンニ - 太賀

  • カムパネルラ - 染谷将太

  • カムパネルラの父 - 田中哲司





スタッフ



  • 演出:望月一扶

  • CG:白組





ミュージカル



銀河鉄道の夜


2008年、劇団ひまわりのミュージカル。[6]



  • 脚本・演出: 中島 透

  • 音楽: 西村友

  • 振付: 港 ゆりか

  • 出演: 熊本野映、石川由依、大河元気、馬場 徹 ほか


キャストが女性中心で構成されたベガ公演と、男性中心で構成されたアルタイル公演の2種類の公演が行われた。



銀河鉄道の夜


2004-2007年、劇団わらび座のミュージカル。[7]



  • 台本: 市川森一

  • 演出: 中村哮夫

  • 音楽: 甲斐正人

  • 美術・衣裳: 朝倉摂

  • 出演: 窪寺杏、丸山有子 ほか


「本作品は多くのミュージカルが制作されてきたが、どれも納得できない」と台本の市川は語る。その反省を踏まえて「原作に忠実に、余計なことを語らない。」をモットーに「今までの脚本家人生で最高の作品のひとつに仕上がった。」とのこと。



バウ音楽詩劇『イーハトーヴ 夢』宮澤賢治「銀河鉄道の夜」


2001年、宝塚歌劇団星組のミュージカル。[8]



  • 監修: 柴田侑宏

  • 演出: 藤井大介

  • 音楽: 高橋城、木川田新

  • 振付: 麻咲梨乃、御織ゆみ乃

  • 出演: 夢輝のあ、映美くらら、椿火呂花 ほか



星めぐりのうた


2012年、ネルケプランニング企画製作のミュージカル。[9]



  • 脚本: 桑原裕子(KAKUTA)

  • 演出・振付: 上島雪夫

  • 音楽: 坂部剛

  • 楽曲提供:佐橋俊彦、中川晃教、アルケミスト

  • 歌詞:こんやしょうたろう(アルケミスト)

  • 出演: 中川晃教、山崎育三郎、植木豪、フランク莉奈、岡田亮輔、杉崎真宏、土居裕子 ほか


「銀河鉄道の夜」を題材にしたまったく新しいタイプの 「ソング・ダンス・ミュージカル」。



演劇



銀河鉄道の夜


東京演劇アンサンブル公演、ブレヒトの芝居小屋。世界で初めて上演権を経て上演。初演1982年2月9日–22日(全14ステージ)、毎年クリスマスにブレヒトの芝居小屋にて上演中。



  • 脚本:広渡常敏

  • 演出:広渡常敏

  • 音楽:林光

  • 装置:岡島茂夫

  • 舞踊:西田尭


出演:水流梨津美、冨山小枝、松下重人、浅井純彦、熊谷宏平、本多弘典、永野愛理 、尾崎太郎 ほか(2015年現在)



イーハトーボの音楽劇「銀河鉄道の夜」


こどもの城主催、青山劇場。初演1995年8月3日–7日(全9ステージ)、再演1996年11月23日–30日(全11ステージ)。



  • 脚本:能祖将夫

  • 演出:白井晃

  • 音楽監督:中西俊博

  • 舞台美術:小竹信節

  • 作詞:さねよしいさ子、宮沢賢治、能祖将夫

  • 作曲:中西俊博、さねよしいさ子、宮沢賢治

  • 振付:川原あけ美

  • 出演:伊崎充則、石村美果(現・石村みか)、清水明彦、さねよしいさ子、赤星昇一郎、岡本麻弥、富浜薫、深貝大輔 、陰山泰 ほか



光速銀河鉄道の夜(賢治島探検記内)


演劇集団キャラメルボックスの成井豊が宮沢賢治作品を数作品を組み合わせて上演したものの一編。銀河鉄道の夜のエピソードを簡潔に展開、ラストには広く知られている最終稿と言われているエピソードだけではなく、初稿から第3稿に入っているブルカニロ博士の台詞も使用している。



想稿 銀河鉄道の夜


劇作家の北村想が、本作をベースとして書き起こした戯曲。



人形演劇 銀河鉄道の夜


2010年1月21〜24日 東京都調布市せんがわ劇場で「調布市せんがわ劇場アンサンブル 第7回公演」として上演された。プロの人形遣と、オーディションで公募された出演者が、半年間のワークショップを経て上演した。



  • 作劇・演出:黒谷都

  • 美術:渡辺数憲、松沢香代

  • 作曲:原田依幸

  • 照明:アイカワマサアキ

  • 音響:尾林真理

  • 舞台監督:吉木均

  • 出演:ジョバンニ、カンパネルラ、塚田次実、油絵博士、小倉良博、乙顔有希、海津研、後藤まなみ、貞森裕児、たけうちみずゑ、松木章子、宮川聖美、井村淳(特別出演)、石井マリ子(特別出演)



群読音楽劇「銀河鉄道の夜」


桜美林大学プルヌスホールプロデュース/市民参加企画。2007年の初演より毎年夏に桜美林大学プルヌスホールにて上演。市民と学生とプロのアーティストで創るユニークなステージ。



  • 脚本・演出:能祖將夫

  • 音楽監督:佐山雅弘

  • 音楽:ピアノ/佐山雅弘、パーカッション/はたけやま裕

  • 舞台美術:濱崎賢二

  • 照明:金英秀

  • 歌唱指導:大森智子

  • 振付・出演:井上大輔

  • 出演:オーディションで選ばれた 市民・学生23名

  • 企画・制作:桜美林大学パフォーミングアーツ・インスティテュート



プラネタリウム



銀河鉄道の夜 -Fantasy Railroad in the Stars-


2006年制作。KAGAYA studio 制作、音楽は加賀谷玲。


サンシャインスターライトドーム満天(現、コニカミノルタ プラネタリウム満天)で2006年6月17日から11月12日まで上映されたプラネタリウム番組。プラネタリウムの光学式投影装置では上映に使用されず、デジタルの全天周映像システムによりドームスクリーンに映し出される短編CG映画のような作りになっている。2007年よりコニカミノルタプラネタリウム、五藤光学研究所、リブラの配給により全国各地のプラネタリウムで上映されている。また、2008年4月より70mmフィルム版がエクスプローラーズ・ジャパンの配給により全国各地で上映されている。サンシャインスターライトドーム満天上映版ではナレーションが女優の室井滋であるが、全国上映版のナレーションは声優の桑島法子と大場真人である。


この作品はDVDで市販もされている。本編の長さについては、上映通常版が38分、短縮版が28分なのに対し、DVDは48分と作りこまれている。


2009年、上映版については場面追加や音響面でのバージョンアップがなされ、コニカミノルタ プラネタリウム満天で上映された(2009年6月20日 - 11月23日)。


  • プラネタリウム番組「銀河鉄道の夜」公式サイト


ドラマCD



1996年


VOICE LANDより1996年3月5日に発売。



  • ジョバンニ:安達忍

  • カムパネルラ:松本梨香

  • ザネリ:伊倉一恵

  • マルソ:亀井芳子

  • 先生:関俊彦

  • ジョバンニの母:島本須美

  • カムパネルラの父:西村知道

  • 青年:真殿光昭



2008年


モモグレより、宮沢賢治生誕111周年記念アルバムシリーズとして2008年12月25日に発売。



  • ジョバンニ:石田彰

  • カムパネルラ:神谷浩史

  • タダシ:緒方恵美

  • かおる子、先生、マルソ:桑島法子

  • 家庭教師、ザネリ、大学士:小野大輔

  • 灯台守:大川透

  • 鳥獲り:楠見尚己

  • ナレーション:野島健児



その他


CD「銀河鉄道の夜」久石譲


宮沢賢治生誕100年の企画アルバムとして、1996年7月20日に発売。全編、久石によるインストゥルメンタルだが、一曲のみドヴォルザークの「新世界より、第2楽章」を久石がアレンジしたものが使われている。ライナーノーツはくもん出版刊の絵本「銀河夜鉄道の夜」(イラスト:東逸子)の絵を流用している。2013年7月24日にブルースペックCDによるリマスター版が発売された。

1985年7月7日:朝日新聞紙面、手塚治虫の新聞エッセイ記事:「『銀河鉄道の夜』を読む」※ 第2回日仏文化サミット'85 に参加のためにフランス滞在中に書かれた。
バラエティー番組『しくじり先生』(2017年1月23日放送内)『世界一受けたい授業』(2018年12月8日放送内)では賢治の代表作として紹介されている。



電子書籍



音楽絵本・銀河鉄道の夜


アップルが開発したiPad用、iPhone及びiPod touch用のアプリケーションとして2011年から市販されている電子絵本。イギリス人翻訳家による英語版も存在する。4次稿を底本とした全文の絵本化が行われておりアップルジャパンはこのアプリケーションを国語の教科書アプリケーションに推薦している。


  • 「音楽絵本・銀河鉄道の夜」


銀河鉄道の夜から影響を受けたもの



作品




  • 音楽ファンタジーゆめの「スラブ舞曲」


  • 銀河鉄道999(松本零士の漫画およびテレビアニメ)


  • ドラえもん(藤子・F・不二雄の漫画)短編作品「天の川鉄道の夜」

    • ドラえもん のび太と銀河超特急 (上記作品を原案とした漫画及びアニメ映画)



  • 銀河鉄道の夜(ZABADAKの曲。同作曲者による作品「Prologue」のアレンジ)
    • エピロヲグ~銀河鉄道の夜~ (ZABADAKの曲。上記楽曲同様「Prologure」のアレンジ)



  • 銀河鉄道の夜(GOING STEADYの歌)
    • 銀河鉄道の夜 第二章〜ジョバンニに伝えよここにいるよと (銀杏BOYZの歌。上記楽曲のリアレンジ)



  • トロンボーン4重奏のための五章「ケンタウル祭の夜に」〜宮澤賢治「銀河鉄道の夜」によせて〜(建部知弘の楽曲)

  • 銀河鉄道の夜のような夜(ラーメンズのコント)

  • TBSブリタニカ発行の「世界子供百科」(1972年)に付録の2枚組ピクチャーLPアルバム「音楽ってたのしいな」の2枚目B面に収録された、シンセサイザーを用いた冨田勲作曲演奏による「こどものための交響詩-銀河鉄道の夜」。 ※ 冨田勲が手がけた最も初期のシンセサイザーを用いた作品。

  • LPレコード「冨田勲の世界」(1977年)の中で、過去にTBSブリタニカ「世界子供百科」(1972年)の付録LPに含めたシンセサイザー制作による『こどものための交響詩-銀河鉄道の夜』を部分的に再構成して収録。

  • 「イーハトーヴ交響曲」(冨田勲作曲の独唱+合唱付きのオーケストラ演奏曲、初演2012年) 中の第5楽章「銀河鉄道の夜」※ ラフマニノフの交響曲第2の旋律も引用している。


  • 吉松隆の楽曲 吉松は天文に造詣が深いことや家族の境遇で、宮沢賢治との共通点がある。

    • 「アルビレオ・モード」: 須川展也の委嘱によるソプラノ・サクソフォーン協奏曲。2つの楽章からなり、第1楽章「トパーズ」、第2楽章「サファイア」の命名は「アルビレオの観測所」を意識したもの。2005年4月29日、ザ・シンフォニーホールにて初演。

    • 「KENJI~宮澤賢治によせる」 : 舘野泉の委嘱による左手ピアノ、語り、チェロの作品。2015年6月3日、東京オペラシティにて初演。




  • 中島みゆき:「夜会」VOL.13「24時着 0時発」、および、VOL.14「24時着 00時発」


  • 半分の月がのぼる空(橋本紡のライトノベル)

  • カムパネルラ(sasakure.UKの楽曲)


  • テイク 5(宇多田ヒカルの楽曲)


  • ARIA(天野こずえの漫画)


  • 『劇場版 "文学少女"』(野村美月原作のライトノベル“文学少女”シリーズの劇場上映版[29]


  • 輪るピングドラム(日本のテレビアニメ作品)

  • 銀河鉄道の恋人たち : 大橋喜一による戯曲 : 広島の街、「銀河鉄道の夜」がきっかけで知り合った、とし江と五郎。しかし、幼児期の被爆が原因で五郎には死期が迫っていた。最後の夜、恋人たちは悲愴で幻想的な銀河鉄道の旅に立つ。


  • 疾風伝説 特攻の拓:(原作:佐木飛朗斗、作画:所十三)天羽 時貞の死で浅川拓が銀河鉄道の夜の一部、サソリの火の一節を思い出している[30]


  • なのはな -幻想『銀河鉄道の夜』(萩尾望都の漫画) : 東日本大震災とそれによって引き起こされた福島第一原子力発電所事故を題材として描かれた短編作品「なのはな」の単行本化の際に、続編として『銀河鉄道の夜』と『ひかりの素足』とのコラボで描き下ろされた作品

  • 「声に出して歌いたい日本文学 <Medley>」(桑田佳祐の楽曲) : 元々は自身の番組「桑田佳祐の音楽寅さん」の企画から生まれたものだったが、好評だったためCD化された。この話を含むさまざまな日本文学にメロディをつけている。


  • 素晴らしき日々 〜不連続存在〜(ケロQ制作のアダルトゲーム)

  • ピアノ協奏曲第1番“蠍火”:Virkato(beatmania IIDXの11 IIDX REDに収録された曲。題名は『蠍の火』から取られている。)


  • ジョバンニの島(アニメ映画)

  • 銀河鉄道の彼方に(高橋源一郎の小説)[31]


  • 長野まゆみによる生誕100年記念作品の「賢治先生」、「カンパネルラ」「銀河電燈譜」など。


  • ウルトラQ第28話「あけてくれ!」


  • 放課後のプレアデス(日本のテレビアニメ作品)


  • 千分の一夜物語 スターライト (あまざらしの小説)


(2014年9月9日にこの小説の朗読を交えたライブが行われた。翌年の4月4日、4月29日にアンコール公演が行われた。)



  • スターライト (amazarashiの楽曲)

  • 銀河ステーション(2016,豊崎愛生の楽曲) : 作詞をコトリンゴ、作曲・編曲をmitoが手がけた、『銀河鉄道の夜』をモチーフに作られた楽曲。同小説が好きな声優・豊崎愛生が歌う。自身の3rdアルバム『all time Lovin'』(2016)の1曲目に収録されている。


命名




「銀河鉄道」と刻印されたマンホール




  • 銀河ドリームライン釜石線
    • 釜石線が通過する宮守橋梁付近には「銀河鉄道」と刻印されたマンホールがある。


  • カンパネルラ田野畑

  • 銀河鉄道展望公園(山梨県韮崎市:賢治の親友、保坂嘉内の故郷)


  • IGRいわて銀河鉄道[32]


  • コールサック社(詩の出版社)



関連項目



  • 幕が上がる - 高校演劇をテーマとした映画であり、劇中劇として『銀河鉄道の夜』が演じられる。踊る大捜査線シリーズで知られる本広克行が監督を務めた(2015年公開)


出典・脚注





  1. ^ 賢治は自作の題名を列挙したメモの一つに「銀河ステーション」「風野又三郎」「ポラーノの広場」「グスコーブドリの伝記」の4編を「少年小説」として挙げている(『歌稿B』表紙メモ)。やや時代が遡ると見られる別のメモでは、「ポランの広場」「銀河鉄道」「風野又三郎」「グスーの伝記 下書直シ」を列挙したり(「青木大学士の野宿」草稿裏メモ)、「ポラン」「風野」「銀河」「グスコ」を「長編」として括ったり(「文語詩五十篇」下書裏メモ)しており、これら4作品を同じカテゴリーとみなしていたことがうかがわれる(「【新】校本宮澤賢治全集」校異による)。


  2. ^ 入沢康夫・天沢退二郎らは、残存した賢治の原稿を綿密に調べ、使われている原稿用紙や筆記用具の分析および筆跡の変遷に基づいて、作品が書かれた年代ごとに整理を行い、1974年出版の全集(『校本宮澤賢治全集』の9巻および10巻)に、研究の結果として得られた「銀河鉄道の夜」の本文ならびに推敲過程を収録した(出典:ロジャー・パルバース「銀河鉄道の夜」、NHKテレビテキスト2011年12月号74頁。なおこのテレビテキストの75頁には上記全集に掲載された「本文について」という作品解説の図表を元に描かれた『「銀河鉄道の夜」の推敲過程』という図も掲載されている)。つまり、この1974年に発表された研究の前と後とでは、宮澤賢治作品としての「銀河鉄道の夜」にはその内容やストーリーの順序などにおいて大きな相違がある。


  3. ^ 宮沢賢治の希望を託した「銀河鉄道の夜」誕生物語』 NHK総合テレビ歴史秘話ヒストリア NHKアーカイブス2012年10月31日本放映


  4. ^ 原子朗 1989, p. 334.

  5. ^ ab原子朗 1989, p. 395


  6. ^ 一戸直蔵 『星』 裳華房、1910年。NCID BN11112001。


  7. ^ 鎌田東二 2001, 63.


  8. ^ 『宮沢賢治の冒険』139頁


  9. ^ 菅原千恵子 1997.


  10. ^ 江宮隆之 『二人の銀河鉄道 : 嘉内と賢治』 河出書房新社、2008年。ISBN 9784309018560。


  11. ^ 畑山博 1996, p. 47.

  12. ^ ab『新編 銀河鉄道の夜』注解(57)および(58)[321-322ページ]より


  13. ^ 奥羽観蹟聞老志(江戸時代の地誌)には気仙郡でラッコの目撃例がある


  14. ^ 執筆当時は臘虎膃肭獣猟獲取締法によりラッコ猟は規制対象だった。


  15. ^ 従来の刊本ではジョバンニが夢から覚醒した後の部分(現在は末尾となっている部分)が銀河ステーションの章の前に挿入されていた。なお、この入替えについては岩波文庫版に先立つ「宮沢賢治童話全集6」(宮沢清六ほか編、1964年、岩崎書店)の増刷版においてなされていたものである。


  16. ^ 原子朗 1989, 483頁


  17. ^ 岩手日報2009/12/27


  18. ^ 「「銀河鉄道の夜」を読むII」関口安義(都留文科大学研究紀要2011.10)[1]PDF-P.11


  19. ^ 「宮澤賢治童話研究資料覚え書(第5報)」大藤幹夫(大阪教育大学紀要1989.12)[2]PDF-P.8


  20. ^ 草下秀明「宮澤賢治と星」『宮澤賢治と星』甲文社.昭和28年、直接の引用は大藤幹夫1989.12,PDF-P.8


  21. ^ 「「銀河鉄道の夜」を読むII」関口安義(都留文科大学研究紀要2011.10)[3]PDF-P.12


  22. ^ 「「銀河鉄道の夜」の用語「三角標」の謎」米地文夫(岩手県立大学総合政策2012.5)[4][5]


  23. ^ 『銀河鉄道の夜』 -Fantasy Railroad in the Stars-


  24. ^ 「銀河鉄道の夜」地上モデルはWEBみんぽう・苫小牧民報(2016年11月28日)2016年11月29日閲覧


  25. ^ 「宮澤賢治はなぜ浄土真宗から法華経信仰へ改宗したのか 正木晃


  26. ^ 「『銀河鉄道の夜』と法華経」、定方晟


  27. ^ 「邦画フリーブッキング配収ベスト作品」、『キネマ旬報』1986年(昭和61年)2月下旬号、キネマ旬報社、1986年、 127頁。


  28. ^ 『週刊東洋経済』1986年8月2日号、122頁。


  29. ^ 劇場版 "文学少女"』公式HP


  30. ^ 疾風伝説 特攻の拓 15巻


  31. ^ 銀河鉄道の彼方に - 著者は語る(週刊文春WEB 2013年7月28日)


  32. ^ 『鉄道ジャーナル』2002年10月号p.31。




参考文献



  • 原子朗 『宮沢賢治語彙辞典』 東京書籍、1989年10月。ISBN 448773150X。

  • 畑山博 『銀河鉄道魂への旅』 PHP研究所、1996年9月。ISBN 4569552889。

  • 鎌田東二 『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」精読』〈岩波現代文庫〉、2001年12月。ISBN 4006020457。

  • 菅原千恵子 『宮沢賢治の青春 : “ただ一人の友"保阪嘉内をめぐって』〈角川文庫〉、1997年11月。ISBN 4043433018。

  • 入沢康夫、天沢退二郎 『『銀河鉄道の夜』とは何か 討議』 青土社、1990年5月、新装版。ISBN 4-7917-5077-2。

  • 村瀬学 『『銀河鉄道の夜』とは何か』 大和書房、1994年1月、新装版。ISBN 4-479-39029-4。

  • 伊勢弘志「大正期の思想潮流についての一考察 ―思想運動としての『銀河鉄道の夜』」『駿台史學』(131)2007年

  • NHKテレビテキスト2011年12月号、「銀河鉄道の夜 宮沢賢治」, ロジャー・パルバース, NHK出版, ISBN=978-4-14-223009-9(発行2011年12月1日).



外部リンク




  • 『銀河鉄道の夜』:新字新仮名 - 青空文庫 - 校本全集刊行後の版。


  • 『銀河鉄道の夜』:新字旧仮名 - 青空文庫 - 新校本全集版。校訂された箇所を示す〔〕が含まれる。


  • 『銀河鉄道の夜』:新字新仮名 - 青空文庫 - 校本全集刊行前の版。第3次稿が本文に混淆しており、ブルカニロ博士が登場する。


  • 『銀河鉄道の夜』:旧字旧仮名 - 青空文庫 - 初期の版。現在は物語の末尾となっている部分が五章に挿入され、さらにそれに続く形で現存稿にはみられない文が含まれている。

  • 賢治の見た夢〜銀河鉄道の夜〜

  • 宮沢賢治記念館・岩手県花巻市











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