山野草
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山野草(さんやそう)または山草(さんそう)とは、国内外の平地から高山に至る野外に自生する観賞価値のある草本、低木及び小低木の一部を含む幅広い意味を持つ言葉であるが、日本国内における近代的な山野草栽培の歴史は100年程度と浅いこともあり、未だに明確な定義が確立されていない。
一般的には野生植物のみを指すと思われることが多いが、近年では国内外で品種改良されたものが「山野草」として流通している例も多く、取扱業者が便宜的につけた不適当な名称で取り引きされている場合もある。また、ラン科のエビネ属やキンポウゲ科のオオミスミソウなどのように、優秀な技術を有する専門業者等により積極的な育種が試みられ、観賞価値の高いものが広く普及しつつあるものもある。さらに、日本春蘭(シュンラン)、富貴蘭(フウラン)、長生蘭(セッコク)、日本桜草(サクラソウ)などの高度に園芸化された古典園芸植物をも広く含む場合がある。
目次
1 概要
2 歴史
3 山野草ブーム
4 ブームの弊害
5 栽培
6 出典
7 参考文献
8 外部リンク
概要
山野草という名の下で栽培されているのは、日本の野生植物だけではない。海外の植物であっても、そのような名で呼ばれ、栽培されているものはある。全体として、小柄で、花は美しくても派手ではないものが、それに既成の園芸植物や観葉植物とはあまり似ていないものが好んでこの名で呼ばれるようである。
一般に園芸植物と言えば、代々にわたって栽培され、品種改良によってより美しく、派手になったものを栽培することである。これは、特に西洋の場合にその傾向が強い。
それに対して、日本では、そのような傾向とともに、むしろ虚飾を好まず、自然な姿を好む傾向が一つの流れとしてある。たとえば日本庭園や盆栽にその傾向が見て取れる。山野草はその延長上のものと考えられる。
歴史
趣味として野生の植物を取り込んで栽培することが古くからあったのは間違いのないところである。多くの栽培植物が確立していた江戸期においても山の小さな花を取り込もうとする努力があったことは、たとえばイナモリソウの名の由来からも推察できる。栽培植物として野草や山草を扱った書籍も、たとえば大正7年に『採集栽培 趣味の野草』が、昭和7年に『山草と高山植物』が出版されたとの記録がある[1]。
山野草ブーム
1970年代頃からのエコロジーブームなど、自然へ向けられる目が増えたことによってか、高山植物や野生植物を観賞の対象として栽培することが話題に上るようになった。
その後、エビネブーム・野生ランブームなどいくつかの波を越えつつ、ひとつのジャンルとして定着した。
初期の頃は、呼称として山草(さんそう)が使われることが多かった。これに、より一般的名詞として使われてきた野草が結びついた形で、2000年代現在ではほぼ山野草が定着しているように見える。
ブームの弊害
日本の山野草園芸は歴史が浅く、国民のそれに対する意識も低い傾向がある。欧米ではイギリスのように王立園芸協会(RHS)やアルパインガーデン協会(AGS)などの国際的に活動する団体が山野草園芸を牽引しているが、日本では東京山草会などの一部の団体が国際的な取組に目を向け始めたばかりの状況である。欧米では山野草栽培は種子を播いて育てることが主要な手段として用いられており、自生地から株を盗掘するようなことは非現実的となっている。これに対し、日本では自然保護に対する国民の意識が低いこともあり、身近の山野から略奪して栽培することが横行している。園芸流通の面では、小売り業者の多くが自然保護に対する認識を欠くため、低地での栽培がほとんど不可能な高山植物を量販店の店頭で大量に販売するなどの事態が生じている。今後はこのような面における法的規制も必要となると思われる。
販売されている山野草の一部には、いまだに山取り品と呼ぶ野外採集株が混在している場合がある。最近では多くの業者が既存株由来の種子、株分け、挿し木、無菌培養などにより増殖されているが、それが困難な種類では自生地周辺の住民から山取品を買い上げている場合もある。このようなケースでは野生株の乱獲を引き起こしかねない。
実際、山野草ブーム以降、山野草を求めて山には入る人は急増した。自然観察会でも有名な植物を紹介するのが難しくなった。その日は取らなくても、日を改めて取りに来る例が増えたからである。また、「花泥棒には罪がない」という言葉が示すように、一般の人にとってはほとんど罪悪感がないため、広範囲の種が危機にさらされてきた。近年では植物の分布調査等の報告において、希少種については具体的な情報の公開を避ける例がほとんどなのは、これに対する警戒が中心である。
さらに、山間地において、野生植物を売買する店が急激に増加した。栽培する人は、山に行かなくても手に入るならば、それの起源がどのようなものかを配慮することは少ない。このような状況の中で、絶滅寸前に追い込まれた植物の種類は数多い。野生ランブームの頃には、ミヤマウズラやカキラン、トンボソウといった普通種の野生ランすらほとんど見られなくなった。人工栽培が現状でほぼ不可能な腐生ランすら乱獲の被害を受けたほど、このブームは過熱した。かつては林に入るとよく見かけたシュンランですら、都市の近郊ではみかけなくなってしまった。これは、一説によると花変わりを求めた愛好家が花のないときに大量に採取し、花が開花したら観賞価値のあるもののみを残し、そうでないものは廃棄または安価で販売するなどの目を覆いたくなるようなことが行われたことも一因だという。
多くの山野草で山取り品よりも、野生採種、栽培採種を問わず、種子からの実生株のほうがはるかに栽培環境に順化しやすく、栽培が容易であることが知られている。しかし、実生株はことに多年生草本や木本の場合、成株にまで成長するのに何年もかかること、ラン科植物などではそもそも種子を発芽させて幼若植物を得るまで育てること自体が無菌培養など高度な技術を要することなどから、多くの趣味家が安易に成株を得ることのできる山取り品に飛びついた側面があったのである。
現在では、有名な産地の多くの場所で採集が制限されているが、盗掘は跡を絶たず、流通しているもの中に、どれだけ山取り品があるか、定かではない。趣味そのものには罪はないので、そのような自然を破壊する形の採集が行われないような、実効性のある規制が必要である。同時に、自然から採取せずなるべく種子から栽培する、さらに種子から栽培しにくいものはなるべく育てない、展示しないという考え方を一般化する努力も必要だと思われる。
最近では、趣味の会の一部において、展示会に出展する植物を実生等に由来するものに限ったり、国内外との種子交換を実施したりする動きが見られる。また、国や地方自治体と連携しつつ自然保護活動を展開している例も見られ、今後の動向が注目される。
栽培
山野に生育するものであり、森林性のもの、高山性のものなど、性質は大いに異なるので、まとめて論じるわけにはいかない。しかし、花壇に向くものは少なく、普通は庭で育てるものではない。一般の園芸植物にくらべて、水や光の条件等、気むずかしいものも多い。
庭で育てる場合、木陰にエビネを植えるとか、日本庭園の中に野性味を求めて点在させるような育て方と、ロックガーデンとする場合などがある。
高山植物など、特殊な性質のものは、丁寧な手入れが不可欠なので、小型の鉢で、周囲の環境を整えながら育てる。場合によっては夏に冷蔵庫で保管する、といったことが必要とされる。
また、野外の自然を好みの姿で切り取った感じで、数種を寄せ植えにするのもよく行われる。
出典
^ 東京山草会編(1971),p.335
参考文献
- 東京山草会編、『ガーデンライフ別冊 高山植物と山草百科』、(1971)、誠文堂新光社
外部リンク
- フラボンの山野草と高山植物の世界