発電




発電(はつでん、英: electricity generation)とは、電気を発生させること[1]




目次






  • 1 概説


  • 2 発電の種類


    • 2.1 発電機による発電


    • 2.2 別のエネルギーを直接電力に変換する発電




  • 3 発電の原理


    • 3.1 電磁誘導


    • 3.2 電気化学反応


    • 3.3 光起電力効果


    • 3.4 ゼーベック効果


    • 3.5 その他




  • 4 各国の電力源


    • 4.1 2008年の主要国の電力源




  • 5 発電する生物


  • 6 脚注


  • 7 関連項目





概説


発電とは、電気を発生させることである。電力以外のエネルギーを電力へ変換することである。


人工的な発電としては、例えば、水力によるもの(水力発電)、風力によるもの(風力発電)、太陽光によるもの(太陽光発電)、地熱によるもの(地熱発電)、火力によるもの(火力発電)、原子力によるもの(原子力発電)などがある。


核となっている装置や原理としては、機械エネルギー[2](運動エネルギー)を電磁誘導を用いて電力に変換するもの(発電機)だけでなく、化学変化のエネルギーを利用したもの(電池)、光起電力効果によるもの(太陽電池によるもの)、ゼーベック効果によるもの(熱電素子によるもの)、圧電素子によるもの、モノとモノをこすることによって生じる静電気を利用するものなど、様々なものがある。


現代では発電は実に様々な場所・場面で行われている。発電所で行われているだけでなく、
近年では各家庭や各会社でさかんに発電されるようになっており(自家発電)、例えばソーラーパネルで発電している家庭も増えている。
そもそも、発電は従来から実に様々な場所・場面で行われている。例えば、夜間にライトをつけて自転車で走る時は、人がペダルを踏む力でダイナモを動かし発電してライトを点灯する場合も多いわけであるし、オートバイや自動車で走行する時はオルタネーターで発電しその電気でエンジンのプラグで火花を発生させ、またバッテリーを充電する。最近実用化されはじめた燃料電池車では燃料電池で発電し電動機を動かし走る。


なお、自然界では積乱雲中での発電により雷が発生するほか、「地球も巨大な発電機である」ともされ、発電された電流によって地磁気が維持されているという[3]。また、動物で発電するものもいる。→#発電する生物



発電の種類


※構想・実験・研究段階であり実用化に至っていないものもある。



発電機による発電


発電機は電磁誘導によって運動エネルギーを電力に変換する装置である。具体的にはコイルに対して磁石を回転させることで電気を発生させる。動力を何から得るかによって以下のように様々な種類がある。




  • 火力発電:燃料の持つ化学エネルギーを燃焼により熱に変換し、さらに運動エネルギーに変換する発電。熱を得る方法、熱から運動を得る方法によりさらに細分される。


    • 汽力発電:熱により水蒸気を作り、蒸気タービンを回す発電。広義には蒸気タービンを用いる発電を総称していう。


    • 内燃力発電:気体の膨張により内燃機関を回す発電。


    • コンバインドサイクル発電:内燃力発電の排熱で汽力発電を行う発電。


    • 廃棄物発電:廃棄物をエネルギー源として行う。




  • 原子力発電:核反応により熱エネルギーを得る発電。運動エネルギーへの変換は、通常は蒸気タービンを用いる。


  • 核融合発電:原子核の融合によってエネルギーを得る発電。


  • 水力発電:水の位置エネルギー及び運動エネルギーによる発電。


    • 揚水発電:汲み上げた水を利用する。


    • マイクロ水力発電:小規模な水力発電。建設費や運用費が安い。




  • 地熱発電:地熱により熱エネルギーを得る発電。


  • 太陽熱発電:太陽光の熱エネルギーによる発電。太陽光を直接電気に変える太陽光発電とは別。


  • 風力発電:風の運動エネルギーによる発電。

    • 陸上風力発電:タービンを陸上に設置する。


    • 洋上風力発電:タービンを洋上に設置する。


    • 浮体式洋上風力発電:タービンを深度のある洋上に浮かせて設置する。


    • 凧型風力発電(英語版):凧(カイト)によって高高度の風を利用する。




  • 波力発電:波の運動エネルギーによる発電。


  • 海流発電:海流の運動エネルギーによる発電。潮流発電ともいう。


  • 潮力発電:潮の干満の位置エネルギーによる発電。潮汐発電ともいう。


  • 炉頂圧発電:高炉の高圧ガスでタービンを回す発電。


  • 冷熱発電:液化天然ガス (LNG) の冷熱を利用し、中間熱媒体を液化、循環させる方法と、気化した高圧ガスで直接タービンを動かす方法がある。主に LNG の受け入れ基地などで用いられる。


  • 海洋温度差発電:海面の温水と深海の冷水の温度差を利用する発電。


  • 人力発電:人間を動力源とする発電。燃料や電池の補給が難しい局面で重宝される。



別のエネルギーを直接電力に変換する発電


電力以外のエネルギーを直接電力に変換する発電には以下のようなものがある。




  • 燃料電池発電:燃料の化学エネルギーを直接電力に変換する発電。部分出力でも発電効率が良い。


  • 太陽光発電:太陽光エネルギーを太陽電池で直接電力に変換する発電。自然エネルギーなので燃料の購入の必要がない。


  • 宇宙太陽光発電:宇宙空間で太陽光発電を行い、それによって得た電力を地上に送る。


  • MHD発電:ファラデーの法則に基づきプラズマなどを用いて発電する。


  • 熱電発電:温泉水と河川水などの温度差を利用して熱電変換素子により発電する。


  • 振動発電:圧電素子と振動板を組み合わせることにより、音や振動のエネルギーを電気エネルギーに変換する発電。



発電の原理



電磁誘導


発電機は前述のように電磁誘導により電力を生む。電磁誘導による発電は、磁力線を導体が横切ることによって起こる現象であり、得られる出力は以下のように表される。


e=−vBlsin⁡θ{displaystyle e=-vBlsin theta ,}{displaystyle e=-vBlsin theta ,}

e は起電力 (V)、v は速度 (m/s)、B は磁束密度 (Wb/m2)、l は横切る導体の長さ (m)、θ は磁力線からの偏角 (rad) である。これは、磁力線を長さ l の導体が速度 v で横切ったときに導体に発生する起電力を求める式である。この式から、電磁誘導によって大きな起電力 e を得るためには、



  1. 磁界を強くする

  2. 速度を上げる

  3. 磁力面積を拡大する


ことが必要であるとわかる。



電気化学反応


電池のうち「化学電池」と呼ばれる種類の電池は電気化学反応により電力を生む。電気化学反応は、2 種以上の活物質の接触によって生じるもので、反応で生じた電極間の電圧を出力として取り出す。この出力は、単純には以下の式のように表される。


e=−ΔGnF{displaystyle e={frac {-Delta G}{n{mathrm {F} }}}}{displaystyle e={frac {-Delta G}{n{mathrm {F} }}}}

e は起電力 (V)、ΔG は反応におけるギブズエネルギー変化、n は反応電子の価数、F はファラデー定数 (C/mol) である。これは、反応に関与する活物質の活量がすべて 1 で平衡状態にあるときの標準電極電位である。



光起電力効果


電池のうち「物理電池」、その中でも「光電池(太陽電池)」と呼ばれる種類の電池は光起電力効果により電力を生む。







ゼーベック効果


電池のうち「物理電池」、その中でも「熱電池」と呼ばれる種類の電池はゼーベック効果により電力を生む。ゼーベック効果は、2種以上の物体の接触点の温度差によって生じるもので、反応によって生じた電極間の電圧を出力として取り出す。2 種の物体を用いた場合のこの出力は、単純には以下の式のように表される。


e=(SB−SA)⋅(T2−T1){displaystyle e=(S_{mathrm {B} }-S_{mathrm {A} })cdot (T_{2}-T_{1})}{displaystyle e=(S_{mathrm {B} }-S_{mathrm {A} })cdot (T_{2}-T_{1})}

e は起電力 (V)、S AS B はそれぞれ物体 A, B のゼーベック係数、T 1T 2 は 2 つの接点の温度 (K) である。



その他



  • 原子力電池のうち実用化されているものは、放射性崩壊により発生する熱をゼーベック効果により電気に変換するものなどで、上記を参照のこと。理論上は放射性崩壊によるエネルギーが直接電子を放出させる「熱イオン変換方式」もあるが実用化はされていない。


  • 静電気に関連する静電誘導、誘電分極、焦電効果、圧電効果などもあるが、起電力の保持時間が極端に短いため専らセンサやスイッチ等の素子として用いられ、発電を目的として用いられることはほとんどない。雷はその過大な電圧と瞬時性から電力源としての利用は疑問視されている。ただ、比較的低電圧の大気電位をコンデンサ(キャパシタ)と併せて電力源として利用する大気電流発電は研究が行われている。


各国の電力源



2015年の全世界の総発電量は24,255TWhであった。これは地球が太陽から 1 年間に受けるエネルギー 1,525,284,000TWh の 0.001 % に相当する。


電力源の内訳の66.3%は化石燃料、23.1%は再生可能エネルギー、10.6% は原子力による。
化石燃料の大半は石炭と天然ガスであり、石油による発電量は総発電量の4.1%である。再生可能エネルギーは水力が16.0%あり大半を占める。水力以外の再生可能エネルギーは全体の7.1%であり石油を超えている。しかし資源量全体では風力よりも太陽光、太陽熱の方が遥かに大きい(「再生可能エネルギー」項目参照)。また太陽光発電による発電量は総発電量の1%であった。数値はIEA/OECDより[4] これらの燃料の中には電力以外に熱源、動力源として消費されるものもあるがここでは電力源のみを考慮している。




発電所のエネルギーフロー




世界の発電量の推移


全世界で2015年に火力、原子力、水力、コージェネレーション・プラント、その他の発電所で消費された総エネルギーは石油換算トンで1,737Mtoe。
これは全世界の一次エネルギー供給量(TPES)13,647Mtoeの12.7%であった。
生産された電力はグロスで 1,735,579 ktoe 相当の電力 (20,185 TWh) であった。
発電効率は 39 %。残りの 61 % の一部 ( 3 %) はコージェネレーションの熱源として利用されたが大半は排出された。
また 289,681 ktoe 相当の電力(発電量の 17 %)は発電所での内部消費と送電ロスで消費され、最終的に消費者へは 1,446,285 ktoe 相当の電力 (16,430TWh) が供給された。
これは発電およびコージェネレーションに投入されたエネルギーの 33 % であった。Key World Energy Statistics 2017 - IEA










































世界の総電力の電力源 2015年
- 石炭 石油 ガス 原子力 水力 風力
太陽光
再生可能エネルギー全体 合計
電力 (TWh/年) 9,538 990 5,543 2,571 3,978 838
247
5,534 24,176
割合 39.4% 4.0% 22.9% 10.6% 16.4% 3.4%
1.0
22.8 100%


2008年の主要国の電力源


以下の表にリストした 30 ヶ国は人口がトップ 20 位か、国内総生産 (GDP) が 20 位以内の国と、参考にサウジアラビアを含めた。CIA World Factbook 2009より


これら 30 ヶ国の合計は対全世界比、人口で 77 %、GDP で 84 %、消費電力で 83 % であり、各指標の 30 ヶ国の平均値は全世界の平均値と近似している。





























































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































電力源の内訳(TWh/年 2008年度)
国名
化石燃料
原子力
順位
再生可能
バイオマス 他
合計
順位
石炭
石油
ガス
小計
順位
水力
地熱
太陽光
太陽熱
風力
潮汐
小計
順位
 バイオ
マス
 廃棄物
 その他
 小計
 順位

全世界
8,263 1,111 4,301 13,675 - 2,731 - 3,288 65 12 0.9 219 0.5 3,584 - 198 69 4 271 - 20,261 -

41% 5.5% 21% 67% - 13% - 16% 0.3% 0.06% 0.004% 1.1% 0.003% 18% - 1.0% 0.3% 0.02% 1.3% - 100% -

中華人民共和国の旗 中国
2,733 23 31 2,788 2 68 8 585 - 0.2 - 13 - 598 1 2.4 - - 2.4 14 3,457 2

インドの旗 インド
569 34 82 685 6 15 12 114 - 0.02 - 14 - 128 6 2.0 - - 2.0 16 830 5

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
2,133 58 911 3,101 1 838 1 282 17 1.6 0.88 56 - 357 4 50 22 0.8 73 1 4,369 1

インドネシアの旗 インドネシア
61 43 25 130 19 - - 12 8.3 - - - - 20 17 - - - - - 149 20

ブラジルの旗 ブラジル
13 18 29 59 23 14 13 370 - - - 0.6 - 370 3 20 - 0.2 20 4 463 9

パキスタンの旗 パキスタン
0.1 32 30 62 22 1.6 16 28 - - - - - 28 14 - - - - - 92 24

バングラデシュの旗 バングラデシュ
0.6 1.7 31 33 27 - - 1.5 - - - - - 1.5 29 - - - - - 35 27

ナイジェリアの旗 ナイジェリア
- 3.1 12 15 28 - - 5.7 - - - - - 5.7 25 - - - - - 21 28

ロシアの旗 ロシア
197 16 495 708 4 163 4 167 0.5 - - 0.01 - 167 5 0.02 2.5 - 2.5 13 1,040 4

日本の旗 日本
288 139 283 711 3 258 3 83 2.8 2.3 - 2.6 - 91 7 15 7.3 - 22 3 1,082 3

メキシコの旗 メキシコ
21 49 131 202 13 9.8 14 39 7.1 0.01 - 0.3 - 47 12 0.8 - - 0.8 17 259 14

フィリピンの旗 フィリピン
16 4.9 20 40 26 - - 9.8 11 0.001 - 0.1 - 21 16 - - - - - 61 26

ベトナムの旗 ベトナム
15 1.6 30 47 25 - - 26 - - - - - 26 15 - - - - - 73 25

エチオピアの旗 エチオピア
- 0.5 - 0.5 29 - - 3.3 0.01 - - - - 3.3 28 - - - - - 3.8 30

エジプトの旗 エジプト
- 26 90 115 20 - - 15 - - - 0.9 - 16 20 - - - - - 131 22

ドイツの旗 ドイツ
291 9.2 88 388 6 148 6 27 0.02 4.4 - 41 - 72 9 20 9.4 - 29 2 637 7

トルコの旗 トルコ
58 7.5 99 164 16 - - 33 0.2 - - 0.85 - 34 13 0.1 0.1 - 0.2 19 198 19

コンゴ民主共和国の旗 コンゴ民主共和国
- 0.02 0.03 0.05 30 - - 7.5 - - - - - 7.5 22 - - - - - 7.5 29

イランの旗 イラン
0.4 36 173 209 11 - - 5.0 - - - 0.2 - 5.2 26 - - - - - 215 17

タイ王国の旗 タイ
32 1.7 102 135 18 - - 7.1 0.002 0.003 - - - 7.1 23 4.8 - - 4.8 10 147 21

フランスの旗 フランス
27 5.8 22 55 24 439 2 68 - 0.04 - 5.7 0.5 75 8 2.1 3.8 - 5.9 9 575 8

イギリスの旗 イギリス
127 6.1 177 310 7 52 10 9.3 - 0.02 - 7.1 - 16 18 8.1 2.9 - 11 5 389 11

イタリアの旗 イタリア
49 31 173 253 9 - - 47 5.5 0.2 - 4.9 - 58 11 4.4 3.3 0.9 8.6 6 319 12

大韓民国の旗 韓国
192 15 81 288 8 151 5 5.6 - 0.3 - 0.4 - 6.3 24 0.5 0.2 0.1 0.7 18 446 10

スペインの旗 スペイン
50 18 122 190 14 59 9 26 - 2.6 0.02 32 - 61 10 2.5 1.6 0.3 4.3 11 314 13

カナダの旗 カナダ
112 9.8 41 162 17 94 7 383 - 0.03 - 3.8 0.03 386 2 8.3 0.2 - 8.5 7 651 6

サウジアラビアの旗 サウジアラビア
- 116 88 204 12 - - - - - - - - - - - - - - - 204 18

台湾の旗 台湾
125 14 46 186 15 41 11 7.8 - 0.004 - 0.6 - 8.4 21 0.5 3.0 - 3.5 12 238 16

オーストラリアの旗 オーストラリア
198 2.8 39 239 10 - - 12 - 0.2 0.004 3.9 - 16 19 2.2 - - 2.2 15 257 15

オランダの旗 オランダ
27 2.1 63 92 21 4.2 15 0.1 - 0.04 - 4.3 - 4.4 27 3.7 2.9 0.1 6.8 8 108 23
国名
石炭
石油
ガス
小計
順位
原子力
順位
水力
地熱
太陽光
太陽熱
風力
潮汐
小計
順位
 バイオ
マス
 廃棄物
 その他
 小計
 順位
合計
順位


発電する生物


生物は細胞膜の性質として膜電位を持つため、すべての生物はわずかながら電気を作っている。しかし一部にはそれを方向をそろえて作り出すことで、より高い電圧を生み出すものがあり、それを持つのが殆どが魚類で占めている[5]


強発電魚

100V以上の発電量を持つ発電魚。



  • デンキウナギ

  • デンキナマズ

  • シビレエイ


弱発電魚

5V前後の微弱な発電量を持つ発電魚。



  • エレファントノーズフィッシュ

  • ジムナーカス

  • ガンギエイ

  • ナイフフィッシュ

  • カラポ

  • アイゲンマニア

  • ブラックゴースト[6]


 発電菌



脚注


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  1. ^ 広辞苑「発電」


  2. ^ ブリタニカ国際大百科事典「発電機」に「機械エネルギー」とある。


  3. ^ 地磁気と地球ダイナモ (PDF) - 数研出版ホームページ内のコラム。


  4. ^ IEA/OECD IEA Statistics/Electricity and Heat by country


  5. ^ 世界の電気魚


  6. ^ ブラックゴースト・熱帯魚カタログ




関連項目



  • 発電機

  • 電力会社

  • 発電所

  • 消費電力

  • エネルギー効率

  • 発電設備の運用





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