オーク (トールキン)











モルドールのオーク


オークOrcまたはOrk)はJ・R・R・トールキンの作品世界中つ国に住む、人間とは異なる種族。『指輪物語』や『シルマリルの物語』では常に、モルゴス、サウロン、サルマンのような悪に仕える兵士として、ときには副官として登場する。『ホビットの冒険』では「何とも例えようのないオーク鬼(p206 瀬田貞二訳)」という記述がある[注釈 1]ものの、主にゴブリンとして記述されており、かれら自身の王をかつぎ、独立した存在のように振舞っている。




目次






  • 1 概要


  • 2 発音


  • 3 生態


  • 4 スペル


  • 5 起源


  • 6 注釈


  • 7 関連項目





概要


エルフ族がモルゴスによって捕らえられ、拷問や日の当たらない牢に閉じ込められるなどして堕落してしまった姿であると言われている。そのため、苦痛、憎悪が影響し、美しかった白肌は不気味な灰色になり、鉤爪が生え、醜い姿となった。また長い間、苦痛にさらされていたせいか背丈が低くなっていて、日光を嫌う。総じて知能も高く愚かではないが、鈍感で下劣な生物として描写されている。かれらは言語をくずして使い、手先が器用で、歯車や機械に興味を持ち、やっとこやつるはしや斧などの他「人をたくさん殺す機械」以外は何も生み出さず、破壊するだけの存在である。ただ繁殖力が非常に高く、『ホビットの冒険』終盤の五軍の戦いで一度絶滅しかけたものの立ち直っている。ちなみに、作中で女性のオーク(ゴブリン)は登場していないが、子供は『ホビットの冒険』でナレーションで、ビルボがゴクリと出会う4~5時間前にゴブリンの子供がゴクリに捕まって食われた説明がされている。


なお、トールキンの書簡によれば、「女オークは存在する」とのことである。知識や進歩に関しても、本来はエルフや人間などと同等だが憎悪や嫉妬、絶望に苛まれるがゆえに建設的な連携を取りにくいだけである。人間とのハーフである半オークも確認されている。


ピーター・ジャクソン監督による実写映画作品に登場するアゾグとその息子ボルグなど、何人かの大きなオークはオーク鬼がモチーフになっているのではという意見もある[誰?]



発音


クウェンヤではオークをウルコurko)、複数形ウルクイurqui)と呼ぶ。この語は「ボギー(おばけ)」、または、「ブギーマン(悪い子をさらう鬼)」を意味し、オークが怖ろしいものであることを表現している。


シンダール語ではオークをオルフorch)、複数形イルフyrch)あるいはグラムホス(glamhoth、騒々しいやつらの意)と呼ぶ。


暗黒語でのオークの同義語は、ウルク=ハイの語に見られるウルクUruk)である。なおウルクは品種改良によってできた最高種、という説がある。同じ作業により、水泳に長じた「曲がり足の手長オーク」と呼ばれる者が誕生している。



生態


劣等種に狼乗り(なお通常のオーク以上のものは狼に乗れないらしい)、蛆、スナガ(暗黒語で奴隷)、トラッカー、ランナーと呼ばれる者がいる。健部伸明編『幻獣大全』では、繁殖力の強さと描写の近似性から、トールキンの『サンタクロースからの手紙』に登場するゴブリンは、これではないかとする[注釈 2]。魔狼族「ワーグ」とは、互いに契約の上で騎乗を許されており、ワーグとオークは暗黒語や互いの言語で会話することが可能である。


食事に関してはそれなりにこだわりがあるらしく、『ホビットの冒険』では首領の大ゴブリンが「わざわざ地底湖に魚を取りに行かせることがあった」という説明がある。
オーク自身の肉の味は人によって評価が違い、『ホビットの冒険』ではゴクリ初登場の所で「ゴクリは(魚だけではなく)ゴブリンの肉もうまいと思っていました」とナレーションに説明があるが、映画『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』によると、キリス・ウンゴルの洞窟を住処とするシェロブが普段はオークを獲物にしていることについてサウロン配下のオークは「オークの肉は不味いが、他に食べる物が無い」と語っている。


しかし、後者の方でもあまり美味しい食事にありつけない状況下ではこの限りではないようで、映画『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』ではメリーとピピンを捕まえてアイゼンガルドに向かっていたサルマン配下のオークとウルク=ハイが休息時に「腹が減った。ここ数日腐ったパンしか食ってねえ」と不満を露わにしたのをきっかけに、生け捕りにすべきメリーとピピンを殺さずに「要らない」という理由で2人の足を食おうとの提案がされるが、最後には1人のオークがウルク=ハイに首を刎ねられ、「メニューに肉が戻るぞ!」の掛け声の元その場で貪り食われた。



スペル


トールキンは『指輪物語』以後の著述では、Orkと綴るのを好んだ。これは明らかに、オーク的なを意味するorcishの「C」が、「S」として発音されてしまうのを避けるためである。オークの綴りがOrkであった場合、オーク的を意味する単語の綴りはorkishとなり、発音に誤解の余地がなくなる。



起源


トールキンはオークという語を、ベーオウルフに登場する不死者の怪物グレンデルの種族名、「オーク=ナス」(Orc-néas)から採用した。「オーク=ナス」とは「オルクスの死体」を意味する。詳しい語源と他作品でのオークについてはオーク (架空の生物)を参照。


もし読者がトールキンの著作を、「西境の赤表紙本」の翻訳とみなすならば、この語はクウェンヤやシンダール語からの、西方語への翻訳されたもの、と考えることができるだろう。


トールキンは『ホビットの冒険』に登場するゴブリンについて、かれが愛好した物語、ジョージ・マクドナルドの『王女さまとゴブリン』の影響を強く受けた、と述べている。『幻獣大全』によれば、ライマン・フランク・ボームの『サンタクロースの冒険』に登場する、オーグワが影響を与えている可能性を示唆している。


古い英語などの文献にorcと言う単語が見られており、これが語源だと言われているがはっきりとはしていない。


『幻獣大全』によれば、手先が器用で、美しいもの以外なら何でも造る、鉱山に洞穴を掘る、性格が邪悪、という特徴から、同様の特徴を持つ北欧神話に登場するスヴァルトアールヴ(ドワーフ)がモデルではないか、とする[注釈 3]



注釈





  1. ^ これ以外ではトロルの岩屋で手に入れた剣の「オルクリスト(Orcrist)」(「ゴブリン退治」の意味だと説明がある)などにオークの名前が確認できる。なお、トーリンの通り名のオーケンシールドの綴りは「Oakenshield」で種族のオークではなく樹木(樫・楢)の方。


  2. ^ 健部伸明『幻獣大全』 新紀元社 p373


  3. ^ 健部篇『幻獣大全』p367。この書では「蛆から生まれた」という北欧神話でのドヴェルグ起源説を根拠とし、オークへこれを当て込んだ可能性を示唆している。なお、中つ国にはドワーフ自体は『ホビットの冒険』の頃からゴブリン(オーク)と別種族で登場している。




関連項目







  • エルフ (トールキン)

  • ウルク=ハイ








Popular posts from this blog

サソリ

広島県道265号伴広島線

Setup Asymptote in Texstudio