端末エミュレータ
端末エミュレータ(たんまつエミュレータ)とは、端末として動作するソフトウェアである。端末エミュレータといった場合は、DEC VT100のエミュレーションをするソフトウェアをさすことが多い。別称としてターミナルエミュレータ、また特にグラフィカルユーザインタフェース (GUI) 環境で用いるものを端末ウィンドウと呼ぶことがある。キャラクタユーザインタフェースを提供する。
目次
1 概要
2 エミュレートする端末
3 実際の端末エミュレータ
4 脚注
5 関連項目
概要
端末エミュレータは、専用端末の機能を、パーソナルコンピュータ (PC) やUnixワークステーションなどで代替するためのソフトウェア。通常はキャラクタベースのビデオ端末をエミュレートするが、グラフィック端末(xtermがTektronix 4014をエミュレートする)やプリンタのエミュレーションを行うものもある。
端末エミュレータを動作させるコンピュータがウィンドウシステムを搭載している場合、これを利用して一つのコンピュータ上で複数の端末エミュレータを同時に稼働させることができることが多い。これは殆どの専用端末では実現できない機能である。
TCP/IPを介した端末エミュレータの接続にはSSH、Telnet、rlogin等の機能を用いる。rloginとTelnetは、パスワードなども含めて、すべての通信内容を平文(暗号化されていない状態)で送受信する。極めて限定された用途であれば、それが必ずしも悪いわけではないが、インターネットを介した接続ではあまりに危険な行為である。したがって、近年は、SSHによる接続が一般的である。
なお、2015年現在マイクロソフトはWindows用のSSHを開発中で、正式リリースしていない[1]。したがって、端末エミュレータがそれを持つことが多い。
エミュレートする端末
実際の端末における、画面制御やキーボード制御、プリンタ制御など、入出力処理には統一された規格が存在しない。現在、端末エミュレータを使用する接続先はUnixが多いため、Unixで事実上の標準となっているDEC社のVT100やその上位機種のエミュレータが多い。VT100の端末エミュレータやその機能を「VT100互換」と呼称する。
接続先がメインフレームであれば、IBM 3270、富士通、日立製作所の端末を、接続先がIBM AS/400であればIBM 5250を、エミュレートすることになる。それぞれのメーカーから純正のエミュレータが発売されているが、サードパーティ製もある。メインフレームの端末の多くは、RS-232のような単純なシリアルインターフェースではなく、インテリジェントなものだったが、その後、シリアル接続やイーサネット接続も可能となっている。
多くの端末はキャラクタしか扱えないが、グラフィックを扱うことができるグラフィック端末もある。例えばxtermがエミュレートするTektronix 4014がその一例で、キャラクタとグラフィックのどちらも扱うことができる。日本では、ヤマハのYISもよく知られている。また、コンピュータグラフィックスの黎明期には、多くのメインフレームにオプションとして専用のグラフィック端末が用意されていた。
実際の端末エミュレータ
- X Window System上で動作するもの
xterm(Xの標準的な端末エミュレータ。VT102を拡張した仕様とTektronix 4014)
kterm(xtermを日本語対応としたもの。kはkanjiの意)
rxvt(xtermからTektroエミュレーションなど、機能を削って軽量化)- dtterm (CDE)
GNOME 端末 (GNOME)
Konsole (KDE)- Eterm
- mlterm
- Microsoft Windows上で動作するもの
- Windowsにバンドル
コマンドプロンプト(汎用telnetソフトとして使用可能)
ハイパーターミナル(Hilgraeve Inc.の製品)
- フリーソフトウェア
- Poderosa
- PuTTY
- RLogin
- Tera Term
IBM
パーソナル・コミュニケーションズ (IBM製3270/5250端末のエミュレータ。略称PCOMM)
富士通
WSMGR (富士通製F6680, 3270, 5250エミュレータ)- Kシリーズ端末エミュレータ(PRIMERGY 6000など)
日立製作所
- CommuniNet Version3(日立製作所製端末のエミュレータ)
インターコム
- FALCON(クライアントPC導入型 3270, 5250, 6680, 560 端末エミュレータ)
- FALCON for .NET(サーバー導入型 3270, 5250, 6680, 560 端末エミュレータ)
- FALCON for iPad(iPad導入型 3270, 5250 端末エミュレータ)
キヤノンソフト情報システム(キヤノンソフトウェアの子会社。旧蝶理情報システム)
- TCPLink スタンダード
- DirectLink HIS対応版
- DirectLink DLC対応版
- DirectLink HNALAN対応版
- SingleLink
サイバネットシステム
- Reflection for UNIX and OpenVMS(VTエミュレータ)
- Reflection for IBM 2007(3270, 5250エミュレータ)
NetManage
- RUMBA for Citrix and Terminal Server(3270, 5250, VT, WYSE 50/60, HP/MPEエミュレータ)
- RUMBA Mainframe(3270エミュレータ)
- RUMBA AS/400(5250エミュレータ)
- RUMBA UNIX-HP(VT, HP3000 MPEエミュレータ)
ビーコンIT
- EXTES(F6680, 3270, 5250, 560, Kシリーズ 端末エミュレータ)
- EXTES Xuras(F6680, 3270, 5250, 560, Kシリーズ Webエミュレータ)
- Windowsにバンドル
Cygwin・MSYS上で動作するもの
- mintty
MS-DOS上で動作するもの
MS-Kermit(VT102エミュレーションとカーミットプロトコルによるファイル転送)
hterm (AXやDOS/VでないIBM-PCでも日本語の使用を実現した。)
macOS上で動作するもの
- ターミナル (macOS)
- iTerm
- JTerminal.app
Classic Mac OS上で動作するもの
NCSA Telnet(Telnetとftp)
BetterTelnet(NCSA Telnetを改良したもの)
MacSSH(BetterTelnetをSSH対応としたもの)
脚注
^ Steve Lee [MSFT] (2015年10月19日). “OpenSSH for Windows Update - Windows PowerShell Blog”. Microsoft Corporation. 2015年12月8日閲覧。
関連項目
端末
- Lear Siegler ADM3A
- DEC VT100
- IBM 3270
- IBM 5250
- Lear Siegler ADM3A
通信プロトコル
- rlogin
- SSH
- Telnet