エドワード・ヒンクス





Edward Hincks.jpg


エドワード・ヒンクス（Edward Hincks、1792年8月19日 - 1866年12月3日）は、アイルランドの牧師、東洋学者。ヘンリー・ローリンソン、ジュール・オッペールと並ぶアッシリア学の祖で、楔形文字の初期の解読に大きな役割を果たした。




目次






  • 1 略歴


  • 2 主な業績


  • 3 脚注


  • 4 参考文献





略歴


ヒンクスはアイルランド長老派教会の聖職者であるトーマス・ディクス・ヒンクスの子としてコークに生まれた。ダブリン大学トリニティ・カレッジを1811年に卒業した。1825年にダウン州キリレイの主任牧師(rector)に任命され、没するまでその職にあった[1]。


ヒンクスは王立アイルランド学会の会員であり[2]、主にその機関誌である『Transactions of the Royal Irish Academy』に論文を発表した[1]。



主な業績


はじめヒンクスは解読されて間もないヒエログリフを研究し、ヒエログリフがいかなる場合も母音を表記しないことを明かにしたが[3]、1846年ごろから楔形文字の解読を精力的に行うようになった[1]。


ヒンクスは、（アッカド語）楔形文字が表語文字と音節文字の併用であることを1847年に指摘した。またヒエログリフと同様の限定符が楔形文字にも存在することを明らかにした[4]。1855年には252字の楔形文字の音価を決定でき、ひとつの楔形文字が複数の読み方を持つことも指摘した[5]。


また、楔形文字はもともとセム語派の言語のために作られたのでなく、本来はインド・ヨーロッパ語族の言語のための文字だったのをセム語派の表記に借用したとヒンクスは考えた[6]。楔形文字を最初に作った民族はその後の学説の変化を経て、ヒンクス没後の1869年にオッペールによってシュメール人と名づけられた[7]。


ヒンクスはヴァン湖で発見されたウラルトゥ語碑文を解読した。ただしウラルトゥ語をインド・ヨーロッパ語族と考えていた[8]。



  • “On the Inscriptions at Van”. The Journal of the Royal Asiatic Society of Great Britain and Ireland 9: 387-449. (1847年). JSTOR 25207642. https://archive.org/details/jstor-25207642. 

ヒンクスはまたエラム語楔形文字の解読にも貢献した[9]。



  • “On The First And Second Kinds Of Persepolitan Writing”. The Transactions of the Royal Irish Academy 21: 114-131. (1846年). JSTOR 30079012. https://archive.org/details/onfirstandsecon00hincgoog. 


脚注




  1. ^ abcLanke-Pooke (1891) p.438


  2. ^ History of the Academy, The Royal Irish Academy, https://www.ria.ie/about/history 


  3. ^ Daniels (1996) p.149


  4. ^ 関根(1964) pp.127-130


  5. ^ 関根(1964) p.131


  6. ^ 関根(1964) pp.138-139


  7. ^ 関根(1964) p.140


  8. ^ Daniels (1996) p.147


  9. ^ 関根 (1964) p.147




参考文献



  • 関根正雄 「楔形文字の解読」『古代文字の解読』 関根正雄; 高津春繁、岩波書店、1964年、99-149頁。


  • Daniels, Peter T. (1996). “Methods of Decipherment”. In Peter T. Daniels; William Bright. The World's Writing Systems. Oxford University Press. pp. 141-159. ISBN 0195079930. 


  • Lanke-Pooke, Stanley (1891). “Hincks, Edward, D.D.”. Dictionary of National Biography. 26. pp. 438-439. https://archive.org/stream/dictionarynatio46stepgoog#page/n450/mode/2up. 


  • Alfred Webb, ed (1878). “Hincks, Edward, D.D.”. A Compendium of Irish Biography: comprising sketches of Distinguished Irishmen. Dublin. pp. 251-252. https://archive.org/stream/acompendiumiris00webbgoog#page/n258/mode/2up. 









-

Popular posts from this blog

サソリ

Image
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。 出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。 （ 2019年1月 ） 「 サソリ 」のその他の用法については「サソリ (曖昧さ回避)」をご覧ください。 「 スコーピオン 」と「 スコルピオン 」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「スコーピオン」をご覧ください。 サソリ目 生息年代: 430–0 Ma PreЄ Є O S D C P T J K Pg N シルル紀前期-現世 ダイオウサソリ（ Pandinus Imperator ） 分類 界 : 動物界 Animalia 門 : 節足動物門 Arthropoda 亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata 綱 : クモガタ綱 Arachnida 目 : サソリ目 Scorpiones 学名 Scorpiones C. L. Koch, 1837 英名 Scorpion 上科 Pseudochactoidea キョクトウサソリ上科 Buthoidea Chaeriloidea Chactoidea Iuroidea Scorpionoidea サソリ （ サソリ類 、 蠍 、 蝎 、 scorpion ）は、鋏角亜門・クモガタ綱の サソリ目 （ Scorpiones ）に属する節足動物の総称である。体の前端に鋏型の触肢、後端に毒針を有する捕食者である。 1700種以上を含め、最古の化石記録は4億3千万年前のシルル紀まで遡る。有毒生物として広く知られるが、人間の命にかかわる毒を持つものはごく一部の種類に過ぎない。 目次 1 形態 1.1 前体 1.2 後体 1.2.1 中体 1.2.2 終体 2 雌雄 3 生態 3.1 天敵 3.2 生殖 4 分布 5 毒 6 蛍光現象 7 分類
Read more

広島県道265号伴広島線

Image
一般県道 広島県道265号伴広島線 路線延長 km 起点 広島県広島市安佐南区伴東7丁目 終点 広島県広島市中区榎町 接続する 主な道路 （記法） 広島県道38号広島豊平線 広島県道71号広島湯来線 山陽自動車道五日市IC 国道183号（ 国道261号重複） ■テンプレート（■ノート ■使い方） ■PJ道路 広島県道265号伴広島線 （ひろしまけんどう265ごう ともひろしません）は広島県広島市安佐南区から広島県広島市中区を結ぶ一般県道である。 目次 1 路線データ 2 通過する自治体 3 見どころ 4 接続道路 4.1 本線 4.2 旧道 5 別名 6 関連項目 路線データ 本線 起点：広島市安佐南区伴東7丁目・大原下橋南詰交差点（広島県道38号広島豊平線（本線・旧道）交点） 終点：広島市中区榎町・十日市交差点（国道183号（国道261号重用）交点） 総延長： 旧道 起点：広島市安佐南区伴東4丁目・新細坂交差点（広島県道38号広島豊平線交点） 終点：広島市安佐南区伴中央4丁目・寺組橋(南)交差点（広島県道265号伴広島線（本線）交点） 総延長： 通過する自治体 広島県 広島市（安佐南区、佐伯区、西区、中区） 見どころ 広島高速交通広島新交通1号線（アストラムライン） 広島広域公園 広島広域公園陸上競技場（広島ビッグアーチ） 己斐峠 己斐橋（太田川放水路） 天満橋（天満川） 接続道路 本線 広島県道38号広島豊平線（本線・旧道）（広島市安佐南区伴東7丁目・大原下橋南詰交差点〔起点〕） 広島県道71号広島湯来線（本線）（広島市安佐南区伴中央2丁目・伴交番入口交差点 - 広島市安佐南区伴中央4丁目・寺組橋(南)交差点間で重用） 広島県道71号広島湯来線（旧道）（広島県道265号伴広島線（旧道）重用）（広島市安佐南区伴中央4丁目・寺組橋(南)交差点） 広島県道71号広島湯来線（広島市安佐南区伴中央4丁目・寺組橋(南)交差点 - 広島市佐伯区五日市町石内・五月が丘(南)交差点間で重用）
Read more

Setup Asymptote in Texstudio

Image
0 Good time of the day! I am trying to compile the following file: documentclass[12pt]{article} usepackage[inline]{asymptote} begin{document} Here is a venn diagram produced with Asymptote, drawn to width 4cm: defA{A} defB{V{B}} begin{figure} begin{center} begin{asy} size(4cm,0); pen colour1=red; pen colour2=green; pair z0=(0,0); pair z1=(-1,0); pair z2=(1,0); real r=1.5; path c1=circle(z1,r); path c2=circle(z2,r); fill(c1,colour1); fill(c2,colour2); picture intersection=new picture; fill(intersection,c1,colour1+colour2); clip(intersection,c2); add(intersection); draw(c1); draw(c2); //draw("$A$",box,z1)
Read more