皮革










製品に加工する直前の皮革と、代表的な工具


皮革(ひかく)とは、動物の皮膚を生のまま、または、なめしてあるものを指す。


20世紀以降では人工的に作られた人造皮革(人工皮革と合成皮革、商標名「クラリーノ」「エクセーヌ」など)があり、それらを含む場合もあるが、その場合動物の皮膚をなめしたものを人工皮革と区別するため、天然皮革(てんねんひかく)や本革(ほんがわ)ということもある。ヨーロッパなどでは基準があり明確に区別されているが、日本では基準が浸透しておらず、曖昧になっている傾向がある。


皮革の中でも、元々生えていた体毛まで利用するものは毛皮という。




目次






  • 1 皮と革


  • 2 なめし


  • 3 原材料と種類


    • 3.1 哺乳類


      • 3.1.1


      • 3.1.2


      • 3.1.3


      • 3.1.4


      • 3.1.5 山羊


      • 3.1.6 カンガルー


      • 3.1.7 その他の哺乳類




    • 3.2 爬虫類


    • 3.3 鳥類


    • 3.4 魚類




  • 4 皮革の加工


  • 5 歴史


  • 6 皮革製品


  • 7 製品の保存方法(手入れ)


  • 8 合成皮革


  • 9 関連項目


  • 10 脚注


  • 11 外部リンク





皮と革


動物の皮膚をそのまま剥ぎ、製品として使用したものを(かわ・ひ)といい、動物の皮膚の毛を除去しなめしてあるものを(かわ・かく)という。しかし、後者も「皮」と表示する場合もある。これは、後者の文字が教育漢字の第6学年配当となっていて、第5学年以下では教えなかったことに由来する。


英語

英語で「皮革」を意味する用語は、ハイド (皮革)(英語版)(Hide)もしくはスキン(skin)である。この用語の適用範囲として、生皮(英語版)、なめし革(Leather)、さらに拡大解釈して毛皮(Fur)も含まれる。



なめし



動物の皮は、一般にそのままだと固くなったり腐敗してしまったりする。これらを防ぎ、皮を柔らかくして耐久性や可塑性を加え、皮革として利用するために必要な作業がなめしである。なめし加工を施すことにより、単に動物の皮膚だった“皮”から、製品に使われる”革”へと変化する。


なめしの工程では、腐敗しやすい動物の脂を除き、たんぱく質(主にコラーゲン繊維)を変性させる。また、柔らかくするために主に合成の脂(リンスと同じ)を再度入れる(加脂)。


原始時代、人類は自らの唾液で皮をなめしていた。古代になり、植物に含まれるタンニンを利用してなめす方法が開発され(タンニンなめし)長らく使用されてきたが、現在では化学薬品で処理されることが多い。主にはクロムなめし剤(塩基性硫酸クロム)が使用されるが、その作用機序は皮のタンパク質とクロムの錯体を作って、耐熱性等の性能が向上し、革となる。さらに、タンニンなめし剤とクロムなめし剤などの金属化合物を組み合わせたコンビネーションなめしという方法も用いられてきている。比較的安価なクロムなめしが主流だったが、昨今の環境問題からタンニンなめしが見直されている。



タンニンなめし

切り口(コバ)が茶褐色、型崩れしにくく丈夫、染色しやすい(染料の吸収がよい)、吸湿性に富む、使い込むほど艶や馴染みがでる、などがある。反面、タンニンでなめす場合、タンニンを革の中心部分に浸透させるために、タンニン濃度を徐々に上げる必要がある(濃度が高いと表面にだけタンニンが結合し、後で浸透しなくなる)。よって工程数が多くなり、30以上の工程を踏まえる必要があり、高コストになる。よく皮革製品で「飴色になる」と表現されるが、それはこのタンニンなめしによるものである。手縫いを用いるような鞄等にはタンニンなめしの材料が用いられる。

クロムなめし(通称:Wet-Blue(ウェットブルー))

切り口が青白色、伸縮性が良い、柔軟でソフト感がある、吸水性が低く水をはじきやすい、耐久力がある、比較的熱に強い、などがある。衣料用にはクロムなめしが用いられる事がほとんど。タンニンなめしに比べて工程の省力化からコストを抑えられる反面、なめし工程上で使うクロムが焼却により化学反応(酸化)を起こし、人体に有害な6価クロムに変化するので処分の際は注意が必要である。

コンビネーションなめし

タンニンなめしとクロムなめしを組み合わせたもの。


アルデヒドなめし(通称:Wet-White(ウェットホワイト))

環境問題からタンニンなめしの革と同様にクロム(メタル)フリーの革として普及してきている。クロムなめしに比べてややコストが高めになる。



原材料と種類


皮革の材料としては以下の動物が挙げられる。製品種類とともに記述する。



哺乳類









一般的な革であり、革靴に使用される革としては最大数量。一般に成牛の背中から脇までの皮を使用する。カウ・ブル等の分類があるが、基本的に全て肉牛の皮である。表面にエンボス加工を施すことにより、オーストリッチ・ワニ・ヘビなどの模造をすることも可能である。外見上の特徴は特に無い。



  • ハラコ - 胎児から生後間もない仔牛の革。出産前に死んだ雌牛の腹にいた仔牛(腹子)から採れることが多い。ほとんど出回らない。現在は10kgまでの子牛を含めることもある。

  • ベビーカーフ - タンニンなめしで加工された、胎児 - 生後3ヶ月までの仔牛の革。

  • カーフ - 生後約6ヶ月までの仔牛からできる革。仔牛なので傷が少なく、しなやかで、高級品である。

  • キップ - 生後6ヶ月 - 2年程度までの牛からできる革。ヨーロッパ原皮にはキップという言葉はない。小型のコブ牛をキップに含めることも多い。

  • ステアハイド - 生後2年以上経過した去勢された雄牛からできる、最も一般的な革。

  • カウハイド - 出産経験があり、生後2年程度経過している雌牛からできる革。一般的に、ステアハイドより薄く、柔らかい。

  • ブル - 去勢されずに育ち、生後3年以上経過した雄牛からできる革。分厚く、強度がある。

  • 内地物 - 国内で消費された牛からできる内地原皮を加工した革。一毛和牛(肉牛)、ホルスタイン(乳牛、去勢牛)などがある。

  • ブライドルレザー - カウハイドに数ヶ月かけてタンニンなめしを施し、蝋を染み込ませた革。頑丈で、表面には白い蝋の粉(ブルーム)が浮き出る。

  • Italian Vegetable Tanned Leather Minerva Box(イタリアン・ベジタブル・タンド・レザー・ミネルバ・ボックス) - ステア牛を原皮に、バケッタ製法と呼ばれる手なめし・手染めで仕上げた高級素材。

  • Italian Natural Tanned Leather Buttero(イタリアンナチュラルタンドレザー・ブッテーロ) - 伝統的な職人の技術による植物性フルタンニンなめしを施した高級革。

  • Italian Oiled Leather(イタリアン・オイルド・レザー) - スムースなオイルドレザー素材。





非常にやわらかい革を作ることも半透明にもできる。表皮の下には脂肪層があるので、牛革のように厚い革にはできないのが特徴。摩耗に強いので、ランドセルや靴の内革などに使用される。三角形にそろった毛穴は一目で豚革と判別でき、価値が低いとして扱われてきたが、近年は海外ブランドでもデザイン性を生かした衣料製品などに使われるようになった。特に、柔らかくなめしてガーメント(衣料革)に使われたり、硬く半透明にして(生皮)ランプシェードなど工作用に使われることもある。日本から輸出される数少ない革でもある。





臀部以外の比較的柔らかい部分は靴の内革に多く使用。




  • コードバン(cordovan) - 本来は、スペインのコルドバ産の山羊皮である。それに似せた馬の臀部の分厚い皮も、コードバンと呼ばれ、高級ランドセルのかぶせ部分や名刺入れ等に使用されている。欧米で沼地などの狩猟でよく使用される狩猟靴にしばしば採用される。オイルドレザーのものもある。


  • ポニー(pony) - 同じ面積の牛革と比較すると約半分の重量しかなく、柔らかく、軽い革。


  • ホースフロント(horse front) - 首の部分に当たる革。キメ細かいが、摩擦抵抗が弱い。






  • シープスキン - 柔らかいのが特徴。脂肪の穴が多いので、なめしても革に空隙(くうげき)が多く残り、断熱効果が高いので、防寒着にも多く使用される。

  • ムートン - 羊の毛がそのまま残っている毛皮。第二次世界大戦時、フライトジャケットの極寒冷地用に使用され、防寒性が非常に高い。



山羊


  • ゴートレザー - 羊皮より充実した繊維組織を持ち、強くやや硬い。銀面は特有の凹凸をもち耐摩耗性に優れている。ヤンピーとも呼ばれる。


カンガルー


近年特に使用が増えた皮革である。軽くて丈夫なのが特徴で、サッカー選手や陸上選手のスパイクシューズやオートバイ用ライディングスーツ(革ツナギ)などにも使用される。世界的に肉牛の需要が減少し、副産物としての牛革が減少するに伴い、徐々に採用された。基本部位は肉牛と同じく背中から脇であるが、カンガルーは二足歩行するため、革の形状も三角形に近い形を成しており、製造過程で若干の技術的困難が見られた。外見上は牛革と大差なく、見分けはつきにくい。



その他の哺乳類




  • ゾウ - 傷に強く頑丈な革である。ワシントン条約で輸入が規制されている。


  • ウサギ - 毛皮。


  • シカ - 繊維は細いが、からみ合いが粗く、非常に柔らかい革である。鹿革では、印伝が有名で、特殊ななめしをしたうえに、漆で模様をつけたものである。





  • クマ - 毛皮。かつて革としても使われていた。


  • ネコ - 腹側は三味線に用いられる。


  • イヌ - 毛皮。


  • トラ - 毛皮。


  • ラッコ - 毛皮。


  • ニホンカモシカ - 毛皮。


  • オオカミ - 毛皮。


  • ヒョウ - 毛皮。


  • タヌキ - 毛皮。


  • キツネ - 毛皮。


  • イタチ - 毛皮。ミンク、テンなど。


  • センザンコウ - ひし形模様の鱗跡が美しい革。

  • オットセイ


  • アザラシ - 厚みがあり丈夫。革の表面の特徴は頭部から尾部に向け、独特の波状の畝(ウネ)模様がある。


  • ラクダ - 砂漠地帯の昼夜の激しい温度差により、ラクダの革は一般的に厚く頑丈になる。但し1頭から取れる皮のうち皮革素材として使用できる面積は少ないと言われる。生皮を透明に加工したラクダのランプが有名。


  • トナカイ - ダイヤ柄の型押し模様が施された高級皮革のロシアンカーフ(Russian calf)が有名。

  • カピバラ


  • ヒト - 人間の皮膚は比較的大きいものの、他の動物に比べ柔弱で実用性は劣るが、宗教、シャーマニズム、死後に肉体の一部を残す希望、猟奇趣味など、主に精神的理由から人皮は世界各所で用いられてきた(人皮装丁本、エド・ゲイン、アイスランドのネクロパンツ[1])。



爬虫類




  • ワニ - 数ある皮革の中でも最高級とされる。クロコダイル種とアリゲーター種がある。最上級のクロコダイル(東南アジア産のイリエワニ)や、アリゲーター、カイマン等が有名。鱗の模様によって玉符(柔らかめ)と竹符(硬め)がある。


  • ヘビ - 美しい鱗が特徴だが、あまり丈夫ではない。ニシキヘビが有名。パイソン。


  • トカゲ - 丸斑模様のリング縞斑のオーバルなど様々なものがあり、ジャワのリザードが有名。また、リングマークトカゲが最も高級。



鳥類




  • ダチョウ - 牛革より4倍ほど丈夫で長持ちするとされている。羽毛を抜いた跡のクイルマーク(表面のボツボツした多数の突起)が特徴。ワニ革についで高価な素材。オーストリッチ。


  • エミュー - オーストリッチに似ているが突起が小さいのが特徴。



魚類




  • サメ - ナイフで突き刺しても貫通しないと言われるほど頑丈で、水に強い性質がある。鮫肌と言われるウロコ部分は加工で除去される。ワサビ用おろし器にも用いられる。シャークスキン。


  • エイ - 鮫の近縁であるため皮膚もサメに近く、皮革として丈夫で水に強いため、エイの皮も鮫皮と呼ばれることがある。炭酸カルシウムでできた、ラインストーンのような細かい突起が、独特の模様を成す。ガルーシャともいう。光を感知する第三の目の部分はスティングレイハートと呼ばれる。また、日本刀の柄の部分やおろし器としても利用される。表面を削る加工は非常に高度な技術が必要なためオーストリッチについで高価になる。


  • サケ - 北海道の特産品としてわずかに流通する程度である。


  • コイ - 模様は美しいが、革の大きさが小さいため実用性は低い。


  • ヌタウナギ - 現在は韓国の特産品となっていて滑らかでやわらかく、革特有の臭いも無いので注目されている。イールスキン。



皮革の加工


製革の作業には、大きく分けて準備工程、鞣し工程、再鞣・染色・加脂工程、仕上げ工程がある。


表皮を銀(吟)と称し、薄手の革を作るために銀面がついた層(銀付き革)と内部の繊維層(床(とこ)革)に割る(スプリット)、なめし前の工程を施す場合がある。


製品革の種類



  • エナメル - 革にエナメルペイントを施すことで光沢と耐水性を持たせたもの。ドレスシューズ(社交の場などで着用される装飾性・デザイン性の高い靴)などに多用される。最近はフィルムを貼ることも多い。

  • スエード - 革の裏側(肉面)をやすり等で起毛させたもの。柔らかく、ビロード状に仕上がる。床革を使用する場合もある。

  • ヌバック - 革の表側(銀面)をやすり等で起毛させたもの。デザイン目的でドレスシューズにも用いるほか、傷を目立たせないという目的で登山靴にも用いられる。

  • 型押し - 牛革などにプレスで模様をつけたもの。模様は、ワニ革を真似た模様や格子模様、篭目(バスケットウェーブ)など様々ある。

  • クラッキング - 皮革にあえてひび割れを施したもの。カジュアルに多いダメージ加工。

  • 色づけ - 色むらを出すために、色づけする場合もある。靴を成型した後に、脱色した革に色づけする場合もある。

  • 製品染め - 靴やカバンを縫製した後、染色したもの。こなれ感と微妙な色ムラで使いこなされた風合いが出る。

  • オイル、ワックス仕上げ - 本来は防水効果のためであったが、プルアップや焦がしなどのファッション効果を求めて施されることが多い。

  • カゼイン仕上げ - カゼインを主体にして、グレージングやポリッシングで艶を出したもの。

  • はっ水、防水加工 - フッ素やシリコーン、防水用加脂剤等を使用して機能を高めたもの。


  • キュイルボイル(英語版)(英名:ボイルドレザー、「茹でた革」の意。)- さまざまなやり方が残っているが、その多くに沸騰させるプロセスがある訳でなく、共通するのは冷たろうが熱かろうが水に浸す事である。



歴史







皮革製品




サッカー・ボール





 

皮革製パッキンが多用されるフラッシュバルブとフラッシュバルブから給水される水洗便器



皮革は、一般に衣料品や装身具などに利用されることが多い。とりわけ、衣服(コート、パンツ、ライディングウェア、消防士の防火服、溶接作業服、第二次世界大戦中までのフライトジャケットなど飛行服や潜水艦乗組員、戦車兵の制服など)、革靴、鞄、ベルト、サスペンダー、椅子の表張りなど、耐摩擦性、耐火性、引っ張り強度などの耐久性が求められるものに多く使われる。獣肉食の禁忌のために皮革の供給量が少なく、衣服に使うことが少なかった日本でも、火事装束には鹿革が多く用いられた。馬具や球技用の球、野球のグラブ、自転車のサドルなどのスポーツ用品にも多く用いられる。


高価なスポーツカーや高級車では、シートやダッシュボードなどの内装材が総皮革製のものが、人造皮革であるエクセーヌ(アルカンターラ)が普及した現在においても時折見受けられる。手触りが良いために比較的普及価格帯に近い自動車でも、ステアリングやシフトノブには皮革巻きの物が用いられる場合がある。オートバイのシートにも用いられることがある。


かつては鎧や兜、楯など防具にも多く使用された。剣や刀の柄にも滑り止めの為に皮革製の紐が巻きつけられ、野球のバットをはじめとするスポーツ用品の柄や、オートバイのハンドルバーグリップにも皮革が滑り止めとして用いられる事があった。小銃や散弾銃の負い紐(スリング)や銃床の頬当て(チークピース)、拳銃のホルスター等の軍需品にも皮革は広く用いられた。合成ゴムが普及する以前は、気密性が要求される手動ポンプ(ポータブルストーブやランタンのエアポンプなど)や、空気銃等のピストンのパッキン(ポンプカップ)、水道用パッキンといった工業製品にも皮革が用いられた。


牛革による皮革は特に水洗式トイレのパッキンとしては重要な役割を果たしており、水洗便器用洗浄弁であるフラッシュバルブの心臓部の部品であるピストンバルブ部ワン皮パッキンに皮革が用いられ、水を流す度に高圧で往復運動するピストンバルブが故障すると水が出なくなったり、あるいは水が止まらなくなり悪影響を及ぼす。革パッキンであれば、摩擦抵抗が小さい為、ピストン運動に強く、万一傷が出来て漏れ出してきてもある程度繊維が傷を埋めていく働きをするので、ゴムパッキンのように即座に交換しなければ全く使いものにならないということはなく水洗式トイレのパッキンとしては、革製のパッキンである事がとりわけ重要である。皮革の繊維が便器の洗浄水に混じって出てくるとパッキン交換のサインともされている。


サメの皮のワサビおろし器(サメの表皮の特性を利用)、ビリヤードのキュー先端に取り付けるティップ(革が持つ弾力性と緩衝性を利用)など、皮の特性をうまく利用した製品も多い。太鼓や三味線、三線などの楽器にも利用される。


一般の皮革製品は、ほとんど何らかの皮革用塗料(ワックスも含め)が塗装してあり、なめしの時に染色したり、塗装の時にスプレー染色するなど、染料や顔料で着色してある。



製品の保存方法(手入れ)


皮革は、長期間放置すると硬化する傾向がある。硬化すると、製品としての美しさや機能性が損なわれるのみならず、ひび割れて使用できなくなるおそれがある。そこで、革の柔らかさを維持するため、保革油(保革剤)を塗ることがある。保革用の塗り物には様々あるが、製品に適した塗り物を用いないと、染みや劣化の原因ともなるので、注意が必要。保革油を塗る前に汚れを落とさないと、染みや劣化の原因となることもあるので、ブラシや布でよく汚れを落としてから塗る。


スエードやヌバックなど起毛革には、専用の洗浄剤やクリーナー、スエードブラシを用いる。スエードブラシには、細い真鍮の針金が使われていて、起毛革を毛羽立たせる効果がある。ただし、起毛革以外に使うと傷の原因となる。


また、高湿度や汚れによって、カビが発生することがある。皮革の製造過程でカビの原因となる有機物は取り除かれるので、主なカビの原因は製品になった後に付着した汚れである。従って、表面をきれいにすることが保存性を高めるのに効果がある。多くの製品には塗料が塗られているので、汚れ落としのためにベンジンなどの有機溶剤を使用すると、その塗膜が損傷することがある。革の構成要素であるコラーゲンはタンパク質の一種であり、熱で変性して強度や柔軟性を失うので、濡れた皮革製品を乾かす目的で火の近くに置くのは避けた方がいい。


このように、天然皮革は手入れが大変であるにもかかわらず、使えば使うほど馴染んできて美しくなることから、現在でも合成皮革に完全に取って代わられることはない。


一部の工業製品のエアポンプに現在も用いられている皮革製ポンプカップは、ある程度の油分が浸透していないとシリンダーとの密着性が低下して気密漏れを起こしてしまうため、使用前にはミシン油などの油を必ず注油しなければならない手間がある反面、合成ゴムに見られる揮発油などによる膨潤や経年劣化による硬化が起こりにくく、摩擦による磨滅や断裂が起きるまでは繰り返し使用可能な耐久性がある為、趣味者の間では近代的なゴム製ポンプカップよりも皮革製が好まれる場合もある。



合成皮革



合成皮革(ごうせいひかく)、フェイクレザーとは、基布に樹脂等を付着させて、天然皮革類似の風合いとしたものをいう。天然皮革と異なり、水に濡れたりしても手入れが簡便であり、安価で品質も均一であることなどから普及している。


なお、広義の合成皮革は、狭義の合成皮革と人工皮革とに分類される。


ものによるが、天然皮革に比して劣化が早い傾向があり、天然皮革の靴や服のように自分の体に合ってくるということは少ない。例えば、ポリウレタン製のフェイクレザーなどは、使用状況、保管方法等にも依るが、約5年程度で劣化し使えなくなることが多い。


化学繊維で毛皮を模したものをフェイクファー、エコファーと呼ぶのに関連して、エコレザーが合成皮革のことだと勘違いされることがあるが、エコレザーは天然皮革である[2]。オーガニックコットンなどと似たようなもので、環境に配慮して製品化された天然皮革をエコレザーと呼ぶ。



関連項目



  • ガラス革

  • シール (工学)


  • 弾左衛門(穢多・非人身分の頭領、江戸期〜明治期までの皮産業を独占した)


  • 河原者、かわた:皮産業に関わった者たちの別称


  • 羊皮紙:獣皮加工品だが工法の違いから皮革とは区別される。


  • ウォルソール:皮革博物館がある


植物等を使った革(ヴィーガン向け)、暖皮


  • ツリガネダケ(アマドゥ (キノコ))、アイカワタケ、en:Phellinus ellipsoideus(MuSkin)、パイナップルの葉(Piñatex)


脚注





  1. ^ http://karapaia.livedoor.biz/archives/52214168.html 17世紀、アイスランドの魔術師が実際に身に着けていた人間の皮膚で作ったズボン「ネクロパンツ」


  2. ^ エコレザー認定基準|日本エコレザー基準認定事業




外部リンク







  • 社団法人日本皮革産業連合会

  • 日本革類卸売事業協同組合

  • 皮革について














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