ジャイロ効果








ジャイロ効果(ジャイロこうか)とは、一般的には、物体が自転運動をすると(自転が高速なほど)姿勢を乱されにくくなる現象を指す。




目次






  • 1 概要


  • 2 回転軸保存性


  • 3 ジャイロモーメント


  • 4 二輪車の安定性


  • 5 航空機において


  • 6 参照・脚注


  • 7 関連項目





概要


学術上は、自転回転する物体(この効果に関連する場合「ジャイロ」と呼ばれる)について次の性質を指す。



  1. 外部からモーメントが加わっていないかぎり自転軸の方向を保つ性質

  2. 自転の角運動量が大きいほど姿勢を変えにくい性質

  3. 外部から自転軸を回すようにモーメントが加えられるとき、モーメント軸および自転軸の両方と直交する軸について振れ回り運動をする性質


一輪車および、自転車やオートバイなどの二輪車では走行時の安定に寄与し、ジャンプ中の空中での姿勢変化にも現れる。ヘリコプターのローターや円盤のこぎり、草刈り機などでもこの効果が顕著に現れる。転がるコインやヨーヨー、独楽などの挙動にも影響が見られる。



回転軸保存性


この性質は角運動量保存の法則(下式)の一環で説明される。(外力のモーメントが加わっていないかぎり)自転軸の方向が変わらないということは、例えば北極星に軸を向けて回転している物体は物体の移動や地球の運動の影響を受けず、常に天空の北極点を向いて回り続けるということである。


モーメントを加えずに回転物体を支えるには、重心を通り、互いに直行する3つ(自転軸を含む)の自由回転軸を与える必要がある。一般に、自転軸に加えて1つ以上の自由回転軸を持ち、振り回りが可能な機構をジャイロスコープという。



dL(t)dt=r×F{displaystyle {dmathbf {L} (t) over {dt}}=mathbf {r} times mathbf {F} }{d{mathbf  {L}}(t) over {dt}}={mathbf  {r}}times {mathbf  {F}}




ジャイロモーメント


振れ回り運動(自転する物体が自転軸と直交する軸について自転軸を振る回転運動)をしている物体には、自転軸と振れ回り軸それぞれに直交する軸のモーメントが働いている。これをジャイロモーメントと呼ぶ。



Ω×L=T{displaystyle {boldsymbol {Omega }}times mathbf {L} =mathbf {T} }{boldsymbol  {Omega }}times {mathbf  {L}}={mathbf  {T}}



Ωは振れ回りの回転速度、Lは自転軸角運動量、Tがジャイロモーメントである。ジャイロモーメントと振れ回り速度が対をなす点に注意(外力モーメントによって単純に自転角速度を増すだけのときにモーメントと釣り合うのは角加速度である)。


この力は転向力(コリオリ力、運動量を旋回させるために要請される力)を角運動量の旋回に拡張したものである(コリオリ力は2ω×pで与えられる)。
ここでは直感的に把握し易いよう、質点の動きについてみたときの原理を述べる。


例として、壁にかけるような単純な形のアナログ時計で、針の先端に大質量の錘が付いたものを考える。(針の回転は連続的であり、針自体は運動に影響しない程度に微小変形する。諸部品の重量は無視できるとする)。正常姿勢で作動する時計を上空から見て時計回りに一定速度で振れ回りさせる(したがって振れ回りの角速度ベクトル及び軸は時計の中心を通り、文字盤の6時を指す方向となる)。


錘の運動は盤面に沿うため、その運動量の水平方向成分に応じてコリオリ力が働く。
針が文字盤の12時から3時へ向かうとき,針についた錘は振回軸から遠ざかる。このときに振れ回り回転速度が維持されるには運動量(ただし盤面に直交する方向の成分である)増加が必要だが実際には果たされない。結果として振回を遅らせる方向の力を生む。針は盤面へ近づく向きに僅かに変形する。
3時から6時へ向かう間は逆に錘が振回り軸へと近づくため余剰となる運動量を吐き出し振れ回りを速める力を生み、針は盤面から遠ざかる方へと変形する。
6時から9時の間は12時→3時と同様に振回を遅らせる力であるが、盤面から遠ざかる方向に変形。
9時から12時の間は3時→6時と同様に振回を速める力で盤面へ近づく方向に変形する。
整理すると9時から3時の間(時計の上半分)では盤へと近づく方向、3時から6時(下半分)では盤から遠ざかる方向の力が針へと加わる。
これは即ち盤中心から9時を向く方向のモーメントの発生を意味する。


この時計の9時方向のモーメントと釣り合う逆方向(3時方向)モーメント T が外部から加わっていることを示すのが前述のベクトル式である。振回運動を維持する限り常に働いている。
外部モーメント T が失われると、自己のモーメントにより新たな振れ回り(この例では振れ回りする掛時計の文字盤の9時方向)が発生し、これは最初の振回(6時方向)を止める向きのモーメントを生み平衡状態に至る結果、振れ回り運動は消失する。従って、ジャイロに外部から自転軸以外の軸についてのモーメント=ジャイロモーメントを与えることは、他の2軸についての振回-直交モーメントの平衡を崩すことに等しい。


また、現実の回転体はかならず自転軸方向の厚みがあるため、遠心力の不均衡によるモーメントも同時に発生する。
これは、自転と振回りそれぞれの周速度が相殺する部分と相和する部分があるためで、
上記のコリオリ力によるモーメントと同じ方向のモーメントとなる。旋回半径が十分大きい場合はモーメントの大きさも同水準となる。



二輪車の安定性


自転車の車輪(だけを車体から外したもの)や落としたコインなどは、静止していればすぐにバランスを失って左右どちらかに倒れるが、転がっていると常に傾いた側にコーナリングしてバランスを保ち倒れない。これは地面などとの相互作用とジャイロ効果による。古くは箍廻しという子供の遊びもあった。


二輪車の安定性については、ジャイロ効果の寄与(ジャイロプリセッション)のほかに、乗員を含めた車体全体の慣性モーメント、ハンドルやキャスタ角、フォークオフセットといったステアリング系の自己操舵作用などあり[1]、ジャイロ効果のみによって説明できるものではない。車輪が小径で軽量であったり、走行速度が小さいときほどジャイロ効果の寄与は小さい。前輪の横にもう一個の同じ車輪を地面と触れないように取り付け、それを正回転させながらでも、逆回転(ジャイロ効果はキャンセルされる)させながらでも、コーナリングに不具合は感じなかったという報告がある[2]


ダートジャンプなどでは空中で車体や前輪をヨー軸方向に回すとジャイロ効果の働きで必ずロール軸にも回転するためバイクを横に倒すことができる。初心者が不用意に空中姿勢を変えようとすると挙動を予測できないため危険がある。



航空機において


航空機の黎明期に比較的多く採用された回転星形エンジンは、エンジンそのものが回転するため顕著なジャイロ効果が発生し、操縦性に癖をもたらしていた。


この問題は回転しなくても充分に冷却できる星形エンジンが開発されたことで解消された。ただし現在の単発プロペラ機でも離陸時の出力の特に大きいときには操縦性への影響はある。



参照・脚注




  1. ^ 古茂田真幸『制御工学』 pp. 179~189


  2. ^ 『ロードバイクの科学』 p. 93



関連項目







  • ジャイロスコープ

  • 慣性計測装置

  • 角速度

  • 遠心力








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