この項目では、つげ義春原作の漫画・映像作品について説明しています。その他の用法については「紅い花 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
『紅い花 』(あかいはな)は、つげ義春が『ガロ』1967年10月号に掲載した短編漫画[1] 。雄大な自然の風景とノスタルジックなおかっぱ頭の少女を通して、独特の叙情世界を築き上げた作品である。『ねじ式』と対極をなすもう一つの代表作。
目次
1 概要
2 映像化作品
2.1 1976年
2.2 1993年
2.3 1998年
3 注釈・出典
4 関連項目
5 外部リンク
概要
ストーリーは、釣り人である主人公の男性と、山中の小さな売店で店番をしているキクチサヨコとの出会いから始まる。キクチサヨコは、良い釣り場を訪ねる主人公に、同級生のシンデンのマサジを紹介する。作中では、どこの地方のものとも明示されていない方言が用いられている[1] 。
『紅い花』とは、少女が初潮を迎えて大人になることの隠喩である。半分大人になりかかったキクチサヨコと、彼女にいたずらするかたわら、仄かな恋心を寄せるまだ子供のシンデンのマサジのやり取りが渓流や森といった自然を背景に繰り広げられ、微妙な恋物語を際立たせる。
千葉県夷隅郡大多喜の旅館寿恵比楼の当時17~18歳くらいの娘が、同様のおかっぱ頭をした『沼』に登場する少女のモデルであるといわれ、同時にキクチサヨコの原型でもないかとの推測もあるが詳細は不明。また、舞台もどことも限定できない土地であり、幻想的である。しかし、この作品のおおらかさは、つげが白土三平に招待された旅館寿恵比楼滞在がもとになっているといわれ、作者の人生の中でも、最も解放感に満ちた時期に描かれた作品の一つである。
作中に、どこの地方とも特定できないような方言が散りばめられており、またキクチサヨコは韻を踏んだような台詞をとうとうと喋るが、この台詞回しも作者の想像力の中から生まれたものであり、福島弁を駆使した『もっきり屋の少女』とはまた趣が異なっている。心地の好い台詞もこの作品の魅力の一つ。
台詞で特徴的なのはヒロインの生理を表現する言葉の数々だが、そのうちの「腹がつっぱる」は、作者が生理中の少女に想像力を張り巡らせて作ったものではなく、寿恵比楼旅館滞在時に「靴下がつっぱる」と嘆く女性の会話を作者が聞き間違えたエピソードが元になっている。
映像化作品
1976年
1976年に『劇画シリーズ』と題された3本シリーズの一本として『ガロ』の作品がNHKでドラマ化された。他の2本は林静一原作の『赤色エレジー』と、滝田ゆう原作の『寺島町奇譚』。
このドラマではつげ義春がモデルと思しき主人公が幻想世界と原風景の中に迷い込むストーリーとなっている。演出は『夢の島少女』や『四季~ユートピアノ』など擬似ドキュメンタリータッチのドラマで評価の高い佐々木昭一郎。出演は草野大悟、沢井桃子、宝生あやこ、藤原釜足ほか。草野大悟演じる主人公の「私」は、つげ義春に似ていると当時評判になった。また、往年の名脇役である藤原釜足が長井勝一をモデルにした出版社の社長役で出演。アラカンこと嵐寛寿郎が原作には登場しないキクチサヨコの祖父役を演じている。『紅い花』の他、つげの『沼』『ねじ式』『古本と少女』『ゲンセンカン主人』などのエッセンスを1つのストーリーにまとめた内容となっている[2] 。このドラマは現在まで映像ソフト化されていないが、第31回文化庁芸術祭大賞を受賞するなど評価は高く近年NHKアーカイブスでも再放送が行われている[2] 。
1993年
1993年に『ゲンセンカン主人』のタイトルで映画化されたオムニバス作品の第2話となった。監督は『網走番外地』などで知られる石井輝男。佐野史郎がつげ義春をモデルにした主人公を演じた。本作の他に、表題である『ゲンセンカン主人』『李さん一家』『池袋百点会』の4話が収められた。
キクチサヨコは久積絵夢、シンデンのマサジは荻野純一が演じた[3] 。最後のシンデンのマサジがキクチサヨコを背負って山を下りるシーンで斜面いっぱいに咲き乱れる紅い花は、ティッシュペーパーの造花で再現されたという。
1994年2月に東北新社よりVHS版がリリースされた後、2018年6月にDIGレーベルよりHDニューマスター版が発売された。
1998年
1998年9月にテレビ東京の深夜ドラマ『つげ義春ワールド』の第11話として放映された。主演は田辺誠一、邑野未亜[要出典 ] 。
注釈・出典
^ a b つげ義春『紅い花』小学館、小学館文庫、1995年1月、3-18頁。
^ a b “NHKアーカイブス(番組)|これまでの放送”. 2017年2月13日 閲覧。
^ “ゲンセンカン主人”. 2017年2月13日 閲覧。
関連項目
つげ義春
月刊漫画ガロ
ほったて小屋
学生帽
落第
イワナ
ヤマメ
マムシ
キノシタ映画
河童のクゥと夏休み - 監督の原恵一によれば、作中に登場する少女『菊池紗代子』の名前は、本作のキクチサヨコから拝借したという。
外部リンク
ドラマ「紅い花」(NHK)
土曜ドラマ 劇画シリーズ 紅い花 - NHK名作選(動画・静止画) NHKアーカイブス
土曜ドラマ
第1次(1975年 - 1984年)
1975年 - 1979年
遠い接近 - 中央流沙 - 愛の断層 - 事故 - この町の人 - 愛染かつら - 生ける人形 - 浪華悲歌 - 限りなき前進 - 男たちの旅路(第1部) - 花に棲む - 寺島町奇譚 - 紅い花 - 閃光の遺産 - 高層の死角 - 轢き逃げ - 暗い落日 - 男たちの旅路(第2部) - 堂々たる打算 - およね平吉時穴道行 - 終りなき負債 - もしも・あの時 - 棲息分布 - 最後の自画像 - 依頼人 - たずね人 - 男たちの旅路(第3部) - 虹の花 - 優しい時代 - 兄とその妹 - 出来ごころ - 人情紙風船 - 十字路 第一部 - 天城越え - 虚飾の花園 - 一年半待て - 火の記憶 - 十字路 第二部 - 阿修羅のごとく - 死にたがる子 - 血痕追跡 - 四角な船 - 失楽園'79 - 大阪親不孝通り - 大阪発-あした - 男たちの旅路(第4部) - 素直な戦士たち
1980年 - 1984年
阿修羅のごとく パート2 - 離婚 - 天才画の女 - 空白の900分―国鉄総裁怪死事件― - 暁は寒かった―誰かが母を殺した日― - さらばきらめきの日々 - 魂の夏 - 蛇蝎のごとく - わが青春のブルース - 踊る - 君はまだ歌っているか - タクシー・サンバ - 価格破壊 - けものみち - 大阪ドン・キホーテ - 横浜物語 - 遠雷と怒涛と - 噂になった女たち - 私の父の反乱 - 希望 - 翔べ!南十字星号 - 追跡 - 白き抗争 - 欲望 - 日だまり - 波の塔 - 話すことはない - 華族の女 - わたしの名は女です - 青春スクランブル
第2次(1988年 - 1998年)
1988年 - 1989年
結婚する手続き - カイワレ族の戦い - 十九歳 - ときめき宣言 - 翔べひよっ子 - 夕陽をあびて - 兄弟 〜あにおとうと〜
1990年 - 1994年
別の愛 - 家族の値段 - 恋愛模様 - 理想の男性 - 新十津川物語 明治編 - チロルの挽歌 - - 新十津川物語 大正編 - 新・王将 - オバサンなんて呼ばないで! - 恐怖の航海 - 潮風のサラ - 春むかし - 新十津川物語 昭和編 - 愛を忘れないで - 流れてやまず - 地球をダメにする50のかんたんな方法 - パパ嘘だと言って - 推定有罪 - とおせんぼ通り - 欅の家 - 大草原に還る日 - 私が愛したウルトラセブン - 消えた金塊ブリンクス・マット強奪事件 - パパとアリスの奮戦記 - ミス・ローズ・ホワイトの秘密 - 春の一族 - 系列(パート1) - オバサン、咲いた! - 三十三年目の台風 - がんばらんば 〜平成の島原大変〜 - 勇士たちの帰郷 - 街角 - エトロフ遥かなり - 愛が聞こえます - 聞こえるかい心の歌が - 五右衛門 - 銀行 男たちのサバイバル - 否認 - 幸福の条件 - 米田家の行方 - 北山一平 アイラブ人生 - 黄昏の甘い恋歌ときめき御用達・おぼっちゃまは元気印! - 系列(パート2) - 秋の一族 - 和菓子の味 - 妻よ
1995年 - 1998年
もうひとつの家族 - ゼロの焦点 - 放送記者物語 - 涙たたえて微笑せよ-明治の息子・島田清次郎 - 鏡の調書天使が街にやってきた - 家族旅行 - 天上の青 - 遠い国からの殺人者 - 八月の叫び - 刑事 蛇に横切られる - 新宿鮫 〜無間人形〜 - メナムは眠らず - されど、わが愛 - 天空に夢輝き 〜手塚治虫の夏休み〜 - やらまいか! - 夏の一族 - ストックホルムの密使 - 百年の男鯉のように百年生きろ - 一日三回食後に服用・よひんびん物語 - 大地の子 - 最後の弾丸 - 官僚たちの夏 - ランタナの花の咲く頃に - 水辺の男 - ぜいたくな家族 - 照柿 - 病院 - ちいさな大冒険 - 我等の放課後 - 秋の選択 - 憲法はまだか - 女にも七人の敵 - 新宿鮫 〜屍蘭〜 - おごるな上司! - うどんとビデオ - いのちの事件簿 〜福祉の最前線でケースワーカーは今〜 - 風のねがい - もうひとつの心臓 - 女たちの帝国 - 唄を忘れたカナリヤは… - 生前予約〜現代葬儀事情 - スズキさんの休息と遍歴 - 熱の島で〜ヒートアイランド東京 - 極楽遊園地 - 流通戦争 - 新宿鮫 〜毒猿〜 - 黄昏流星群〜恋をもう一度 - 風になれ鳥になれ - ラスト・イニング
第3次(2005年 - 2011年)
2005年 - 2009年
クライマーズ・ハイ - 氷壁 - 繋がれた明日 - マチベン - ディロン〜運命の犬 - 人生はフルコース - 新・人間交差点 - クライマーズ・ハイ(再) - 魂萌え! - ウォーカーズ〜迷子の大人たち - ディロン〜クリスマスの約束 - ちゅらさん4 - スロースタート - ハゲタカ - 病院のチカラ〜星空ホスピタル〜 - こんにちは、母さん - 新マチベン 〜オトナの出番〜 - 勉強していたい! - ジャッジ 〜島の裁判官奮闘記〜 - ひとがた流し - フルスイング - 刑事の現場 - トップセールス - 監査法人 - 上海タイフーン - ジャッジII 島の裁判官 奮闘記 - 刑事の現場(再) - 遥かなる絆 - 風に舞いあがるビニールシート - リミット -刑事の現場2- - 再生の町 - チャレンジド - 外事警察
2010年 - 2011年
君たちに明日はない - チェイス〜国税査察官〜 - 鉄の骨 - チャンス - TAROの塔 - チャレンジド 〜卒業〜
土曜ドラマスペシャル(2011年 - 2013年)
神様の女房 - 使命と魂のリミット - 蝶々さん〜最後の武士の娘〜 - 真珠湾からの帰還 - とんび - キルトの家 - 家で死ぬということ - それからの海 - あっこと僕らが生きた夏 - 永遠の泉 - 負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜 - 実験刑事トトリ - メイドインジャパン - 火怨・北の英雄 アテルイ伝(BSプレミアムの再放送)
第4次(2013年 - )
2013年 - 2015年
ご縁ハンター - 島の先生 - 七つの会議 - 夫婦善哉 - 実験刑事トトリ2 - 太陽の罠 - 足尾から来た女 - ロング・グッドバイ - 55歳からのハローライフ - 芙蓉の人〜富士山頂の妻 - ボーダーライン - ダークスーツ - 限界集落株式会社(21時)
2015年 -
(22時)64(ロクヨン) - ちゃんぽん食べたか - 破裂 - 逃げる女 - 恋の三陸 列車コンで行こう!(特集ドラマ) - (20時) トットてれび - (21時) 夏目漱石の妻 - (22時)スニッファー 嗅覚捜査官 - (21時) スクラップ・アンド・ビルド - (20時)4号警備 - 幕末グルメ ブシメシ! - (19時、土曜ドラマスペシャル)1942年のプレイボール - (20時) 植木等とのぼせもん - やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる - バカボンのパパよりバカなパパ - 不惑のスクラム - (21時) フェイクニュース - 炎上弁護人 - 母、帰る〜AIの遺言〜 - ベトナムのひかり〜ボクが無償医療を始めた理由〜 - みかづき - デジタル・タトゥー