カンチレバー










カンチレバー


カンチレバー(英語: cantilever)は、一端が固定端、他端が自由端とされた構造体(特に梁)である[1]




目次






  • 1 概要


    • 1.1 建築におけるカンチレバー


    • 1.2 カンチレバー橋


      • 1.2.1 カンチレバー橋の例






  • 2 カンチレバー型をした機構の例


    • 2.1 走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバー


    • 2.2 カンチレバーブレーキ


    • 2.3 レコード再生用カートリッジ


    • 2.4 自動車用サスペンション


    • 2.5 オートバイ用サスペンション


    • 2.6 バイメタル




  • 3 その他


    • 3.1 鉄道車両




  • 4 脚注


    • 4.1 注釈・出典




  • 5 関連項目





概要


カンチレバーは、キャンティレバー、あるいはこの省略形としてキャンティと呼ばれることもある。梁におけるものが代表的であり、日本語では片持ち梁片持ちばり(かたもちばり)と呼ばれる[1]。水泳プールにある飛び込み板は、片持ち梁構造の代表的な形である。



建築におけるカンチレバー




カウフマン邸


カンチレバー構造を生かした建築物としては、フランク・ロイド・ライト設計の、滝の上に張り出すように建つカウフマン邸(落水荘)などが広く知られる。他にもバルコニーや庇にはカンチレバーが多く使われる。


構造的な特性が異なる二つの部分をまたぐ部材(例えば渡り廊下や二つの建物の間にかかる屋根など)では、中間部で構造的に切断したカンチレバーとすることで、建物同士の間で応力が伝わらないようにする場合もある。この場合、接続部はエキスパンションジョイントで外気や雨水を遮断することもある。これは、地震などの際にそれぞれの建物からの力が集中して破壊されるおそれがあるためである。


鉄筋コンクリート構造の建物などでは、コンクリートのクリープなどにより次第に垂れてくることがある。中にはバルコニーが脱落した事例もあり、構造強度のみならず、適切な防水によって構造体内への雨水の浸入を防ぐなど、慎重な設計と施工が要求される。



カンチレバー橋




カンチレバー橋の原理・実演
写真の真ん中で持ち上げられている人物は、イギリス留学中に研修としてフォース橋の工事を見学していた渡邊嘉一。日本に帰国後、東京石川島造船所などの経営に参加。


  • 構造としてのカンチレバー


カンチレバーを用いた橋梁をカンチレバー橋と呼ぶ。橋脚に対して両側にカンチレバーを設けたbalanced cantileverとすることがある。

  • 工法としてのカンチレバー

長スパンの橋梁建設でも、カンチレバー工法では地上支保工が不要なため、低コストで施工できる[2]


カンチレバー橋の例



  • ケベック橋

  • フォース鉄道橋


  • 朝護孫子寺の開運橋 - 1931年竣工、日本最古のカンチレバー橋。国登録有形文化財。

  • 港大橋

  • 東京ゲートブリッジ



カンチレバー型をした機構の例


さまざまな機器、装置でカンチレバー構造が用いられている。



走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバー





AFMで用いられるカンチレバーのSEM像


走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)においては、カンチレバーは自由端近傍に探針が形成された構造全体を指す言葉として使われる。被測定試料に最も近い位置にある部品で、光学顕微鏡に喩えると対物レンズに相当する。半導体プロセスを用いて作製された小さなカンチレバーが広く用いられ、構成材料や形状の異なるさまざまなカンチレバーが製作されている。構成材料には単結晶シリコンや窒化シリコンが使われる。形状は中抜き三角形薄板や短冊形薄板が一般的である。長さはおおよそ50μmから500μm、厚さはおよそ0.1μmから5μmである。構成材料や形状の差により異なる機械特性(バネ定数、共振周波数、Q値)を示し、バネ定数は0.005N/mから50N/m、共振周波数は5kHzから500kHzの間の特性を示す。


例えば0.5N/mのバネ定数のカンチレバーを測定試料に1nm押し込めば、次式に示すフックの法則より0.5nNの力が測定試料に加わる。
F=−kx{displaystyle F=-kx}F=-kx(F:力、k:バネ定数、x:変位)


一般にアスペクト比の高い、つまり、より尖った探針の方が正確なTopography(表面凹凸像)を得られる一方、先端の強度が低下する。近年では材料強度の高いカーボンナノチューブを探針として用いたカンチレバーも市販されている。



カンチレバーブレーキ



自転車のブレーキ機構の形態の一つで、フレームに取り付けられたレバーをワイヤーで引き上げてブレーキシューをホイールのリムに押し当てる構造となっている。シンプルな構造で泥詰まりが少ないのが特徴で、悪路を走る自転車に向く。



レコード再生用カートリッジ


レコードプレーヤーで、レコードの音溝を電気信号に変換するカートリッジに用いられるカンチレバーは、先端部に音溝に接するスタイラス(針先)を備える。根元に永久磁石(MMカートリッジ)あるいはコイル(MCカートリッジ)などを取り付けて、カンチレバーの振動を電気信号に換える。MMカートリッジでは、カンチレバー部分を交換可能な構造にしてあり、市販されるこれを「交換用レコード針」と呼ぶ。



自動車用サスペンション


1/4楕円リーフスプリングのばね枚数の多いほうを車台に固定し、もう一方を車軸に固定する構造。リーフスプリングが、ばねとサスペンションアームを兼ねるため部品点数が少なく、短い板ばねは軽量でもあるが、車台側の取り付け部に入力が集中する短所もある。



オートバイ用サスペンション



オートバイのスイングアーム式リヤサスペンションの一種として、スイングアームにばねを伸縮させるカンチレバーを設けた形式がある。本来のカンチレバーを設けたスイングアームものは側面から見るとL字型となるが、構造上は片持ち梁ではない三角形の構造のとしたものもカンチレバーと呼ばれる。



バイメタル


バイメタルは温度変化で変形するが、変位を取り出すためにカンチレバー構造で使用される。



その他



鉄道車両




鉄道車両の片持ち式座席の一例(JR東日本E231系電車の例)



  • 鉄道車両の座席のうち、片持ち式座席のことを「カンチレバーシート」と称する場合がある。


脚注


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注釈・出典




  1. ^ ab建築用語研究会編 『建築用語事典』 (改訂25版) 学隆社、1998年4月20日、56頁。ISBN 4-7621-0031-5。 


  2. ^ 工法の特徴 - カンチレバー技術研究会 > 工法の紹介




関連項目


  • はり部材
















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